知らなかったわ、妊婦加算

知らなかったわ、妊婦加算
まだ、あまり知られていないことです。妊娠している人が病院を受診すると“妊婦加算”がとられるようになりました。ご存じでしたか?「なんで加算されるの」「メリットはあるの」
“知られざる妊婦加算”を調べてみました。
(福岡放送局記者 米山奈々美・ネットワーク報道部記者 大石理恵・岡田真理紗・松井晋太郎)
この加算、ツイッター上で話題になり、さまざまな意見が飛び交っています。

「皮膚科に行ったら妊婦加算がついた、なんで余分にとられるの」

なんで余分にとられるの

この加算、ツイッター上で話題になり、さまざまな意見が飛び交っています。

「皮膚科に行ったら妊婦加算がついた、なんで余分にとられるの」
このツイートをしたのは24歳の妊婦の方。会計をするまで妊婦が加算されることは知らなかったそうです。

これに対して1週間で、3万5000以上のリツイートがありました。

目立ったのは「知らんかったわ。いやーびっくりする。事実上の妊婦税やんか」という厳しい意見や知らなかったという声。

また、
「コンタクトレンズの処方箋、書いてもらうんで眼科行った時も妊婦加算あったな…」
「“妊婦なの?じゃあまずは産婦人科で相談して”と言われたが、診察料と妊婦加算をとられた」
など、実際の経験をあげたツイートもありました。

一方、
「妊娠期間中だからこそ出せない薬があったり気をつけることなどあるからその管理料だと思う。妊婦さんは何をするにもリスクを考えて慎重に丁寧に診てもらっていると考えたら損ではない」
といった意見も多くありました。

妊婦が知らない

実はこの妊婦加算、ことし4月からスタートした制度です。妊婦が病気やケガで医療機関を受診すると、すべての診療科で初診なら750円、再診なら380円を上乗せします。自己負担が3割の場合、初診でおよそ230円、再診でおよそ110円になります。
妊娠している方に聞きました。
街で妊娠している方、15人ほどに聞いてみたのですが、“知らなかった”という人が大半。周知はまだまだなようで、どうして新たな加算ができたのか、どんなねらいなのか、肝心の妊婦の方々がよく知らないという状況でした。

そこでまず、導入された経緯を調べてみました。

調べてみた、聞いてみた

議論があったのは去年10月の診療報酬を決める協議会。議事録を見ると厚生労働省が、“妊娠した方が外来に来ると、投薬する際に胎児に影響が無いかなど配慮した診察が必要です。それに対して評価(加算)を検討してはどうか”と提案しています。

妊娠している人が安心して受診ができる環境づくりが加算の目的のようです。

委員からは、“妊婦へのきめ細かいケアへの評価を充実させる必要がある”などと導入に前向きな意見が出ています。

その一方で、“妊婦にどういう配慮をすることを評価するのか。それを明確にしないと、(加算の意味が)甘くなってしまう”といった慎重な運用を求める意見も出ていました。

次にネット上でもあがっている妊婦加算についての疑問を、厚生労働省の担当者に聞いてみました。

国に聞いてみた

(記者)
診察の後、窓口で妊婦だとわかっても加算があるのでしょうか。

(厚生労働省)
診察が終わった後に妊娠していることがわかったような場合は加算にはなりません。医療機関には、医師が妊娠していることを確認して診察した場合のみ加算できることを周知するようにしています。

(記者)
妊婦を診察したら、それで加算となるのでしょうか。こういう配慮を行ったら加算できる、ということは具体的にないのでしょうか。

(厚生労働省)
具体的には決められていません。ただ診察することで加算があれば、影響がない薬を調べて丁寧に説明するといった質の高い診察をする動機づけになると思っています。

(記者)
妊婦加算ができたことで、安心して診察を受けられるようになってきているのでしょうか。

(厚生労働省)
それは診療報酬の話だけで議論されるべきではないです。地域の医療体制など総合的に充実させていく話だと思います。妊婦加算はあくまでそのための一部分です。逆に妊娠した方は、気になる部分をしっかり医師に聞いて、不安を解消するきっかけにしていただきたいと思います。

「医師が向き合ってこそ」

国立成育医療研究センター 母性内科医 村島温子さん
もう1人、話を聞きました。国立成育医療研究センターの母性内科医・村島温子さんです。妊娠と薬情報センターのセンター長も務めています。

村島さんは医師が妊婦にしっかり向き合うようになってこそ、妊婦加算の意味が出てくると指摘しています。

村島さんによると産科以外の医師の中には薬の影響などでおなかの赤ちゃんに何かあったらどうしようという不安もあるため、妊婦の診察を避けたいと考える人もいたと言います。

一方、産科の医師も、例えば内科的な病気には慣れていない場合があります。その狭間で病気になった妊婦が取り残されるような状態になってしまう実態があったそうです。

「産科以外の医師の中には、リスクを負いたくないという人もいる一方で、妊婦をちゃんと診療しなければいけないんだという認識を持つ人ももちろんいます。妊婦加算は医師がきちんと勉強し、妊婦の診療と向き合って初めて実効性のあるものになると思っています」

“加算をひとつのきっかけに妊婦が狭間に取り残される状況をなくしていきたい”、そうした見解だと感じました。

納得できる加算に

妊婦が安心して医療を受けられるようにと導入された妊婦加算。しかし制度がほとんど知られていないこと、そして妊娠していることですべての診療科で、加算されることに、驚いた人が多かったのが実際でした。

払ったお金に対して具体的にどういった配慮がされるのか、負担が増える中でその説明がまだまだ不足していると感じます。

ツイッターでも「妊婦加算自体は悪くないと思うけど、(加算をするなら)研修を受けたり、何かの認定を受けることも必要では」といった意見もありました。

国立成育医療研究センターの村島さんに聞くと妊婦の診療についての勉強会に、最近は産科だけでなく内科からも参加する医師が増えたそうです。

加算をひとつのきっかけに妊婦の診療が医師にとって「手を出しにくい領域」から「必要とされている領域」に認識が変わっていけば、妊婦がどこでも安心して受診できる態勢に近づくのかもしれません。

妊婦加算が新たな負担を理解できる加算になっていくのか。その答えは、これから医師のもとを訪れる妊婦の方たちの一回一回の診察を、納得できるものにしていけるかどうかにかかっています。