決め手は遺伝子!? 話題の“DNA婚活”とは

決め手は遺伝子!? 話題の“DNA婚活”とは
今、若い世代の間で話題になっている婚活サービスがあります。その名も、『DNA婚活』。男女の遺伝子レベルでの相性のよさをもとに、お見合いや交際をすすめるものだということですが…(福岡放送局ディレクター 飯村マリエ)

怪しげな男女たち

都内の飲食店。
怪しげな仮面を着けた女性たちが向かったのは…
男性が待つパーティー会場です。

テーブルには、数字が書かれたカードが置かれています。この数字は、互いのDNAの相性を表したものです。
事前に行った遺伝子検査を元に、相性のよさを0~100%で示します。70%以上だと「相性がいい」としています。向かい合った男女は、年齢や職業・年収などを一切明かさず、DNAの相性だけをたよりに交流するのがルールです。
「相性82%」のこの男女。すぐに共通の話題を見つけて、盛り上がっていました。
「感覚的に合うところが多い、不思議な感じがした」(男性)
「しゃべりやすい」(女性)

「似ていない」ほど相性がいい

DNAに“相性”は本当にあるのか?
婚活サービス会社が根拠としているのが、免疫をつかさどる「HLA遺伝子」です。1万以上の型があり、この型が「似ていない」男女ほど相性がよく「似ている」のは相性が悪いとされています。

研究が進むきっかけとなったのが、スイスでおよそ100人の男女を対象に行われた実験です。人はHLA遺伝子の違いを匂いとして感じ取ります。そこで、汗や食べ物などの影響を受けない環境で男性が2晩着たTシャツの匂いを女性に嗅いでもらい、どう感じるか答えてもらいました。
すると女性は、自分と型が似ていない男性の匂いほど魅力を感じ、ひきつけられることがわかったのです。HLA遺伝子の型が似ていない人どうしが結婚すると、免疫の強い子どもが産まれやすいとされています。

専門家は、そうしたことが「合う」「合わない」といった感覚にも影響するのではないかと見ています。
「自分たちが、遺伝子とは何の関係もなく起こっていると思うような心の動きなども必ず一定の遺伝子の働きが背後にある」

科学で相手を選べる時代

こうした研究をもとに、DNA婚活のサービスは、5年ほど前からスイスやアメリカで広がりました。現在、日本でも大手を含む婚活サービス会社4社が提供しています。
このうち、20代・30代の女性を中心に、約200人が登録しているという会社では、紹介料などに加えて数万円の検査費を支払うとDNAの相性を参考にしながら、相手を紹介してくれます。
「早めにいい人と会って、早めに幸せな生活を送るのが重要。あんまり時間をむだにしたくない」
この会社の社長は、“科学で相手を選べる時代が来た”と強調します。

恋愛や婚活に疲れた女性たち

このサービスのどこに魅力を感じるのか。
ことし7月から利用している平野さん(仮名)です。これまで、合コンや街コンなどにも参加してきましたが、新しい人に会ったり、恋愛したりすることに疲れてしまったと言います。
「仲よくなれるかどうかって、会わないとわからない。何度も会って、その人に意識を向けて、“違った”っていうときのつらさ。DNA婚活なら、つらい思いをしなくてすむのかな」
この日、紹介されたのは、33歳の公務員です。デートの感触は、まんざらでもない様子でした。

相性診断の数値だけにとらわれないでほしいと、この会社では、デートしてもらったうえでDNAの相性を伝えています。

数日後、男性とのDNAの相性を確認すると、結果は76%と良好でした。早速次のデートの約束を取り付けたそうです。
「手探りで婚活してきたけれど、やっとたどり着いたような。DNA婚活は後押しだとは思います」(平野さん・仮名)

流行の背景は?

効率よく結婚相手を見つけたいという傾向は、特に若い世代で強まっていて、DNA婚活も20代の利用者が増えているということです。
また、ネットなどを活用したマッチングサービスの市場規模は、ことし374億円と3年前の3倍以上に増え、さらに5年後には、852億円まで伸びると予測されています。

こうした状況について、“婚活”という言葉の生みの親で、家族社会学が専門の中央大学の山田昌弘教授に聞きました。
「今の20代、30代は、バブル崩壊後の経済的に厳しい時代に生まれ育ったため、安定志向が強く、『早く結婚して安定した家庭を築きたい』と考える人が多い傾向にある。しかし、その希望をかなえられる人ばかりではない。DNA婚活は、『せっかく知り合ったのに、相性が合わない』といったリスクを最小にすることをうたっているサービスなので、利用してみようという人が増えるのも分かる。現代は、恋愛を楽しむ余裕がなくなった社会とも言える」

結局大切なのは?

「DNAの相性がいい」ということで結婚した人たちは、その後、どうなのか?サービスを利用して結ばれた33歳の公務員と36歳の元看護師の夫婦に話を聞きました。

いざ一緒に暮らすと、関西人と関東人ということもあって、ささいなことばのニュアンスの違いなどでぶつかることも多かったそうです。DNAの相性がよくても、長く関係を続けるには、やはり互いに歩み寄る努力が大事だと、話していました。

情報通信研究機構の山元大輔上席研究員も、こう指摘します。
「相性と遺伝子の関係については一定の科学的根拠はあるものの、実際の夫婦関係が長続きするかどうかにはさまざまな要素が絡んでいるので、DNAの相性は参考情報程度にするべきではないか」
こうしたサービスは、結婚を後押しする大きなきっかけになるかもしれませんが、結局は互いの「思いやり」と少しの「忍耐」が良好な関係を長く続ける秘けつなのかもしれません。
福岡放送局ディレクター
飯村マリエ
平成27年入局