今や当たり前!“スマホ就活”

今や当たり前!“スマホ就活”
大学生の就職活動といえば、企業の採用説明会やセミナーに参加し、決まった時期にエントリーして、採用試験を受ける。こうした風景に、今、変化の動きが見られている。スマホ世代の学生の情報収集の方法が変わったことで、企業側も戦略の見直しを迫られているのだ。ITツールを導入した「デジタル採用」時代の到来だ。(経済部記者 野上大輔)

就活にスマホは“当たり前”

ことし1月、マイナビが主催する企業の採用イベントを取材すると、その変化は一目瞭然だった。

2020年に卒業を迎える大学3年生が参加するイベントだが、会場の半数近い学生は私服姿。特に目につくのはスマホを眺めて行動する学生たちだ。
何人かの学生に話を聞いてみると、共通するのが就活の情報収集の主戦場がスマホに移っている点だ。気になる企業の採用情報は「インスタやツイッターに流れてくる」といった具合に、話を聞いた学生はみな「情報収集はスマホでほぼ完結する」と答えた。

変わる企業の戦略

400人規模の新卒を毎年採用する情報通信大手のNTTデータ。これまでは採用説明会やセミナーを開き、学生からの応募を待つ採用方法をとっていたが、あるITツールを取り入れ、ことしからその戦略を変えた。

学生の行動をインターネット上で分析して、会社への興味・関心を探ろうというものだ。対象とするのは採用ホームページや人事部から送るメールで、学生のクリック回数などを基に点数化する。
例えば、ホームページを見れば5点、メールを開ければ10点、メールの中のリンクを開いて会社説明の動画まで見ていれば20点とし、点数が高ければ、会社に対する関心が高いと見なす。本当に関心を持っている学生を見極めるのがねらいだ。

NTTデータは人事部がツイッターのアカウントをつくるなど、これまでも学生との接点を増やそうと取り組んできた。この新たな戦略では、一律に接触をはかってきた従来の採用方法を見直し、会社への関心の高い学生に、より詳細な情報をのせた採用コンテンツを送るなど、他の学生との違いを明確にした。

NTTデータ人事本部の髭直樹部長は、学生の売手市場で優秀な学生の確保が難しくなる中、応募の前の段階での区別はもはや欠かせないと話す。
「学生の情報収集の方法は大きく変わり、SNSなどネット上の行動を捉えないと関心はわかりません。これまでは同一のタイミングに同一の内容を一斉に送っていましたがそれではもう学生は集まらなくなっています。関心の度合いを分析して、個人へアプローチすることが重要になってきています」
このシステムは、もともと企業のマーケティング向けに開発され、顧客の関心を見える化するためのものだが、これを採用活動に応用。大手企業を中心におよそ10数社で導入されているという。

システムを開発したアメリカのIT企業「マルケト」で人事・採用を担当する千葉修司さんは、採用での利用は今後も増えると見ている。
「就活ルールは今後見直しの議論もあり、大学生と企業の関係はこれから長期化していくことが予想されます。1年生から4年生までの時間軸で、どれくらいその学生の興味・関心が高まっているのかを理解して、1対1のメッセージを出すことが求められていくと考えています」

つながり方にも変化

企業と学生のつながり方も変わってきている。ベンチャー企業の「タレントクラウド」では、決められた就活時期だけではなく、長期に企業と関係を持てるサービスを展開している。
ことし1月時点でおよそ200社の企業が参加するこのサイト。設置されているのは「応募ボタン」ではなく「フォローボタン」。フォローした企業の情報はタイムラインでみえるようになり、フォロー相手の企業とはチャットを通して連絡をとることができる。

情報を見たい時だけアプリを開けば、SNS感覚で情報を収集することができるのが特徴だ。
寺師岳見代表取締役は、「従来は短期間でお互いのことを知らないといけなかったが、もっと関係は柔軟であってもいいと思います。じっくり、ゆっくりコミュニケーションをとりながら考えることは働き方が多様な時代には必要です」と話す。

決め手は人間どうしのやり取り

企業の間では、いかにインターネット上で学生と接点を持てるかどうかが、採用力に直結する時代を迎えている。

デジタルのツールを使わないと、いい人材と出会えない、またはいい会社と出会えない、そんな就職活動が当たり前になってきている。

一方で、採用活動の効率が上がることは大事だが、最後の決め手は、直接会った時の印象など人間どうしのやり取りなのは以前と変わらない。

企業側も学生側も、デジタルの行動に加えて、それぞれの魅力をどこまで高められるかが重要になりそうだ。
経済部
野上大輔
平成22年入局
横浜市出身
金沢局をへて
現在、経済部で情報通信業界を担当