“長寿も楽じゃないワン”

“長寿も楽じゃないワン”
11月に入り、徐々に寒くなってくるこの季節。街を歩いていると、服を着た飼い犬が散歩しているのを見かけることはありませんか。

ネットでもさまざまな意見が飛び交う「犬に服」。着用派の飼い主では“愛犬をさらにかわいらしく”という人が多いようですが、事情はさまざまなようです。
(ネットワーク報道部記者 木下隆児 鮎合真介 田辺幹夫)

色とりどり 犬用の服

有名ブランドのロゴマークが入った服や子ども服と見間違えるようなカラフルなものまで。世の中にはさまざまなデザインの犬用の服があふれています。

「犬用の服がこれだけ世の中に広がり始めたのは、2005年ごろからです」と話すのは、都内でペットのしつけ教室を主宰する西川文二さんです。
西川文二さん
西川さんによると、このころ有名タレントがペットに服を着せてテレビに登場しだしたのがきっかけとなって、ペットショップにさまざまなデザインの犬用の服が並ぶようになり、広がっていったということです。

こうした犬用の服をめぐり、SNSでは。
「うちの家の犬が恐竜の服着て寝ております!かわいい!」
「あまりに可愛いかったので、我が家の白犬たちにワンピースを買ってしまった」と楽しんでいるものから、
「本人たちは良かれと思ってやってるのでしょうけど、犬に服を着せるのは否定的。こんな苦しいものを着せられて…」
「お犬様に服作るの楽しいけどお犬様は喜ばない」とさまざまです。

一方で、こんな意見も見られました。
「犬も高齢化してるので防寒や介護用に服は必要なのです」

高齢化する犬たち

この点について、日本動物福祉協会の特任理事で獣医師の兵藤哲夫さんは、ペットの犬たちが高齢化していることに触れたうえで、次のように話しています。

「犬は年をとると、体重が落ちてやせて寒さを感じやすくなる場合があります。それでも体力維持のためには、外で散歩する必要があるので、そのときは服を1枚着させてあげることも大切です」
兵藤哲夫さん
兵藤さんが言う犬の「高齢化」を裏付けるデータもありました。

日本でペットフードの販売や製造を行う企業で作る「ペットフード協会」が、国内で飼育されている犬の年齢についてまとめています。

それによりますと、7歳以上の「高齢期」の犬の割合は、去年の時点で58.9%。この5年間で5ポイント増加していて、高齢の犬の割合が増加傾向にあることがわかります。

また、兵藤さんは50年にわたって横浜市の動物病院で診療していて、高齢の犬が近年、増えていることを実感しているということです。

「50年ほど前は、犬の平均寿命は5~6歳ほどではなかったかと思いますが、その後、伸び続け、この20年間で15歳を超すいきおいになっている感じがします」

その背景について、次のように分析しています。

「犬が長生きできるようになったのは主に3つの要因があると考えています。1つは、犬を飼う場所です。昔は外で飼っていましたが、家の中で育てる飼い主が多くなりました。それによって、犬へのストレスが少なくなっています。2つ目に、犬のえさです。一昔前は栄養価の少ないえさだったのが、ペットフードが出てきたことで犬の健康状態を保てるようになりました。最後に、医療です。死に至るような感染症は、ワクチンが発達して予防できるようになり、これまで治療が難しかったがんや心臓病などの病気も克服できるようになってきています」(兵藤さん)

犬の介護・医療品 ここまで

環境の改善で高齢化するペットの犬たち。最近の市場では、介護を目的としたものなど、関連商品が次々と生まれています。

大阪市に本社があり、ペット用品の開発や通販を行っている会社では、「床ずれ防止」や「排せつケア」など9つのジャンルで犬の介護用品を販売しています。

例えば、こちらの器具。
バンドで体をつりあげて、足が不自由になったり足腰が弱くなったりした犬の歩行を補助することができます。また、犬が立ち上がるときや階段の上り下り、それに寝返りをうつときの補助にも使えるそうです。
これは犬専用のスロープ。滑り止めの加工が施されていて、高齢の犬たちが上り下りしやすくなっているほか、あわせてふんばることで筋力アップも図ることができるとしています。

さらに、犬の高齢化が進む中、医療品にはこんなものも。

コンタクトレンズの大手メーカーが開発し、ことし8月から発売された犬用のコンタクトレンズです。
視力を矯正するの?と思いきや、そうではなく、犬の角膜の保護を目的としています。

角膜に傷がつくと目が充血したり痛くなって開けられなくなるほか、細菌にも感染しやすくなるなど、さまざまなトラブルが発生することがあるため、コンタクトレンズで犬の目を守ることができるそうです。

大手メーカーの担当者によると、犬用のコンタクトレンズ自体はこれまでもありましたが、今回はチワワやトイプードルなど小型犬を中心に6つの種類の犬に対応したほか、独自の素材を使って高い保湿性やUVカットの機能などを加えたことが特徴だということです。

ただし、飼い主が装着したり取り外したりすることはできず、取り扱いができるのは獣医師のみとなっています。

大手メーカーの担当者は「年老いた犬ほど目の病気などになりやすい。今後、さらに対象となる犬の種類を増やすなど現場のニーズに対応したコンタクトレンズを開発していきたい」と意気込んでいます。

長年、われわれ人間の家族の一員として暮らすうちに、生活環境がよくなり高齢化が進んでいるペットの犬。介護や医療もさらに“人並み”になっていきそうです。