救世主となるか?ミラーレスの今を追う

救世主となるか?ミラーレスの今を追う
写真撮影が好きなあなた、最近どんなデジタルカメラをお使いだろうか。長年使い込んできた一眼レフ? 手のひらに乗るコンパクトカメラ? そもそも撮影はスマートフォンさえあれば事足りるのでカメラ自体を持っていない、という人も少なくないはず。
不振が続くデジタルカメラ市場だが、その中で、唯一伸びている分野が「ミラーレス」だ。
最近ではメーカー各社が新たな需要を取り込もうという動きも見せている。デジカメの生き残りに向けた“救世主”となるのか、ミラーレスの今を追った。(経済部記者 井田崚太)

デジカメの“稼ぎ頭”はミラーレスに

2月1日、業界団体の「カメラ映像機器工業会」が発表した市場の最新データが私たちに衝撃を与えた。
去年1年間のデジカメの国内出荷台数で、一眼レフやコンパクトカメラの分野が軒並み前年を大幅に下回る一方で、ミラーレスが8%あまり増えて唯一プラス成長したのだ。

「8%」というと少なく感じるかもしれないが、スマートフォンに押されて、デジカメ全体の国内出荷台数がここ10年で4分の1近くにまで激減する中、“一筋の光明”とも言える動きだった。
そもそもミラーレスとは何か。一眼レフのようにカメラ内部に反射鏡を置かず、レンズが捉えた景色をデジタルの映像に変換するカメラだ。構造をシンプルにしたことで、小型・軽量化を実現。また、画質の高さやレンズ交換ができる点など、本格的な撮影気分を味わえるのも売りだ。

平均単価は10万円ほどと、スマホよりはやや値は張るものの、SNSに写真を投稿する若者などの「スマホよりきれいな写真を手軽に撮影したい」という需要の受け皿となっている。愛好家から根強い支持はあるものの広がりに欠ける一眼レフや、スマホとの差別化が図りにくいコンパクトカメラがマイナスに落ち込む中、ミラーレスは一躍“稼ぎ頭”となった。

各社は“高級路線”を展開

こうしたミラーレス人気に弾みをつけようと、メーカー各社はこのところ、新たな領域の開拓にかじを切っている。
それは「フルサイズ」と呼ばれる大型の画像センサーを搭載した高級機種だ。このセンサーはもともと一眼レフに搭載されてきたもので、光をたくさん取り込めることから、暗所でも鮮明な写真を撮影することができる。
センサーの大型化にともなって、当然重さや大きさもアップ。価格が40万円を超える機種も登場するなど、もはや従来のミラーレスとは別物に進化しているとも言える。
こうしたフルサイズの分野はこれまでソニーの独壇場となっていたが、ニコンとキヤノンが去年秋に新製品を相次いで発表。ソニーの牙城に切り込んでいく姿勢をそれぞれ鮮明にした。
さらに、ことし2月には、ミラーレスの元祖と言われるパナソニックも、初めてのフルサイズを投入。かくして、わずか半年の間に、ミラーレス市場は“戦国時代”へと様変わりした。

何がユーザーの心をくすぐるのか?

では、こうした高級機種はどんな人たちが利用しているのだろうか。それを探るため、私は、新製品を発表したメーカー主催の撮影教室を取材した。教室には、製品を購入した男女20人が参加。平日の昼間ということもあって、年齢層は中高年が中心だった。

取材して大きな発見だったのは、彼らのほぼ全員が一眼レフをすでに使いこなしてきた経験を持っていることだった。一眼レフユーザーがなぜいまさらミラーレス、と思ったが、話を聞いてみるとその理由が分かってきた。
まずは、一眼レフと遜色のない圧倒的な画質の高さ。さらに、ミラーレスの売りである使いやすさを高級機種が兼ね備えているという点だった。中高年ユーザーにとって、一眼レフと比較した際の軽さや小ささは、たとえ多少高価格であっても、撮影のうえで外せない要素だという。
講座に参加していた会社員の門脇健さん(55)もそのひとり。週末になると一眼レフを持って撮影に出かけ、フェイスブックなどに写真をアップして楽しんでいる。

しかし、「一眼レフをしばらく使っていたが、重くて、手軽に持ち出せなくなってしまった。かと言って、通常のミラーレスでは、一眼レフのような味わいのある写真はなかなか撮れず、困っていた」と話す。
そんな門脇さんにとって、各社が相次いで打ち出した高級機種はぴたりとはまったようだ。さらにこれまでの“資産”が活用できるのも大きいという。

アダプターさえつければ、一眼レフで長年使ってきたレンズの転用もできる。ミラーレスの高級機種は、これまでの撮影レベルは維持しつつよりスマートに撮影したい門脇さんのようなユーザーにとって、大きな魅力になり、“買い増し”や“乗り換え”を促している。従来のミラーレスが、スマホから移行する入門者の需要を取り込んできたのとはまた別の動きが生まれているようだ。

門脇さんは、「新しいカメラで使い方はさらに広がり、いろいろな撮影が楽しめそうだ」と期待を込めて話していた。

ミラーレスが市場の衰退を救う?

成長を続けるミラーレス。

市場が活気づいて、商品の選択肢が増えることは、メーカー、ユーザーそれぞれにとってメリットと言える。しかし、一方で、ユーザーのすそ野を今後どれだけ広げられるかは依然として大きな課題だ。スマホでの撮影が当たり前になってしまった今、一部のユーザーだけに頼っていても、時代の流れにはあらがえない。

ミラーレスがこの先さらに成長し、市場の衰退を救う本物の“救世主”になれるのか、目が離せない。
経済部記者
井田崚太
平成25年入局
京都局をへて
現在、電機業界を担当