春なのに 値上げですか?!

春なのに 値上げですか?!
この春、身近な食品で値上げの動きが相次いでいます。メーカーが値上げを表明したのは、牛乳やアイスクリーム、清涼飲料・サバ缶・カップ麺に至るまで、実にさまざまな食品に広がっています。秋の消費税引き上げを前に、消費者にとってはダブルパンチかと思いきや、スーパーなど小売りの現場で実際に販売価格が値上がりするかというと、そう簡単な話ではないようです。(経済部記者 加藤ニール/仲沢啓)

相次ぐ“値上げ”表明

この3月以降、多くの食品メーカーで希望小売価格や出荷価格を引き上げる動きが続きます。代表的な例だけでも、以下のように幅広い食品に及んでいます。

コスト削減、もう限界

各社が値上げに踏み切る最大の理由は、原材料費の上昇です。
麺類であれば小麦粉、牛乳やヨーグルトであれば生乳といった原材料の価格が軒並み上昇しているのです。

しかし、節約志向が根強い中で、希望小売価格や出荷価格の値上げは、メーカーにとって“最後の手段”。これまで各社は、原材料の調達先を変えたり、製造工程を見直したり、商品のパッケージを軽量化したりと、あの手この手でコスト削減を行うことで、値上げを回避してきました。

最近では、内容量を減らすいわゆる“ステルス値上げ”も行っていましたが、裏を返せば生活に身近な食品を手がけるメーカー側にとっては、値上げはそれほど避けたい事態なのです。

にもかかわらず、この春はまさに値上げラッシュの様相です。
費用の上昇は、原材料だけにとどまらず、人件費や物流費、商品を包むパッケージや段ボールなどの包材費にまで広がっていて、「コスト削減は、もう限界」というのが各社の説明です。

コスト上昇が経営圧迫

この春、値上げを行う外食のカレーチェーンの場合で見てみます。

「CoCo壱番屋」では、3月1日から大部分の店舗で、主力商品「ポークカレー」を21円値上げします。
去年8月までの半年間の売り上げは248億円余りと、前の年よりも0.4%増えましたが、売り上げから主な費用を差し引いた、本業でのもうけを示す営業利益は5.4%減って23億円余りでした。

増収でも減益となった要因は、食材費と人件費の上昇でした。

会社によると、カレーライスに欠かせないコメの仕入れ費用は、前年同期比で1億3000万円余り増加。
また、カレーのルーなどの製造コストは、自社の食品工場で人件費・光熱費などが上昇し、1億1000万円余りの増加。
さらに店舗での人件費も、1億2000万円余り増加。
あわせて3億円を超える費用上昇が経営を圧迫した形です。

会社では「経費削減に向けた取り組みを継続的に行っているが、自助努力ではカバーできない水準だ。やむを得ず価格改定に踏み切った」としています。

小売の現場は、どう対応?

一方、食品の場合は、どうなるのか。

通常、食品メーカーが希望小売価格や出荷価格を引き上げたとしても、スーパーなど店頭での価格が必ずしも上がるとは限りません。

「希望小売価格」は、メーカー側が収益を確保するために設定する、あくまで参考の価格。実際に店頭で販売する際の価格は、スーパーなど小売業者側が自由に決めているのです。

今回メーカーが値上げの対象とするのは、特売セールでの主力にもなるような商品が多数。10月には消費税率の引き上げが予定され、財布のひもが固くなりがちなタイミング。小売の現場はどう対応するのでしょうか?

町のスーパーでは

首都圏でチェーン展開する中小規模のスーパーに聞くと、「店舗の従業員の時給や物流費も上がる中、メーカーの値上げ分を店で吸収するのは難しく、ある程度は価格に転嫁せざるをえない」と話しています。

そのうえで「最近は、ドラッグストアやコンビニも食品を充実させていて競争が激しいため、近隣の競合店の状況をみながら判断する」とも話していて、競合相手の動向を見ながら慎重に対応していく姿勢です。

割安なPBを強化

一方、ショッピングモールやスーパーなどを全国展開する最大手の「イオン」は、メーカーの商品より割安な自社ブランド=PBの食品を強化して対応する方針です。
PBは、小売業者がみずから開発段階から関わり、メーカーの商品のように流通段階の中間マージンや広告宣伝費がかからないことなどから、価格を抑えることができます。

イオンでは、3月以降、PBの品ぞろえを増やすことにしています。

“逆張り”戦略も

さらに踏み込んで、この局面であえて値下げするという逆張り戦略をとる動きもあります。

大手スーパー「西友」は、400品目を期間限定で値下げします。

乳製品や麺類など、この春、食品メーカーが値上げする商品も含まれていて、低価格戦略を鮮明に打ち出すことで集客アップにつなげようという狙いです。
根強い節約志向に向き合う小売の現場はしたたかに対応しようとしていて、今回も直ちに小売価格に反映されるということでもなさそうです。

しかし、人件費や物流費の上昇の背景にある人手不足はすぐに解消されそうにもなく、今後もメーカーを中心に値上げの動きが続きそうです。

消費税率引き上げも間近なだけに、どこまでなら値上げが許容されるのか?されないのか?食品や小売の関係者は慎重に見極めようとしています。
経済部記者
加藤ニール

平成22年入局
静岡局・大阪局を経て
現在、流通業界を担当
経済部記者
仲沢啓

平成23年入局
福島局、福岡局を経て
流通・食品業界を担当