自動運転 食事 読書 ゲームはできる?

自動運転 食事 読書 ゲームはできる?
20日に公表された自動運転の実用化に向けた改正道路交通法の試案。運転席ではどんな過ごし方ができるようになるのでしょうか?そして、ドライバーが負う責任はどうなるのでしょうか?

想定は「レベル3」

今回の改正道路交通法の試案は自動運転の「レベル3」を想定して作られています。

自動運転は、機能によって「レベル1」から「レベル5」まで、下の表のとおり5つの段階に分かれています。
このうち、衝突を回避する自動ブレーキや渋滞時に前の車に自動で追従する機能など、ドライバーの運転を支援する「レベル2」まではすでに実用化されています。
「レベル3」は自動運転の装置が作動しない場合などに備えてドライバーは運転席にいる必要がありますが、あらかじめ限定された道路や走行環境のもとではハンドルから手を離し、操作のすべてを自動運転の装置に委ねることができます。

運転席では何ができる?

それでは、自動運転中、ドライバーにはどんな行動が認められるようになるのでしょうか?

今回の試案では、自動運転の装置を使って車を走らせるドライバーにはこれまでと同様に法律で定められた安全運転の義務などが課せられます。

その考え方の基本になるのが道路交通法第70条安全運転義務の規定です。この条文では、車のドライバーに対し次のように定められています。
ハンドルやブレーキ、そのほかの装置を確実に操作し、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
自動運転の装置はこの条文の中の「そのほかの装置」に該当すると位置づけられていて、ドライバーは自動運転中も運転席で確実に装置を操作して安全運転の義務を果たし、必要が生じた場合にはいつでも操作のすべてを引き継がなくてはいけません。

運転中に認められる行為は?

これらの前提に立つと、飲酒は装置から運転を引き継いだ瞬間、飲酒運転の状態になってしまうことから、自動運転の場合でも認められない行為です。

睡眠も運転操作を引き継がなければならない状況そのものを察知できない可能性があるので、これも認められません。


また、運転席を離れ、助手席や後部座席にいることもすぐに運転操作を引き継げないので認められないと考えられます。
一方で、自動運転中は常に周囲の様子を確認したり、ハンドル操作をしたりしなくてもよくなります。

このため、現在の法律で禁止されている、携帯電話を手に持ったままでの通話のほかメールを読んだり、打ったりする行為、カーナビの画面を注視する行為やゲームの操作などはすぐに装置から運転操作を引き継げるという状況であれば認められます。

食事読書などについても、同じ理由で一般的には認められると考えられますが、行為に熱中していたり、無理な体勢でいたりして、運転を引き継げない状態であった場合は、安全運転義務違反となる可能性があります。

自動運転って 本当に安全?

ところで自動運転は本当に安全なのでしょうか?

これまでの開発段階では事故も起きています。


おととし5月、アメリカの電気自動車メーカー「テスラモーターズ」の車が自動運転機能を使って走行中、大型トレーラーと衝突し、運転していた男性が死亡しました。
ことし3月には、アメリカの配車大手、「ウーバー」の自動運転車両も公道を試験走行中、道路を横断していた女性をはねて死亡させる事故を起こしています。

万が一の事故! その時の責任は…

それでは「レベル3」の自動運転で事故が起きた場合、ドライバーの責任はどうなるのでしょうか?

改正道路交通法の試案では、自動運転の車の所有者などに自動運転の装置が作動していたかどうかなどを記録する装置を備え付けることが義務づけられています。事故などの原因がドライバーの運転操作によるものなのか、それとも装置の故障か、あるいは設計上の不具合によるものなのか見極めるためです。

試案では、警察官は自動運転の車のドライバーに対し、記録装置の情報の開示を求め、メーカーなどにはその情報を判読するための措置を求めることができるとされています。

事故などの原因が装置の設計上の不具合であることが明らかになれば、メーカーが刑事責任を問われる可能性があります。

その一方で、装置が作動しなかった原因が整備不良と確認されれば、ドライバーの責任が問われることも考えられます。

刑事責任については事例ごとに判断されることになりますが、自動運転はまだ実用化前で、現段階ですべてを想定することが難しいうえ、道路交通法や刑法など複数の法律が関係することから、引き続き、関係省庁などが判断のあり方を検討していくことにしています。

民事上の責任は?

自動運転中の車が事故を起こした場合、民事上の責任は誰が負うのでしょうか。

まず、すべての車の所有者に加入が義務づけられている自賠責保険については、これまでと同じように保険会社から被害者に保険金が支払われます。

ドライバーが任意で加入する自動車保険についても、保険各社が自動運転の技術に対応した商品の研究・開発を進めています。仮に事故の原因が自動運転のシステムの欠陥だった場合は、保険会社が支払った保険金を、自動車メーカー側に損害賠償を請求することになります。

政府はこうした事故の原因を詳しく調査するためには、車載カメラの映像や車のスピードやハンドル操作などを記録する「EDR」と呼ばれる装置が必要だと説明しています。ただ、自動運転が事故原因だと特定する方法や判断基準の議論はほとんど行われておらず、今後の課題となっています。

サイバー攻撃の懸念も

ところで、自動運転の車はサイバー攻撃に対する対策の必要性が指摘されています。

東京の大手サイバーセキュリティー会社「トレンドマイクロ」の染谷征良部長は、「従来、パソコンやスマートフォンでもあったようなサイバー攻撃のリスクが、コンピューターを搭載した自動運転の車でも高まってくるのは必然だ。セキュリティーを考慮して設計開発を行うことが重要になってくる」と話しています。
自動車メーカー各社はセキュリティーの強化の取り組みを続けているほか、警察庁もサイバー攻撃に対応する新たな捜査手法などの検討を始める方針です。

いよいよ到来 自動運転社会

政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年をめどに「レベル3」の自動運転を高速道路で実用化する目標を掲げています。

さらに、運転席にドライバーがいない状態でも自動運転が行える「レベル4」についても特定の地域や高速道路で近い将来、実用化することを目指しています。
自動運転は交通事故の削減や渋滞の緩和にもつながると期待を集めています。また、車内で好きなことをして過ごすなどドライブの形も大きく変わってくる可能性もあります。

過信は禁物!

こうした中で最も大切なことは「自動運転を過信しないこと」です。

アメリカで起きた「テスラモーターズ」の事故でも、運輸当局が「自動運転のシステム自体には、問題がなかった」とする一方、運転手が機能を過信してブレーキを踏むなどの対応を取らなかったことが事故につながったという見方を示しています。

警察も自動運転を過信せず、責任を持って安全運転を行うよう注意を呼びかけています。
いよいよ実現が近づいてきた自動運転。その仕組みや限界、法律を正しく理解して利用することが大切です。