スマホ頼みにも限界? メーカー決算に異変

スマホ頼みにも限界? メーカー決算に異変
「そういえば、スマートフォンをあまり買い替えなくなった」ーそんな人も、多いのではないか。買い替えのサイクルが延びていると言われるスマホ。その市場の拡大に今、ブレーキがかかっている。そうした中、スマホに部品を供給してきた、日本の名だたるメーカーが今年度の業績見通しの下方修正を発表。スマホの成長に頼ってきたメーカーへの影響が明らかになった。(経済部記者 加藤陽平/茂木里美)

アップル・ショック

成長を続けてきたスマートフォン市場。しかし、年明け早々の1月2日、その変調が明白になった。アメリカのIT大手、アップルが去年10月から12月までの業績を下方修正すると発表し、日米で株価が大幅に下落するなど衝撃が走った。

去年9月に新しい機種が投入された主力のiPhoneの販売が前の年の同じ時期と比べて15%の大幅な落ち込みとなったのが大きな要因だった。地域別の売り上げでは、中国で27%減ったほか、日本でも5%減少した。

スマホ市場にかげり

電話やインターネットだけでなく、今やあらゆるサービスの起点となっているスマートフォン。韓国やアメリカ、中国のメーカーが端末の大きなシェアを握っているが、実は、支えているのは日本メーカーだ。iPhoneを製造・販売するアップルに部品を供給する主な企業200社のうち、43社が日本のメーカーだ(2018年2月発表)。アップル向けに限らず、スマホ向けに部品を供給してきた日本メーカーは多く、スマホ市場の拡大とともに、業績を伸ばしてきた。
しかし、そのスマホ市場には、今、明らかにかげりが見えている。世界のスマホ全体を見ても、調査会社のIHSマークイットの調べでは、これまで拡大を続けてきた出荷台数が、去年初めて、減少に転じたのだ。
IHSマークイットの大庭光惠シニアアナリストは、スマホの販売不振の背景を、次のように分析する。
(1)技術革新が限界に近づき、目新しい機能が追加されず、消費者の買い替えサイクルが延びている。

(2)世界最大の市場である中国経済の減速で、購買力が低下している。
また、市場の先行きについては、「今後、新たな通信規格の5Gに対応したスマホが開発され、買い替えが起きる可能性はある。しかし、基本的には消費者は今のスマホでできることに満足していて、市場としては低成長が続くだろう」と見ている。

日本メーカーの決算に打撃

ソニーの十時裕樹CFO
スマホ不振が鮮明になる中で1月末から2月にかけて発表された、日本メーカーの第3四半期決算。部品を提供しているメーカーが今年度の業績見通しを相次いで下方修正した。

スマホのカメラ用のセンサーを作る「ソニー」は、売り上げを従来より2000億円、下方修正した。十時裕樹CFOは、決算発表の記者会見で「スマートフォン市場全体が減速傾向にある。厳しい市況は今後もしばらく続く」と話した。

センサーやカメラ用の部品を作る「シャープ」も、売り上げを1900億円引き下げ、営業利益も50億円下方修正。野村勝明副社長は「足元の経済環境はさらに不確実性を増している」と見る。

このほか、スマホ向けの部品を作っている、「TDK」や「京セラ」も、売り上げや営業利益の見通しを引き下げた。

部品にとどまらない

さらに、スマホ不振の影響は、部品メーカー以外にも広がっている。中国のスマホ関連の企業向けに、生産ラインで使うモーターなどを販売している「三菱電機」は、第3四半期の最終利益が13%あまり減少。今年度の見通しも引き下げた。

同様にスマホ関連企業の工場向けに部品を販売する「パナソニック」も、売り上げ、営業利益ともに、今年度の見通しを下方修正した。梅田博和CFOは、「去年11月に入ってから顧客の投資が止まった」と足もとの厳しい状況を説明した。

スマホ頼みから抜け出せるか

スマホ市場の減速が、「スマホ頼み」でもあった日本メーカーの業績に大きく影を落とした格好だが、先行きはどうなるのか。

企業からは、今後、中国政府が景気刺激策を打ち出すことを期待し、「ことし後半からは設備投資が回復する」という楽観的な声も聞こえる。

しかし、決算会見では、「この状況はある程度続くと認識している」、「楽観視せず、足元を厳しめに見ていく」と、先行きへの厳しい見方が多く聞かれた。中には、「大きく伸びている、自動車関連の部品にシフトしていきたい」と、スマホ頼みからの脱却を模索する企業もあった。

減速が明らかになった、スマホ市場。いずれ回復するのか、それとも、もはや大きな成長は望めないのか。これまで貴重な収益源としてきた日本メーカーは、新年度に向けて戦略の立て直しを迫られることになりそうだ。
経済部記者
加藤陽平
平成20年入局
富山局、千葉局などをへて
現在は電機業界を担当
経済部記者
茂木里美
フリーペーパーの編集者を経て
NHKに入局
現在は電機業界の取材を担当