運転手は眠れない…

運転手は眠れない…
「路線バスの運転手の窮状を伝えてくれてありがたい」(詳しくは特設サイト「路線バス問題」)。SNSで見つけた複数のつぶやき。ふだん、あまり感謝されることが少ないので、正直、うれしさを通り越して驚きました。せっかくなので、直接、話を聞かせてもらうと、そこには記者の想像を上回る、運転手の厳しい現実がありました。
(宮崎局記者 牧野慎太朗・ネットワーク報道部記者 後藤岳彦・首都圏放送センターディレクター 北條泰成)

拘束時間13時間超は当たり前

「身も心も限界ですー」

こう話すのは首都圏内のバス会社で働く20代の運転手。

路線バスの運転手になって5年。特に男性が大変だと感じているのは「拘束時間」の長さです。

だいたい朝6時ごろには出勤し、夜の8時ごろまで働きます。拘束時間は1日平均13~14時間にも上るといいます。
この「拘束時間」というのはバス運転手など特有の勤務形態で、休憩と勤務時間を合わせたもの。

1日に最大で16時間まで、15時間超えの拘束は週2回まで認められています。

男性は、勤務を終え、帰宅するのはだいたい夜10時すぎ。睡眠時間は4時間程度の日が多くなり、慢性的に疲れや眠気を感じるといいます。
「12時間の拘束ならまだ短いほうです。13時間超えはざらで多い時は16時間近くにもなります。仕事は朝の車両点検から始まり、運転、車内アナウンス、乗客のクレーム対応、忘れ物の確認など、とにかく神経を使うので毎日ぐったりです。家に帰ってもなかなか寝つけず、ずっと疲れている状態ですね」こう話してくれました。

休日出勤も増 その理由はー

さらに男性の負担に追い打ちをかけているのが休日の減少。

もともと5勤2休という勤務形態でしたが、最近、特に休日出勤を求められることが多くなったといいます。

「休みの前日とかに会社からお願いされて。気持ち的には断りたい時もありますがどうしてもとお願いされるとなかなか。休みは週に1日程度。そうなるとますます疲れがたまります」

さらに休日出勤が増えた理由を聞くと「運転手不足です。とにかく運転手が次々と辞めていきます。やっぱり仕事がきついからですよね」と話してくれました。

男性が働くバス会社でも運転手不足は深刻化していて、その影響で、減便も相次いでいるといいます。

その結果、運転手の多くは乗務時間が減り、収入が下がり、年収300万円台の運転手も少なくないといいます。

「運転手不足で会社も減便するんだけど、乗務時間が減り、年収が下がる。そうなると、別の会社に移る人が続出。さらに人手が足りなくなるので、残された人たちの負担は減らない。結局、悪循環なんですよねえ。もうどうすればいいのかって感じです」と苦しい胸の内を話してくれました。

地方はつらいよ 営業所で寝泊まりする運転手も

ある運転手の勤務記録 15時間近い拘束時間に
「地方はもっと大変です」

地方のバス会社を取材していると運転手からよくこんな話しを聞きます。

西日本にあるバス会社で働く50代の運転手は、珍しいケースだとしたうえでこう話してくれました。

「だいたい10日ぐらいは家に帰りません。営業所に寝泊まりして働き、休みに帰るという生活です」

どういうことなのか詳しく聞くと「自宅から遠く離れた営業所にかわってしまいました。運転手不足も影響しているかもしません。拘束時間も長くなっているので、少しでも体を休めようと思うと、営業所に泊まったほうがましなんです。この年で会社を辞めてもどこにも行くところがありませんから」

男性のように1週間以上も営業所に寝泊まりする人はほとんどいないということですが、1日、2日、寝泊まりする運転手は珍しくないといいます。
「子どもができたり、家を建てたりするので辞めるという運転手が相次いでいます」

こう話すのは九州のバス会社で働く40代の運転手。その理由は「収入」だといいます。

男性が働く会社では赤字路線を多く抱え、この数年、収入は減少傾向。年収200万円台の運転手が多くなっているといいます。

「年収200万円台では地方でも生活はギリギリ。子どもの教育費や家を建てようと思うと、バスの運転手の稼ぎだけでは無理」こう苦境を話します。

実際、国のデータを見てみると、首都圏ではバス運転手の平均年収は400万円~500万円台のところが目立つ一方で、地方では300万円台のところが多くなっています。最も低い宮崎県では年収200万円台前半となっていました。

“ありがとう”が支え でも限界も

今回、話を聞かせてもらったバスの運転手の多くはこうも話してくれました。

「運転席にいると子どもたちが『かっこいー』と言ってくれることがある。バスをおりるときには皆さん『ありがとう』と言ってくれる。だから頑張れる。でも果たしていつまで続けられるんだろうかという不安もあります」

一方のバス会社の多くは、慢性的な赤字、利用者の減少、そして運転手不足と厳しい経営環境に直面していて、運賃を上げて、運転手の待遇改善をしようにも、難しい状況にあります。

多くの乗客の命を預かるバスの運転手が疲弊し、辞めていく。そして、全国各地で減便・廃止が続いていく。

どうすればこの問題に歯止めがかけられるのか。引き続き、皆さんと一緒に考えていきたい思います。

今回の記事や特設サイト「路線バス問題」にまとめてきた内容を、11月30日(金)の「首都圏情報 ネタドリ!」でも放送します。ぜひ、ご覧ください。