“心が折れそうな日々”をへて~大塚久美子社長が語る~

“心が折れそうな日々”をへて~大塚久美子社長が語る~
創業家の親子対立、その後の販売不振で業績が低迷する「大塚家具」。
財務状況が悪化する中、大塚久美子社長が打ち出す経営再建策が注目されていましたが、ついにその一手が明らかになりました。
それは、去年業務提携した中国の家具販売大手との関係を軸に、投資ファンドから約38億円の増資を引き出し、財務の安定を図る。さらに家電販売大手「ヤマダ電機」との業務提携によって、国内販売をてこ入れするというものでした。

社長いわく、“心が折れそうなつらい日々”を経て繰り出したこの一手で、大塚家具は経営を立て直すことができるのか。大塚社長本人に直撃しました。(経済部 菅谷史緒記者)

“何とか会社をよい方向に”

大塚家具の新ロゴを発表する大塚社長(平成27年7月)
2月15日、前日に予定されていた決算発表を延期した末、大塚家具は決算と合わせて経営再建策を発表しました。

その柱は、投資ファンドを引き受け先とした38億円余りの増資などによる資本増強と、ヤマダ電機との業務提携。販売の不振が続いて、財務状況が急速に悪化していく追い詰められた状況を脱するため、大塚社長が繰り出した「答え」でした。
「ここ数か月、本当に心が折れそうになりつらい日々が続いたが、何とか会社をよい方向に持っていこうと、それを最優先に考えてがんばった。その結果、非常によい方向に向かっている」

「今回の再建策の枠組みは、ひと言でいうと大塚家具が本格的に海外に出て行くことになる提携。大塚家具はことしで50歳になるが、最初の20年は仕入れも販売も国内だけ。その後は家具の流通を改革し、次の30年は仕入れは国内外から、販売は国内という形でやってきた。これからは“世界のよい家具をお安く”ということを世界中にやっていきたい」(大塚社長)

中国の有力提携先、なぜ出資しない?

今回の増資を引き受けるのは、越境ECを手がける「ハイラインズ」という会社を中心とした大塚家具の取引先などの企業連合、そして、アメリカ系の投資ファンドです。
もともと大塚家具では、去年業務提携した中国の家具販売大手「イージーホーム(居然之家)」との間で、資本面での提携も探っていたはずですが、今回の引き受け先には名を連ねていません。

なぜなのか?
「今回の提携のコアは、イージーホームとハイラインズです。実は、当社とイージーホームの縁をつないだのがハイラインズ。当社がネット通販を検討する中で、ハイラインズと会った。そのハイラインズはアリババ(中国最大のネット通販企業)とつながりがあり、アリババからイージーホームが出資を受け入れたという経緯があって、両社の接点ができた。そうした背景があったことで、当社とイージーホームの業務提携に至った」

「イージーホームとの間では、今も資本提携の話が進んでいる。しかし、イージーホーム側は上場準備で忙しい事情がある。そうした中で、当社・イージーホーム・ハイラインズの3社の連携を支持する取引先の方々に声をかけて、ファンドをつくって、必要な資金を調達することになった。さらに、イージーホームとの業務提携を見て、純投資しようというアメリカ系の投資ファンドも現れて、今回の枠組みになった」

海外戦略、どう進める?

中国系企業やアメリカ系投資ファンドとの関係を強め、海外での事業拡大を打ち出した大塚社長。
海外展開を進める上でも、大塚家具が培ってきたノウハウを活用しようとしています。
「イージーホームの店舗には家具メーカーがテナントとして入居している。その結果、ベッドはベッドの会社で、ソファーはソファーの会社で買うということになっている。一方、大塚家具はすべての商品アイテムを扱い、1人がコンシェルジュとしてコーディネートサービスをする。こうしたサービスは実は中国にはなく、それを提供してほしいということをイージーホームから求められている。また、ハイラインズは、テクノロジーの面からEC=ネット通販に入ってきた。大塚家具の持つデータを、どうマーケティングに生かすか、海外のEC営業にも直接関係すると思う」

ヤマダ電機との提携、どういかす?

“海外シフト”を強調しますが、足元では国内販売のてこ入れを急ぐ必要もあります。そこでカギを握るのが、家電販売大手「ヤマダ電機」との業務提携です。

販売力の高さで定評のある大塚家具の従業員をヤマダ電機に派遣することや、ヤマダ電機の店舗で大塚家具のオリジナル商品を販売することを検討するとしています。
「海外で実績を上げるには時間がかかるので、むしろ国内販売を立て直すことが重要になる。そこで少し前からヤマダ電機と話をしていた。ヤマダ電機は、住宅関連や家電、それから家具も販売する業態をされているので、大塚家具としても提案販売のノウハウが生かせるという話をしている。まずは人材の交流からスタートして、できれば商品の開発などもしていきたいねと」

“親子の確執”と経営責任

「大塚家具」の久美子社長と「匠大塚」の勝久会長
不振の発端ともなったと言えるのが、創業者で父親の勝久氏との経営の主導権をめぐる対立でした。肉親とたもとを分かち、経営を担ってきた久美子社長ですが、結果として3年連続の赤字に陥り、関係者からは経営責任を問う声も出ています。
「去年は実行にスピードが伴わなかった。とくに後半は会社としてコントロールが効かない状態になり、悔いが残った。そうした中で最大限やれることをやろうとして、なんとかここにこぎ着けた、やっとこぎ着けた。3期連続の赤字の責任はあるが、今回の提携がうまくいくまでやらざるをえない」
そのうえで、勝久氏が設立した家具販売会社「匠大塚」との協力の可能性を問われると、こう答えました。
「今回の提携を通じて感じたのは、理屈や経済合理性だけではなく、最後は縁だなと実感した。ありえないことが起きることもある。匠大塚とも、どんなことが起きてもおかしくない」

問われる成果

率直な心情を交えながら、今回の再建策のねらいと経緯を語った大塚久美子社長。

しかし、現時点ではことしの業績見通しを示せず、いつ黒字を回復できるのか明らかにできていません。また、事業継続にリスクがあることを投資家に示すため、決算書に記された「継続企業の前提に関する重要な疑義がある」という注記も、再建策が途中段階にあり不確実性が残るとして解消することができませんでした。
さらに、増資が完了すれば、創業家に代わって投資ファンドが筆頭株主になり、投資に対するリターンを厳しく求められることになります。

新たな一手で思い描いたような成果をあげることができるのか。
大塚社長にとって、経営立て直しに向けた道のりは、むしろこれからが本番だと言えそうです。
経済部記者
菅谷史緒
平成14年入局
ニューデリー支局、イスラマバード支局をへて
現在、流通業界を担当