映画館に暮らす? 住まいもソーシャルの時代

映画館に暮らす? 住まいもソーシャルの時代
「“映画館付き”住宅が爆誕wwww-」 10月にオープンした賃貸住宅について、SNS上でこんな声が飛び交っています。といっても豪華な共有施設が自慢のタワマンではなく、ワンルームで家賃は6万円。今どきの賃貸住宅は暮らしながらみんなで楽しむ。キーワードはソーシャルです。(ネットワーク報道部記者 飯田暁子、伊賀亮人)

シアタールームの衝撃

スポットライトが照らす部屋に並ぶ本格的な映画鑑賞用のシート。150インチのスクリーンと7.1チャンネルのサラウンドシステムも備えられています。シアターの外には映画の感想を語り合ったら楽しいだろうな、と思わせるテーブルやソファーのほか、レストランのようなキッチンもあります。
実はここ、10月に埼玉県和光市に完成した123部屋がある賃貸住宅の共用スペースです。ホームページで入居の募集が始まると、SNS上には「やばい。こんな環境うらやましい。すてきすぎる」「これは住みたい!夢!」といった声が続々と寄せられています。
住居部分は約8畳一間の個室があり、キッチンやお風呂といった水回りは共用。家賃は管理費・光熱費込みで5万5000円から7万1000円です。

ということは、少し前から人気の「シェアハウス」の1つ? それにしても共用スペースが斬新すぎる!ということで運営会社に取材をしました。

ソーシャルアパート

運営会社の「グローバルエージェンツ」によりますと、「一軒家で共同生活をするようなシェアハウスと違って住民の居住空間が独立した個室になっていてプライバシーを保った上で、共用部分を充実させていることが最大の特徴」だそうです。

和光市の物件だけではなく、首都圏をはじめ全国に40棟、約2100戸の物件があるそうですが、すべてに映画館のような設備があるわけではありません。

例えば東京・二子玉川の物件では、自転車好きの人たちが建物の中に愛車を持ち込み、そのこだわりやツーリングの楽しさを語り合える共用スペースを設けています。
ほかにもカフェやビリヤードやダーツといった娯楽施設を備えた物件もあります。つまり、仕事や年齢も違う人たちが時に集って楽しみ、さらには人脈を広げたり交流を深めたりする場としても活用できるというコンセプトで作られているのです。

もちろん共用スペースを通らなくても自室に入ることができるよう配慮されているほか、共有スペースの清掃は運営会社が行います。

会社ではこうしたタイプの賃貸住宅を「ソーシャルアパートメント」と名付けていて、ネット上でもすっかり人気です。

「出会うように暮らすソーシャルアパートの時代がやってきた」
「ワンルームの賃貸に共用ラウンジがついたソーシャルアパートなるものがあるらしく、うまいこと考えたなぁと感心している」
「現代の若者の孤独感を埋めるんだろうなぁ。おもしろい。親世代だったら絶対に住まないだろう」

かつては寮だった

ソーシャルアパートのような賃貸住宅は、なぜ今、増えているのでしょうか。
住宅情報サイト「SUUMO」の池本洋一編集長によると「シェアハウスの1つの分類として2015年ごろから広がり始めている」そうです。その供給源の1つが、かつて企業や大学の寮として利用された建物。池本編集長によると、企業が老朽化した社員寮を売り払うなどの動きが相次ぐ中で、それをリノベーションして賃貸住宅にする企業が出てきたそうです。

実際、前述の運営会社の物件の約8割は、もともと寮だった建物をリノベーションしたもので、冒頭の「映画館型住宅」もそうでした。
シアタールーム、元は管理人室
「相次ぐ空き物件と新しいライフスタイルを求める動きがマッチする中で、ソーシャルアパートが広まっているのではないか。住む人は20代から30代の人が多く、アフターファイブに刺激や出会いを住まいにも求めているのだと思います。仕事のパートナーを見つけたり、中には恋愛に発展したりということもあるようです」(池本編集長)

ウエルカムパーティーも

でも、見ず知らずの人たちが住む集合住宅に引っ越していきなり話しかけるのが苦手な人もいますよね。そんな人たちの背中を押してくれる物件もあります。
東京に本社がある不動産会社「リビタ」が手がける賃貸住宅です。まずは、物件を見てみましょう。東京・多摩市にある108室がある賃貸住宅の共用スペースにはレストランのようなキッチンが大小2つあります。まな板や包丁、なべなどの料理に必要な道具だけでなく電子レンジや炊飯器といった調理家電も用意されています。ラウンジには、いすとテーブルの席だけでなくゆったりくつろげるソファ席や小上がりもあります。
最大の特徴は、新しく入居した人が早くなじめるよう、会社が企画してウェルカムパーティーを開いていること。親しくなるきっかけを作れば、あとは、キッチンとラウンジで一緒に料理をしたり、おかずを分け合ったりと自然にコミュニケーションが生まれ、さらには入居している人たち自身が料理教室やキャンプを企画するなど、交流が生まれるということです。

こちらも入居者は20代から30代が大半で、プライベートを大切にしつつ様々な価値観を持った人と出会うことができると好評だということです。

新たなライフスタイルの受け皿に

仕事を終えたら会社とは違う人たちと交流して趣味を楽しみ人脈を広げたい。こんな暮らし方を望む人たちの受け皿として広がりつつある賃貸住宅。

最後にこうした賃貸住宅に既に住んでいると思われる方のツイートを紹介しましょう。

「孤独ではない。いつも人の気配がある。それはソーシャルアパートの大きなメリット。その分気疲れもあるよ。住民スラングではそれを『ソーシャル疲れ』って言ってる。人とつかず離れずの距離を考えてフラットな気持ちでいられるとすごく快適です」