野菜の輸入が増えているワケ

野菜の輸入が増えているワケ
「白菜」や「キャベツ」など身近な野菜、実は輸入が増えていることをご存じでしょうか?日本の農業に今、何が起きているのか探ります。(経済部記者・岡谷宏基)

野菜の輸入が急増

先月、ある統計が発表されました。去年1年間に日本に輸入された生鮮野菜が98万トン余りに上り、13年ぶりの多さになりました。特に、大きく伸びたのが白菜とキャベツで、白菜は前の年の6倍余りに、キャベツは2倍以上に増えました。また、冷凍野菜も107万トンを超え、過去最高となりました。
台風などの災害の影響で、去年は生産量が落ち込み、食品メーカーが安定した量を調達しやすい中国産の利用を増やしたことが背景にありました。

農家の平均年齢は66歳

しかし、取材を続けると災害による影響だけではないことがわかってきました。国内で生産されている野菜の量は、この10年ほどは、毎年1100万トン余りで推移していますが、実はこの水準、ピーク時の7割で、じりじり減少している傾向が続いているのです。

背景には農家が“高齢化”、“後継者の減少”、さらに“人手不足”に直面していることがあります。一定の規模以上で野菜を作っている農家は平成17年からの10年間で14万戸減っています。特に、白菜や大根といった比較的重さがある“重量野菜”の生産が敬遠される傾向が強まっています。
白菜や大根は“重量野菜”
農林水産省によりますと、農家の平均年齢は66.6歳で、こうした重い野菜を作ることが大きな負担になっているのです。一方でヘルシー志向の高まりで、野菜への消費者のニーズは堅調です。このため、輸入に依存する傾向が強まっているのです。流通関係者からは「近頃は中国などの産地の技術も向上し、品質には問題がない」との声も聞かれ、今後も、輸入野菜は増える可能性があります。

バターも輸入を増やすことに

実は輸入の増加は野菜だけではありません。今月、農林水産省がバターの輸入枠を2019年度は、前の年度より50%以上多い2万トンにすると発表しました。生乳を生産する酪農家の減少に歯止めがかからないことが大きな理由です。とりわけ、生産量が、ここ10年で4分の1減った北海道以外の都府県の生産地の衰退が顕著です。

こうしたことなどから、ことし4月からは乳業メーカーが牛乳向けの生乳の買い取り価格を引き上げることになり、牛乳などの値上げの一因となりました。毎日2回の搾乳が欠かせないなど、酪農家の重労働が離農が続く背景になっていて、酪農家は去年1万5700戸と、この10年でおよそ3割減っているのです。

生産回復の鍵はAI

こうした中、人手をかけずに収益を上げる農業を目指す試みが始まっています。キーワードは「スマート農業」
AIを取り入れたキャベツ収穫機
ITや機械を駆使したもので、例えば、AI=人工知能を取り入れて自動的にキャベツを収穫する機械も開発されています。取り組んでいるのは立命館大学の深尾隆則教授です。

キャベツは収穫する部分の回りに多くの葉があり、キャベツを傷つけずに切り取って収穫するのは、大変な作業です。これまでの収穫機では、操縦する人がひとつひとつのキャベツの位置を確認したうえで、最適な場所を探して刃を入れていました。この作業には長年培った経験が必要です。
AIが映像でキャベツを認識しながら収穫
そこでAIに、畑に育っている膨大なキャベツの形を覚えさせ、キャベツの位置を正確に認識することで、自動的にカットする収穫機を考案しました。この収穫機は操縦する人も必要がなく、人手をかけない収穫が可能です。現状では1台1000万円以上と高価なことから、今後、価格を下げることができるかが課題となっています。深尾教授は来月、滋賀県内で実験を行う予定で、「自動化の推進が、今後の農業の生産力を向上させるカギを握る」と話しています。

高齢化などにより厳しい状況に置かれている日本の農業。しかし、消費者からは国産の食材に根強いニーズがあります。それだけに、機械化とともに地域の担い手の育成など、生産力を高めていく努力がますます必要になると思います。
経済部記者
岡谷宏基

平成25年入局
熊本局を経て経済部
現在、農林水産省を担当