間に合うのか?救世主

間に合うのか?救世主
「早急にバスの自動運転車化、進めるべきでは!?」
「自動運転、バスには最適だと思うけど、まだ無理なのかな?」
全国の大都市でも相次ぐ路線バスの減便や廃止。利用者が多い黒字路線も例外ではありませんでした。背景には、運転手不足が大きく影響ー。(詳しくは特設サイト「路線バス」)。こうした問題を伝える中で、SNSでは、自動運転が解決策になるのでは?といった意見や疑問が多く見られるように。確かに、バスが自動で街中を走れば、“運転手”という職業自体が必要なくなるかも…。そこで探ってみました!自動運転は、運転手不足の解消につながるのでしょうか。
(宮崎局記者 牧野慎太朗・ネットワーク報道部記者 後藤岳彦・首都圏放送センターディレクター 北條泰成)

自動運転で解決では?

「バスの運転手不足が深刻。早く自動運転バスを作り上げないとやばいんじゃないの!?」
「もはや自動運転の無人バスしか現実的な選択肢はほかにないと思います」
「走るルートが決まっている路線バスは自動運転にしやすいんじゃないの?」

今回の取材のきっかけは、こうした投稿。確かに、自動運転バスが実証実験を行っているニュースを最近よく見かけます。

乗用車に比べて車体も大きく、乗る人も多いバス。求められる技術は相当、高そうですが、早速、実験の様子を見にいってきました。

今は、どこまで自動化?

取材に協力してくれたのは、自動運転バスの技術開発を行う都内のベンチャー企業「先進モビリティ」。目指しているのは、地域限定など条件付きでの運転手なしの自動運転バスです。

5段階に分かれている自動運転のレベルのうち「レベル4」に当たります。技術的には、まだ、運転を支援する「レベル2」の段階だそうですが、どんなことができるのでしょうか。
長野県伊那市で国土交通省などと行った実証実験を見に行くと、実験車両は全長7メートルの小型のバス。一見、普通のバスと同じですが、運転手がハンドルを握っていません。

走行ルートは事前に設定されていて、高性能なGPSなどで、現在地を確認しながら、時速35キロで自動で走っていきます。
大きな車体ですが、細い曲がり角も、細かくハンドルを切って難なくクリア。バス停もあらかじめルートに組み込まれていて、所定の位置で停車しました。

こうした点では、走行ルートが決まっているバスは、自動運転に適しているようです。
バスは多くの人の命を預かるため、安全対策も欠かせません。

実験車両は、高感度センサーで前方の車や人を感知。画面には、障害物の形がはっきりと映し出され、必要に応じて停止します。

そして、この会社の青木啓二社長によると、実験車両には、急ブレーキによる車内事故を防ぐため、遠い場所から障害物を認識し、早めにブレーキをかけ始めるシステムが組み込まれているということです。

センサーの認識能力がまだ低いため、都市部での導入はハードルが高いものの、人や車が少ない中山間地域であれば、見落としは少なくなるそうです。

「みずから考えて判断する」これが難しい…

これだけできていても、運転手なしでの自動運転バスへの道のりはそう簡単ではないそうです。

青木社長によると、今後必要になってくるのは「みずから考えて判断する」という技術だといいます。

業界では「自律走行」というらしいです。例えば、私たちは、路上駐車の車を避けたり、車線変更したりする場合、その場面、場面によって、前方・左右・後方を確認したり、速度やハンドル操作を微妙に変えたりして運転します。

今の技術では、周囲の状況はカメラやセンサーで確認できるものの、そのつど、どんな運転操作が最も適切かをバス自身に判断させるのは、相当に難しいらしいです。

バス停に止まっては再び車線に合流する動作を繰り返すバスには、不可欠な技術だそうです。
青木啓二社長
「交通環境が複雑になればなるほど、自動運転の難易度も高くなってくる。都市部での運転手なしでの自動運転バスの導入には、新たなブレイクスルーがないと難しい。直感的には少なくとも10年以上の時間がかかるのではないか」(青木社長)

“自律”しない形での早期実現も

取材を進めると、いわば“分業制”とも言える方法で、早期に運転手がバスに乗らない自動運転バスの導入を目指すところもありました。

それが、群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター。技術的に難易度の高い「みずから考えて判断する」という動作は、バスではなく人間が担うという方法を取り入れています。
どういうことかというと、バスにはあらかじめ決められたルートを自動で走ってもらいます。そのうえで、バスが運行中になにか判断を迫られた時は、停止してシグナルを発信。運行を監視している管制室が、これを受信します。

そして、人間がカメラやセンサーを通してバスの周囲の状況を確認。判断を下し、次の動作を指示するというものです。東京の無人モノレール「ゆりかもめ」に似ています。

自動運転バスの進歩とともに、1人で複数のバスを監視することができれば、運転手不足の解消につながると考えています。2020年内には、国内のどこかで実用化を始めるのが目標です。
小木津武樹副センター長
「2020年はゴールではなく、スタート地点。地域の人の賛同を得るためにも、早期に自動運転バスを公道で走らせ始めることが重要。すぐにすべて自動化するわけではなく、無人のバスを少しずつ普及させていき、そのプロセスのなかで、徐々に徐々に自動運転の技術を育てていきたい」。
小木津武樹副センター長はこう話していました。

技術進めば免許制度も変わる!?

技術的な改善が求められている自動運転ですが、運転手不足はもう待ったなしの状態。

こうした中、今後、自動運転バスの技術がさらに進んでいけば、運転手のなり手が増えるのではないかと期待を寄せているバス会社もありました。
京都市に本社がある京阪バス。大津市のびわ湖周辺で、自動運転バスの実証実験を予定している会社です。どういうことかというと、免許制度が大きく変化することに期待しているのです。

ICT推進部の大久保園明主任は「運転手不足は、バスの運転に必要な大型2種免許の取得者が減っていることが要因の1つ。無人でなくとも、ほとんどの運転操作をシステムが行う段階まで技術が進めば、普通免許など、より取得しやすい免許でも、バスの運転が可能になるよう制度が変わっていく可能性がある。そうなれば、より多くの人に門戸が開かれ、バス運転手のなり手が増えるのではないか」と話していました。

自動運転バス、課題は?

運転技術のほかに、取材の中で見えてきたのはサービス面と費用面の課題です。

サービス面とは、無人の自動運転バスが導入された場合、運転手が担っていた料金の収受業務や、安全運行のための乗客へのアナウンス、車イスの乗客の乗り降りの補助などをどうするのかということ。

以前の取材で、バス運転手の仕事に1日密着したことがありますが、運転以外にもさまざまな業務をこなしていました。

スマートフォンを使った決済サービスや、車内カメラを使った乗客の見守りなど、技術開発は進められていますが、取材の中では「無人のバスが導入されても、こうしたサービス面を担う人間は車内に必要ではないか」という声も聞かれました。

次に費用面の課題。自動運転バスには、高性能なGPSやセンサーなど多くの機器の取り付けが必要ですが、これらも決して安いものではありません。

通常バス1台が2000万円ほどなのに対し、運転手を支援する機器だけでも約4000万円するとも言われています。

しかし、国土交通省の調査では、赤字路線が経営を圧迫し、路線バス事業者全体の約7割が赤字というデータもあるほどです。

無人になれば、運転手の人件費はかからなくなるかもしれませんが、大きな費用負担が課題となりそうです。

「自動運転が先か、バスが滅びるのが先か」

「自動運転が先か、バスが滅びるのが先か」
取材の中で、バスの将来を憂いたツイートも目にしました。

自動運転バスは大きな可能性を秘めた技術ですが、現状の問題への対策が疎かになってしまっては、本当にバスがなくなってしまうかもしれません。

運転手不足の背景には、運転手の労働環境の問題があり、バス会社もこうした環境を改善するために、路線の減便・廃止を余儀なくされています。

近い将来、必ず、バスの自動運転化が実現するとは言えない以上、バスの運転手が疲弊し、路線が減っていく状況にどうやってストップをかけられるのか。抜本的な対策についても、引き続き、考えていく必要があると感じました。