タオルがシカに 長靴がイノシシに?

タオルがシカに 長靴がイノシシに?
「職員が身につけていた白いタオルが鹿のお尻に見えた」

今月20日、北海道の山中で国の森林事務所の男性職員が猟銃で撃たれて死亡した事故で、逮捕された49歳の自営業者は警察に対し、こうした趣旨の供述をしているそうです。

別のケースでは、長靴がイノシシに見えたこともあるそうです。
狩猟をきちんと理解するために取材しました。
(ネットワーク報道部記者 大石理恵 吉永なつみ 札幌放送局記者 廣瀬奈美)

後を絶たない事故

北海道恵庭市(今月20日)
「獲物の動物だと思ったら人だった」
「猟銃のやさきをきちんと確認していなかった」

ハンターの誤射で、人が亡くなったり重いけがをする事故は毎年、数件ずつ起きています。

環境省によりますと、死亡または重傷を負った人は、平成23年に6人(死亡3人)、平成24年に7人(死亡2人)、平成25年に7人(死亡3人)、平成26年に4人(死亡1人)、平成27年に1人(死亡0人)。

悲劇は、繰り返されています。

登山やぎんなん採りでも

被害にあうのは、一緒に山に入ったハンター仲間が多いようですが、中には、一般の人もいます。

平成24年11月には山梨県大月市の山で、登山中の40代女性の太ももにイノシシ猟をしていた男が撃った弾が当たり大けが。

平成26年11月には、福岡県みやこ町の山林にぎんなん採りに来ていた70代の男性が、イノシシ猟をしていた男の猟銃で胸を打たれて死亡しています。

手袋がシカに 長靴がイノシシに

なぜ、誤射が後を絶たないのか。

事故防止を目的に環境省が制作し、YouTubeで公開しているビデオによると、間違いなく獲物だということをハンターが確認しないまま撃ってしまうことが、最大の原因だとしています。
実際に起きた例として、白い手袋がシカの尻に見えたというケースや長靴がイノシシの胴体に見えたというケースなどが紹介されています。
また、獲物の背後に人がいないことを確認できない状態で撃ってしまい、流れ弾で事故を起こしてしまうケースも解説して注意を喚起しています。

では、狩猟に関わらない私たちが何か知っておくべきことはあるのでしょうか。

基礎的な知識として、狩猟は期間や地域が限られています。

狩猟が認められているのは、北海道以外の区域では毎年11月15日から翌年の2月15日。北海道では10月1日から翌年の1月31日。
(対象狩猟鳥獣や都道府県によって猟期が違うケースがあり確認が必要です)
東京都の「ハンターマップ」
また、鳥獣保護のため狩猟を禁止したり制限している場所は、都道府県に狩猟者登録をする際、配布される通称「ハンターマップ」に記載されています。

ただ、鳥獣保護や管理を管轄する環境省の担当者に尋ねると「誤射はハンターが気をつけるべきことです」と即答。
「そもそもハンターは、登山道やハイキングルートも含め人や車が自由に出入りできる公道の近くで狩猟してはならない、という法律があります」と言います。

となると、あまり神経質になる必要はないのかも知れません。

狩猟の世界に変化の兆し?

一方で、狩猟が私たちに身近な存在になっていることを感じる出来事が最近ありました。

それは先日、ツイッターで注目されたこんな声。

「なんてこったい!! またしても枠いっぱいにされて受験受付すらしてもらえない! 狩猟免許 試験の受付枠数少なすぎ問題」
投稿したのは、埼玉県の山あいにあるおよそ1.2ヘクタールの畑で有機農業を営む勝又智巳さん。畑で栽培するジャガイモがイノシシに荒らされ、放し飼いにしているニワトリがキツネに殺されるといった被害に何度も遭ってきました。

自分の畑は自分で守ろうと考えた勝又さんは、11月上旬にわなと銃の狩猟免許を取得しようと東京都に申し込みに行きました。

ところが、受験希望者が殺到し、勝又さんは受付すらしてもらえなかったといいます。
「受付開始時刻の午前9時に会場を訪れましたが、すでに多くの人が列をつくり定員を超えたようでした。実は僕が申し込みを受け付けてもらえなかったのは今回が2回目です。各地で獣害が問題になっているのに、これではいつまでたっても解決できません。受験できる枠を増やしてほしいです」(勝又さん)

急増する受験者?

東京都環境局に確認すると、ここ数年、受験希望者が増えていることを踏まえ、それまで年に2回だった狩猟免許の試験回数を平成28年に3回に、ことしには4回に増やしたそうです。

それでも対応が追いつかないと言うのです。

狩猟免許の所有者数の最新のデータは平成27年までしかなく、それまではほぼ横ばいですが、その後、少なくとも東京では異変が起きていることをうかがわせる出来事。
全国の猟友会をとりまとめる大日本猟友会に聞くと最近目立つのが新規の資格取得者、とりわけ女性のハンターの増加だと言います。

自然環境の保全に貢献したいとか最近のアウトドアブーム、さらにジビエに関心を持つ人が多いそうです。

知っておいたほうがいいこと

日本山岳ガイド協会理事長で登山家の磯野剛太さんによると、ハンターの誤射による人身事故は登山中の遭難や滑落に比べれば、「非常にまれなケース」と前置きしたうえで、登山道がないような山に分け入っていく場合には、念のために2つのことを知っておいたほうがいいと言います。
磯野剛太さん
1つ目は、ハンターが入る場所を知っておくこと。
特に最近は、狩猟だけでなく害獣駆除も行われています。地元の自治体や猟友会があらかじめ公表する害獣駆除の情報や登山口の注意書きを確認するとよいといいます。

2つ目は、自然界にはない目立つ色の服を着ること。
これは遭難した時にも役立つことですが、ハンターに対しても「ここに人がいる」というアピールになるそうです。
より慎重な人は、大きな音でラジオをかけることもあるそうです。

これまで狩猟というと、害獣駆除や一部の人の趣味で、ハンターは高齢化が進んでいるというイメージでしたが、一方で、狩猟を生活の一部として捉える人も現れてきています。

こうした中で狩猟についての適切な知識を社会で共有することも必要になってきているのではないでしょうか。