タイヤチェーン義務化 通行禁止ってほんと?

タイヤチェーン義務化 通行禁止ってほんと?
冬もそろそろ本番という時期に気になるニュースが入ってきました。それは「タイヤチェーンの義務化」。
雪が降ってもチェーンをつけたことないのに義務化って?
スタッドレスタイヤじゃいけないの?
調べてみました。
(ネットワーク報道部記者 管野彰彦 伊賀亮人 飯田耕太 松江放送局記者 奥野葉月)

広がるチェーン義務化の反響

きっかけは今月15日、国土交通省が大雪の際、国道などでのチェーンの装着を義務づける方針を示したことでした。ネット上ではさまざまな声があがっています。

なぜ義務化?

なぜ、タイヤチェーンの装着を義務づける必要があるのか。

国土交通省によると、背景には、各地で大雪による大規模な立往生が相次いだことへの強い危機感があるといいます。

ことし1月には、首都圏で大雪となり、東京の首都高速道路の中央環状線で、大型トレーラーが動けなくなったことをきっかけに、10時間余りにわたり最大で12キロの立往生が生じました。
また、2月には、北陸の記録的な大雪で、福井県から石川県にかけての国道8号線で、およそ1500台の車が立往生して、解消までに3日間かかる事態も起きました。

国土交通省によりますと、いずれのケースも、きっかけはチェーンが切れたり、そもそも装着していなかったりした1台の大型車が立往生したことが原因とみられるということです。
いったん立往生が起きれば交通網はマヒするため、福井県のケースではコンビニに食料品が届かなかったり、ガソリンが不足したりして住民の生活にも深刻な影響が出ました。

チェーン未装着の車の立往生目立つ

国土交通省が平成27年度に、全国で雪で立往生した500台以上の車を分析したところ、75%が冬タイヤを装着していました。しかし、このうちチェーンを装着していた車は11%にとどまりました。スタッドレスタイヤなどは装着していたもののチェーンがなかった車が立往生するケースが目立っています。

国土交通省は「立往生はチェーンを装着していない大型車が原因になるケースが多い。冬タイヤの装着だけでは防ぐことはできず、チェーンの規制を強化する必要がある」としています。

チェーンとスタッドレスタイヤ どれくらい違うの?

とはいえ、スタッドレスタイヤの性能も向上する中で、タイヤチェーンの義務化は本当に必要なのか?という疑問を感じる人も多いのではないでしょうか。

JAF=日本自動車連盟の東京支部に聞いたところ、スタッドレスタイヤは、凍結している路面では、タイヤの溝に水の膜が入り込んで滑りやすくなるため、スリップが起きて立往生につながる可能性があるということです。
一方、タイヤチェーンは雪や氷に食い込むグリップ力が強いため、発進や停車がしやすく立往生を防ぎやすいといいます。

実際、JAFが行った走行テストでは、それを裏付けるような結果も出ています。

路面が凍結した「アイスバーン」の状態で、平らな道路から発進して9%の勾配がついた坂道を走行しようとしたところ、スタッドレスタイヤでは上ることができず、チェーンを装着すると上ることができたという結果が出たのです。
JAF東京支部は「スタッドレスタイヤに加え、路面の状況によってチェーンも合わせて装着することが立往生やスリップを防ぐには効果的です」と話します。

規制の内容は?

実際の規制はどういった形で行われるのでしょうか。

まず、今回、国土交通省が行おうとしているのは、道路標識の新設です。
国土交通省が公表した標識のデザイン案
その名も「タイヤチェーンを取り付けていない車両通行止め」。
この標識が取り付けられた区間では、チェーンを装着していない車はすべて通行が禁止されます。
標識がどこに設置されるか、またその数は調整中ということですが、今のところ、高速道路と国が管理する国道などのうち、傾斜が急で過去に立往生が発生したような場所を指定する予定だということです。

そして、重要なポイントは、常に通行禁止になるわけではないという点です。

標識が取り付けられるのは、国土交通省と気象庁が「大雪に関する緊急発表」を行うような、特に大雪の危険性が高まっている時などにかぎられるといいます。

そのため、ふだんは標識にカバーを取り付けたり、規制する時だけ看板に取り付けて表示したりするなどの運用が想定されているといいます。
ちなみに「大雪に関する緊急発表」は、昨年度は、全国で合わせて3回発表されているので、実際に規制が実施されるのは、年間数回程度になる見込みだということです。

そして、この規制が行われているにもかかわらず、チェーンをつけずに道路を通行した場合は、道路交通法違反になり、警察の取締りの対象になるということです。

国土交通省では、関連する省令を改正し、12月上旬には公布・施行することにしています。

現在のチェーン規制と何が違うの?

ところで今でも、冬場に高速道路などを走っていると「チェーン規制実施中」という表示を目にすることもありますが、なにが違うのでしょうか。

国土交通省によると、現状のチェーン規制は「規制」とはいえ、強制力がないうえ、実際にはスタッドレスタイヤの装着でも通行可能にしているということです。

飛ぶように売れるチェーン

今の時期、雪国でよく見られるのはスタッドレスタイヤに交換するため、自動車用品店などに駆け込むドライバーたちの姿です。

松江市内にある店を、今月27日に訪れたときには、従業員たちが、ひっきりなしにタイヤ交換をしていました。
「チェーン義務化の報道が出て以来、店には『ことしからチェーンを装着しなければいけないのか』とか『在庫はあるか』などの問い合わせが急増しています。タイヤ交換と合わせてチェーンを買い求める人が例年より2割ほど多く、異例のペースで売れています」(イエローハット松江店 記藤司店長)

この店では、昨シーズンは大雪となった2月ごろからチェーンの需要が高まりましたが、ことしはすでに1万円余りで買える低価格の鉄製のチェーンを中心に売り上げを伸ばしているということです。

こうした客の中には、通勤や会社で日常的に車を使用する人や、買い物などで雪道の運転が欠かせない地域の人が多いということです。

記藤店長は「品ぞろえや在庫を増やして対応していますが、すでに売り切れの商品も出ているので早めに買い求めてほしい」と話していました。

トラック業界からも要望相次ぐ

一方、ことし2月の記録的な大雪で大規模な車の立往生が起きた福井県のトラック協会では、国道や高速道路を利用するのは、関西など他県のドライバーも多いとしたうえで「雪が降らない地域のドライバーほどチェーンへの認識は低いと感じています。全国のドライバーに周知していかなければ問題の解決にはならない」と指摘しています。

こうした声を受け全国の事業者でつくる全日本トラック協会は国土交通省などが行ったパブリックコメントの中で要望しました。

この中では、規制標識の設置にあたっては道路利用者に詳細を事前に説明すること。

チェーン規制区間の前後に、チェーンの着脱が安全かつ効率よく行える場所を確保すること。できない場合は規制区間にしないことなどを求めています。

この冬始まる見通しのタイヤチェーンの義務化。
どうやって大雪による立往生を防いでいくのか。混乱を招かないためにも丁寧な説明や周知が求められていると思います。