人がなぜ、車をひっくり返すのか

人がなぜ、車をひっくり返すのか
上の画像は、横転させられた車です。車をひっくり返すなんて、ふだんはやらないのになんでハロウィーンの場ではそれがおきてしまうのか。そう、人が大勢集まった時に、心の中にある変化が起きています。その変化がいいほうに向く時もあれば、悪いほうに向くこともあるそうです。(ネットワーク報道部記者 後藤岳彦 松井晋太郎 吉永なつみ)
多くの人に取り囲まれる軽トラック。そのトラックがヘッドライトがついたまま激しく打ちつけられる映像がツイッターに投稿されました。

ハロウィーン 東京・渋谷

多くの人に取り囲まれる軽トラック。そのトラックがヘッドライトがついたまま激しく打ちつけられる映像がツイッターに投稿されました。
場所は3日前の今月28日の東京・渋谷の繁華街。ハロウィーンでにぎわう中での出来事でした。

現場にいた人は「荷台に男たちがのぼって騒ぎはじめた。トラックの窓は割れ屋根もへこんでいた」と話していました。

ふだんの1.6倍

このころ、渋谷駅周辺にはどのくらいの人が詰めかけていたのか。先週の土曜日・10月27日夜から翌日の日曜日の朝5時にかけて、JR渋谷駅周辺にいた人の数を携帯電話の位置情報を元に推計してみました。
渋谷駅周辺にいたとみられる人は、28日は、終電がなくなった午前2時にもかかわらずおよそ1万人。1週間前の同じ時刻と比べると、およそ1.6倍でした。

そして、午前2時から始発の電車が動き出す午前5時までその数は減る傾向はなくおよそ1万人が夜通しで渋谷駅周辺に詰めかけていたことになります。

あちこちでいさかいが起きたうえ、痴漢や盗撮の疑いで逮捕者が出るわ、たばこの吸い殻や空き缶などのごみが散乱するわ。ハロウィーンの印象を悪くする出来事が相次ぎました。
ふだん、起こらないことが、なぜ大勢の人が集まる場で起きてしまうのでしょうか。

“群集心理ですね”

「それは群集心理ですね」
取材に答えてくれたのは、東洋大学の戸梶亜紀彦教授です。
群集心理とはたくさんの人が集まった時にみられる、ふだんとは異なる心理状態のことです。ふだんであればとらないような行動をとってしまうことがあるといいます。

「知らない人どうしで、群集となる。数がたくさん集まると誰かが何かやるとそれと同じ行動をとる“同調行動”がおきやすいんです。さらにお祭りと一緒で気分が高揚し興奮状態になります。すると抑制がかからないような状態になることがあります」

大勢の中の1人となると“みんながやっているので、自分が同じことをやってもかまわない”といった責任感が薄れた気持ちになる。また気分が高揚する中で、物事を深く考えにくくなってしまうという指摘です。

「群集の中で何かちょっと過激な、ふだんはしないことを見て、“やってもいいんだかまわないんだ”というような感覚でやっているのではないかと思います」(戸梶教授)

仮装の匿名性

さらにもう1つ、仮装をしていることの影響も考えられると指摘しています。

「ハロウィーンでは仮装をしているので、周りから見ると誰なのかわからないという匿名性が高まります。自分が自分でない感覚に陥りやすいのも、無責任な行動の要因の1つかもしれません」

「匿名性があるネット上でふだん人前では言えないようなことを書き込んだりできるのと同じ状況です」

「トラブルを起こしている人たちは、目の前の騒ぎしか見ていない。ハロウィーンのにぎわいの中でも、けじめを守っている人がちゃんといること。またゴミを散らかした後にそれを片づけている人がいること、そうしたことをきちんと知ってほしいです」(戸梶教授)

いい方向の群集心理に

思い起こせばことし6月、サッカーワールドカップのロシア大会で日本の決勝トーナメント進出が決まると渋谷駅周辺が、大勢の人でごった返し信号が赤に変わっても交差点内でハイタッチを繰り返したり車道に飛び出したりする人がいました。

日本だけにとどまりません。同じワールドカップで優勝したフランスでは、首都パリの中心部で一部の若者が暴徒化して薬局に押し入ったり物を投げたりしたため警察が催涙ガスを使って鎮圧する事案がありました。

群集心理はもちろん悪いことばかりではなく、スポーツの観戦や歌手のコンサートなどでは、みんなと一緒になってふだんはてれてできないような派手な応援ができたり、踊りができたりします。そこには大勢の人たちと気持ちがひとつになった爽快感があります。

一部の地域ではあまりいい印象を持たれなくなりつつある、ハロウィーン。みんなと一緒にけじめを持って楽しむ、いい意味での“群集心理”が働くイベントになっていってほしいと思います。