先生の給与 高いって本当?

先生の給与 高いって本当?
“過酷な勤務なのに残業代はでない”いまや「ブラック学校」と呼ばれることもあるそうです。そんな中、文部科学省の役人は私たちにこういいました。「教員の給与は『優遇』されている」 それ、本当なのでしょうか。(社会部記者 荒川真帆)

月給は46万円だけど…

東日本の中学校で働く41歳の男性教員が自分の給与を教えてくれました。
「月収は46万円。年収はボーナスをいれて700万円前後です」

この教員の家族は妻と子ども2人。年齢を考えれば額面の給与には満足しているといいます。

ところが私が「優遇されていると感じますか」と尋ねると、「そうは感じません」ときっぱり否定しました。

優遇と感じない理由~多すぎる残業

その理由として、この教員は多忙な業務を挙げました。部活動や生徒指導、保護者や地域への対応など、ことし11月の残業は80時間を超えたといいます。
教師になった18年前と比べて学校に求められる役割も増え、明らかに忙しくなったと感じています。教員はこう訴えます。
子どもの成長を見ることにやりがいは感じるが、とにかくやることが多すぎる。保護者や地域も学校はそれで当たり前という空気を感じる。家族との時間や休みを犠牲にしているのにやるせない。

そもそも給与多いの?

では、給与面で教員が優遇されているというのは本当か?

確かに教員の給与は昭和40年代に出来た2つの法律(※)により一般公務員より高く設定されていました。
(※)
1.教育職員の給与特措法
時間外手当を出さない代わりに一律に基本給の4%分を支給。
2.教育職員の人材確保特措法
教員給与を一般公務員より優遇するよう定める。
しかし、取材してみると、これらの優遇措置による賃金差は年々、縮小していることが分かりました。

総務省のデータでは昭和55年の時点では、教員は一般公務員より12.3%上回っていましたが、平成29年になるとその差はわずか1.4%です。

平均月給は教員が42万円余り、一般公務員が41万4000円。6000円多いだけです。
さらに、大きいのが残業時間の急増です。

教員はさきほどの教育職員の給与特措法により、残業代は支払われません。しかし、冒頭で紹介した教員のように過労死ラインとされる月80時間を超える残業を行うケースは小学校で3割、中学校で6割に上っています。

もし教員に時間外手当、つまり残業代が出されれば金額はいかほどなのか。公務員の給与制度に詳しい専門家と試算しました。

冒頭で紹介した教員の場合、月46万円の給与のうち、2つの法律で優遇されている部分は7万8700円です。

一方、残業1時間の単価を3000円とした場合、仮に月45時間残業すると、13万5000円の残業代が発生します。

つまり優遇分を差し引いても5万6300円も少ないということになります。

専門家は?

教員は優遇されているか否か。それぞれの立場の専門家の意見です。
「優遇されている」 千葉大学 天笠茂特任教授
優遇の比率は下がっているが、全体として見れば、まだ優遇されているため優秀な人材の確保や社会的地位を高める結果となっている。もし時間外手当などを出すとなるとばく大な財源が必要だ。
「優遇とはいえない」 名古屋大学 丸山和昭准教授
教師の優遇分も減り、教員の長時間の時間外勤務が常態化した現在では、給与体系がそぐわなくなってきている。優秀な教員を確保する方法を抜本的に見直すべきではないか。

優遇できないなら業務削減を

文部科学省は教員の優遇分は月給だけでなくボーナスや退職金に反映されると主張しています。しかし、それを加味しても教員の給与はもはや優遇とはいえないと感じます。

一方で、もし教員に時間外手当を支給したら兆単位の財源が必要になる。国の財政がひっ迫する中、そんな予算は確保できないという文部科学省の主張にも一定の妥当性はあるように感じます。

だとすると、できるのは業務量を給与に見合うよう見直すしかありません。
文部科学省は今月、働き方改革の方針案で残業の上限を45時間にすると初めて示しました。

しかし、私たちは全国で先進的に業務の見直しに取り組む学校、そして教員を数多く取材しましたが、この45時間を一律に実現できると考える学校はありませんでした。
残業時間の上限を45時間と示した中教審 12月6日

問題解決に求められるものは

取材すると、それぞれの立場の人たちがこの難題に真摯(しんし)に向き合っていると感じました。最後にこんな呼びかけをしたいと思います。
国に対して
削減を口にする以上、全国各地から具体的な成功と失敗の事例を集めて、どの学校でも取り組める削減案を示してほしい。そして、必要な予算を確保してください。
教育委員会に対して
学校の負担を増やすような余計な調査などは思い切ってやめてほしい。現場を守れるのは皆さんです。
保護者・地域に対して
地域にとって学校は交流の場、そして災害時の避難所などに使われる拠点となっているはずです。どうか要求するより力を貸してあげてください。
学校に対して
単に数値のみを達成しようとして間違った努力をしないでほしい。子どもたちと直接向き合っているのは国ではなく先生たちです。