外国人材法案 歓迎の声の一方 課題も

外国人材法案 歓迎の声の一方 課題も
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外国人材の受け入れを拡大するための今回の法案、歓迎の声がある一方で、課題も指摘されています。

食品メーカーは

外国人材の受け入れ拡大について、タイからの技能実習生が働く食品メーカーからは、安定的な人材の確保につながるとして、期待する声が上がっています。

流通大手「ユニー・ファミリーマートホールディングス」の子会社「カネ美食品」は、神奈川県厚木市の工場でコンビニ向けのおにぎりや弁当などを製造しています。

この工場では、求人を出しても働き手を確保できない状況が続いたため、3年前からタイから技能実習生を受け入れ、現在はおよそ370人の従業員のうち2割近い66人を占めています。

工場の生産ラインでは、7日も技能実習生たちが、おにぎりに具材を入れ、のりで巻く作業などに当たっていました。

カイセーン・トゥラーポーンさん(23)は、「仕事は大変だと思うときもありますが、一生懸命頑張っています。みんな優しいので楽しいです」と話していました。

カネ美食品横浜工場の津崎充工場長は「今や外国人の方と働くのは当たり前になっているし、いなくなられたら、工場の運営そのものが難しくなる。外国人材の受け入れ拡大は製造現場としてはとてもありがたい」と話していました。

長野県の農家は

長野県内の農家からは、担い手の確保につながると期待する声が出ています。

レタスや白菜など高原野菜の産地として知られる長野県東部の川上村では、日本人の担い手が慢性的に不足していたため、多くの農家で外国人技能実習生を受け入れています。

およそ500軒の農家に対して実習生は1000人近くと、今では村の農業に欠かせない存在となっています。

村内で農業法人を立ち上げて白菜を栽培している原進吾さん(60)もフィリピンからの実習生5人を受け入れ、実習生たちが来年の農作業に向けた準備を行っています。

原さんは10年前ほどから実習生を受け入れ、白菜の生産量は2倍近くに増えました。

一方、いまの制度では、実習生が同じ業務内容で再び日本を訪れることはできず、実習生が帰るたびに新しい人材を確保する必要があるということです。

このため外国人材の受け入れ拡大は、担い手の確保につながるのではないかと原さんは期待しています。

原さんは「実習生ではなく労働者となり、これまでの制約がなくなれば、もう一歩踏み込んだ農業の担い手として活躍してもらえるのではないか」と話しています。

居酒屋チェーンでは

外国人材の受け入れ拡大についてアルバイトの3分の1を留学生などの外国人が占めている居酒屋チェーンからは「社員への登用も検討したい」と期待する声が出ています。

首都圏を中心におよそ120店舗を展開する居酒屋チェーンでは、およそ2800人いるアルバイトの3分の1に当たり900人余りが留学生などの外国人で、このうち700人あまりがベトナム人です。

人手不足などの影響でアルバイトに占める外国人の割合は年々高まり、会社では外国人向けの研修施設をつくり去年から研修を始めています。

研修ではベトナム語に翻訳したマニュアルを用意して、敬語の使い方や笑顔での接客といった日本の文化やマナーを教えます。店舗に出てからも、同じ国出身の先輩アルバイトが注文の取り方などを指導していて、日本酒の注文を受けた場合はおちょこがいくつ必要か聞くようにアドバイスするなど細かく教えています。

現在の日本の制度では留学生は学校を卒業すると、アルバイトで働き続けることはできず、高い専門知識や技術を持つケース以外は外食業で働くことは認められていません。そのため、会社は留学生が卒業するたびに新しいアルバイトを確保して、育成する必要がありました。

店長からは「卒業後も雇うことができないか」という要望が出ていたほか、留学生からも「長く働きたい」という声があったことから、会社は、優秀な留学生のアルバイトを社員として登用したいと検討を始めています。

人事部長の芳澤聡さんは「法律の改正は非常に良いことで、技術を持った外国人が長く働いてもらうことができれば店の戦力が上がると考えている。外国人が安心して働ける環境を整えていきたい」と話しています。

労働団体からは懸念も

外国人の受け入れが進む一方で、懸念されるのが、労働環境をめぐるトラブルの増加です。

徳島県内の労働組合で作る「連合徳島」は、平成15年以降、技能実習生などの外国人労働者から、賃金の未払いや解雇などさまざまな内容の相談を合わせて800件以上受けてきました。

担当者はこうした問題が解決されないまま外国人材の受け入れ拡大が進んでいくことに、懸念を感じています。

連合徳島の担当者、傅麗さんは「日本がどんな受け入れ態勢を整えるのか、そこが問われている。安全安心して働ける環境づくりや、外国人と共に生きていく、助け合っていく社会づくりが必要になると思う」と話しています。

離島の福祉施設では

若者の流出が続く長崎県の離島にある壱岐市では外国人材の受け入れが拡大されても、人手不足の解消にはつながらないのではないかという声も出ています。

長崎県の離島にある壱岐市では、65歳以上の高齢者が4割近くを占め、高校を卒業した生徒のおよそ9割が進学や就職で市外へ出ていくため、人手不足の解消が大きな課題となっています。

このため、市内にある特別養護老人ホーム「壱岐のこころ」では、去年4月から地元の専門学校に通うインドやネパールからの留学生をアルバイトとして雇い始め、現在、留学生11人が働いています。

留学生は、いずれも日本の介護福祉士の資格取得を目指していて、老人ホームではお年寄りの食事の配ぜんなどの仕事をしています。

施設の主任を務める目良恵子さんは、外国人材の受け入れ拡大について「日本全国を見ても介護人材は少なく、特に離島の場合は若い人がなかなか島内に定着しないので、すごくいいことだ」と歓迎しています。

一方で、目良さんは、今後について、「アルバイトの外国人留学生も東京や福岡で就職するというのがほとんどで、いまの若い子は、日本人でもそうだが、『都会に行きたい』という思いはある。やはり厳しい部分が続くのではないか」と話し、条件が不利な離島では人手不足の解消にはつながらないのではないかと懸念を示しました。

さらに、目良さんは「外国人の一生懸命勉強して『学ぼう』という姿勢が利用者にも伝わり、私たちも学ばせてもらう部分が多々ある。そういう海外の方を受け入れる体制を整えるために、国にはしっかりしたビジョンを立ててほしい」と指摘していました。

外国人の就職支援会社では

外国人材の受け入れ拡大について、多くの高度人材の正社員採用を支援してきた人からは、懸念する声が出ています。

都内で外国人の就職を支援している会社「ワークナビ」の加藤侑社長は、技能実習生から移行して働けるようになる在留資格が出てくることについて、「技能実習を延長させているだけにしか見えない部分がある。在留資格が延長したとしても、一定の技能が無いと家族が連れてこられないなど、まだ運用面でのハードルは高い」と話しています。

そのうえで、「現在は低賃金で雇用するために技能実習生を活用する風潮があるのも事実であり、今後、外国人を受け入れるにあたっては企業側も考え方を変えていかなければならない」と話しています。

新設の「登録支援機関」とは

新たな在留資格で入国する外国人労働者に対しては住宅などの生活支援や日本語教育などを行うことが受け入れ先に求められますが、規模が小さく独自の支援が難しい場合は「登録支援機関」という団体がその役割を担います。

「登録支援機関」になるには、新たに設置される出入国在留管理庁への登録が必要です。

登録には中長期にわたる外国人受け入れの実績のある職員がいることや団体が5年以内に出入国や労働に関する法令違反で罰せられていないことなどが要件になる見通しです。

現在の外国人技能実習制度で同じような役割を担っている「監理団体」は、非営利の団体に限られ人材派遣会社など企業は参入できませんが、今回の「登録支援機関」では民間企業にも門戸を開くことになります。

野党や労働組合からは「技能実習制度の『監理団体』でも賃金のピンハネなど問題が相次いだ。新たな制度でも仲介料目当ての悪質な企業やブローカーが入ってくる懸念がある」と懸念の声が上がっています。

「登録支援機関」に懸念も

「登録支援機関」をめぐっては、企業側からも悪質なブローカーの参入を懸念する声が上がっています。

東京・杉並区にある従業員およそ30人の建設会社は、人手不足のため去年8月、ベトナムから2人の技能実習生を受け入れました。

建設会社では、「監理団体」と呼ばれる非営利の団体を通じて実習生を受け入れています。

この「監理団体」は、今後、外国人材の受け入れで設けられる「登録支援機関」のように実習生の生活支援などを行っています。

この建設会社は、「監理団体」側に対して実習生1人あたり1年目の初期費用として31万円、監理費などとして毎月3万7000円を支払っています。会社は実習生を受け入れるに当たって本人への給与のほかに、多額の費用を「監理団体」側に支払っているのです。

そのため、今後、外国人労働者を受け入れる際にも、新たに設けられる「登録支援機関」に対して同様の支払いが必要になるとみています。

その「登録支援機関」に悪質なブローカーが参入してくれば、不当な中間搾取が行われるのではないかと懸念しているのです。

会社の磯上武章会長は「中小企業が単独で外国人の受け入れに関する業務を行うのは難しいので、その代わりを担う『登録支援機関』は必要だ。しかし、どのような支援をするのかまだよくわからないし、悪質なブローカーが入り込まないようにしてほしい」と話しています。

専門家「今後も議論を」

外国人労働者の問題に詳しい法政大学の上林千恵子教授は「法律ができることに総論では賛成だが、将来への影響が大きな法律がこんなに短い審議で成立する例はないと思う。率直に言って不安を感じる」と述べました。

そのうえで、今後の課題として、いま日本で暮らしている人たちへの影響を指摘しています。

上林教授は「不法就労者の増大や、日本人の賃金上昇が抑制されるのではないかという懸念がある。若くて意欲がある外国人が入ってくると、短時間で働いている日本人の高齢者やパートの女性は不利になるのではないか」と話しています。

また、外国人労働者の支援をめぐっても課題があるといいます。
受け入れ先に代わって生活や日本語習得の支援を行う「登録支援機関」の制度を国がスタートさせるとしていることについて、制度をしっかり作らなければ、悪質なブローカーが「登録支援機関」として参入するおそれがあると指摘します。

上林教授は「ビジネスを目的とした企業などが参入した場合、どれくらいの利潤を得るのが適切なのか『登録支援機関』のイメージがはっきりしない。どんな組織になるのか、透明性や公平性を担保してほしい。今後も議論を行っていかなければならない」と話していました。