“成功して証明する” メルカリの次なる野望

“成功して証明する” メルカリの次なる野望
国内の利用者は1100万人(月間平均)。年間の流通総額は3400億円…。フリマアプリ大手のメルカリは、創業からわずか6年で、個人間で中古品を売買する新しい流通の形をつくり出しました。メルカリは次に何を目指すのか。創業者でトップを務める山田進太郎会長兼CEOに、ことし1年の戦略を聞きました。(経済部記者 吉武洋輔)

“社会の公器”に

去年6月の株式上場以来、半年ぶりにテレビメディアのインタビューに応じた山田進太郎CEO。大学卒業後にみずから設立したベンチャー企業を売却し、世界一周の旅に出たあと、メルカリを創業した異色の経歴を持つ41歳です。
企業規模が大きくなっても、フランクなシャツ姿のスタイルは変わらず。新時代の経営者の雰囲気そのままです。

インタビューをしたのは年の瀬の12月下旬。激動の1年を締めくくるニュースが経団連への加盟でした。
(山田CEO)
世の中に対して“社会の公器”になっていかなければいけない、という大きな方針の一環が、経団連への加入でした。われわれのフリマアプリでは現金が出品されるなどの問題が起こり、すごく反省しています。もともとは、できる限り自由なマーケットを作って、違法じゃなければ何でも出品していい。牛乳パックでも、トイレットペーパーの芯でも売れますよ、と言ってやってきたんですけど、意図していないような使われ方をし始めてしまいました。

スタートアップだと思っていたんですが、世の中は自分たちが思っている以上にパブリックで大きな存在と捉えていきました。いろいろな方から、ちゃんと責任を果たしてくれ、社会的な責任があるでしょ、という指摘をいただき、自分たちはフリマアプリのルールを作っていく側になるべきではと思ったんです。

決済サービスに新規参入

IT業界では今、QRコードなどを使ったスマホ決済に参入する動きが活発です。

背景には、ネット上だけでなくリアルな店舗での買い物データも収集・分析して、より個人にあった品物やサービスを提供していく狙いもあります。

メルカリも、ことし、この分野で新たにサービスを開始する計画です。
(山田CEO)
メルカリのお客様は商品が売れると“売上金”が口座に振り込まれますが、それを銀行から引き出して現金にして使うステップは、すごくムダって言うとあれですけど、無くてもよいじゃないですか。

そのままカフェでもコンビニでも使えたほうが絶対に便利ですよね。新しい決済サービスは、まずはフリマアプリのお客様に使ってもらって、徐々に広げていくことを考えています。そのお客様が気に入ってもらえれば、継続して使っていただけるし、口コミで広がっていく。メルカリはそうやって広がってきました。お金を使うところが便利になれば、もっと自分の持ち物を売ろうという形になって全体のエコシステムが大きくなっていくと思いますね。

日本のアプリ利用者は今は1100万人ですが、人口は1億人以上いる。テクノロジーを使ってもっと便利にしていくことで、2000万、3000万というお客様に使っていただけるのかなと思っています。

アメリカでの成功に向け

成長軌道に入る日本事業。しかし実は、メルカリは創業以来、6期連続で最終赤字です。主な理由は、4年前に進出したアメリカ向けの広告費や人件費が膨らんでいるためです。今回のインタビューで山田CEOが最も力を込めて話していたのは、このアメリカでの事業を成功させることでした。
いまアメリカで成長するためにお金を使っているので、赤字だからよくないとは思いません。投資家の方には、規律のある投資をしていきますと言っています。アメリカでの流通総額は1年で70%以上伸びています。仮に成長が鈍化したら問題がありますが、成長しているうちは投資をする。そこは正当な投資になると思っています。
山田CEOは短期的な黒字は求めず、いまは攻めの時だと話します。しかし、アメリカには競合する会社もあって、日本と同じようにはいきません。もう1つの海外進出先のイギリスからはサービス開始からわずか2年で撤退することになりました。日本とは違う舞台で、どのようにサービスの充実とブランドの浸透を進めるのかが課題になっています。
(山田CEO)
アメリカは難しい市場。その中で僕自身は、経営陣のコミットメントがすごく大事だと思っています。日本にもアメリカにも家を持っていますが、できるかぎりアメリカにいて、現地の幹部とディスカッションしたり、リクルーティングもやっています。そのコミットメントをちゃんとして、アメリカを全社的にやっていくんだいう方針が社員たちに伝われば、アメリカ事業を伸ばすために何ができるかを発想してくれるのかなと思っています。

グーグルやフェイスブックなどいろんな会社がある中で、われわれがなぜこの事業をやるべきなのかを共感してもらいながら、良い人に来てもらって良いチームを作る。良いチームを作ると良いプロダクトができていく。この順番かなと思って、そこを今愚直にやっています。

メルカリには毎日膨大な出品があるため、商品がどれくらい早く売れるかとか、すごくたくさんのデータを持っています。それらをうまく使うことで、サービスはもっともっと便利にできるし、新しいソリューションを作っていくことができるんじゃないかと思っています。

“成功して証明したい”

世界のIT市場でサービスの基盤を握る「プラットフォーマー」として圧倒的な力を持っているのは、アメリカのGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)。これに中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)が対抗しようとしています。
日本発のプレーヤーには楽天やLINEなどがありますが、米中勢に比べるとその名は知れ渡っていません。

最後に山田CEOに、日の丸企業としての気持ちを尋ねると、内に秘めた思いを語ってくれました。
個人的にはそんなに背負っているという感じはないんですけどね(笑)。自分ができることは、良いサービスを作って、世の中を少しでも良くするとか、楽しんでもらうとか、そういうことしかできないかなと思っています。

でも結果的に、海外でも成功できれば、他の人も「じゃあ俺も、じゃあ俺も」って増えてくると思う。今は成功例がないから、みんなすごくリスクが高いと思っているんですけど、僕自身の感覚だとそこまで難しくないんじゃないかなと。そこはむしろ成功して証明していきたいと僕自身は純粋に思っています。

MOTTAINAI

いらなくなった服や捨てようと思った小物の写真をとって掲載すると、それを必要としている誰かが購入し再利用する。メルカリは、そんなエコシステムを生み出しました。

日本には、古くから物を大切にするという「もったいないの精神」があり、「MOTTAINAI」という言葉でも世界に知られています。メルカリの成長の根底には、日本人のこうした考え方があるようにも思えます。

かつてトヨタ生産方式やソニーのウォークマンなどのニッポン流が世界を席けんしました。ITの世界でも、新たなニッポン流を広めていくことができるのか、メルカリにとって勝負の1年になりそうです。
経済部記者
吉武洋輔
平成16年入局
名古屋局をへて経済部
エネルギーや
金融業界など取材
現在、情報通信業界担当