倒れたマンガ家と#7119

倒れたマンガ家と#7119
「ゴホ、ゴホ」。仕事中、せきが止まらず、息も苦しくなった自分の姿を描いたマンガ家のツイートが話題になっています。マンガ家を救ったのは「#7119」。救急車を呼ぶかどうか?迷った時に心強い、だけどまだあまり知られていない大事な番号でした。(ネットワーク報道部記者 大石理恵 鮎合真介 玉木香代子)

きっかけはマンガ家のツイート

ツイートしたのはマンガ家の七坂ななさん。止まらないせきは1か月、続いていました。

病院で薬を処方してもらいましたが容体は日に日に悪化。ついに夜、息苦しくて眠れなくなりました。
もう深夜。救急車を呼ぶべきか、それとも朝まで待つべきか。迷った時、ネット上で相談できる番号を見たのを思い出し、#7119に電話しました。

その状態はすぐに救急車ですね

#7119は救急車を呼んだほうがいいか、病院に行ったほうがいいか迷った時の相談窓口です。
消防などが24時間開設していて、医師や看護師が対応します。
ななさんも看護師と電話がつながりました。

しかし呼吸が苦しかったためとっさに声を出すことができません。なんとか「もしもし」と言うと、「ぜーぜー」、「ひゅーひゅー」というのどの音が一緒に漏れました。

看護師が答えます。
「のどの音が聞こえます。その状態はすぐに救急車ですね」
そう言って救急車を呼んでくれたそうです。

搬送された病院で診察したところ、気管支炎と診断されそのまま2日間入院して酸素の吸入や点滴をしました。医師からは「早く受診してよかった」と言われたそうです。

「もしあのとき我慢して朝まで待っていたら重症化して入院が長引いたかもしれません。#7119に電話してよかったです」(七坂ななさん)

60000リツイート

ななさんがマンガをツイートにあげると、約6万リツイートされました。(17日午後4時現在)

「子供が薬を誤飲して電話したことがあります。結果、胃薬だったことがわかり安心を得ることが出来ました。急に119は気が引けるので相談出来るのは良いですよね」

一方、こんな声も。

「紹介された病院に自分で電話をかけ4軒目でようやく受け入れてもらいタクシーを手配して、はうように行ったところ腸閉塞と診断。『なぜ救急車を呼ばない?』と怒られました。(#7119への)伝え方が悪かったようです」

また救急医療の現場で働く看護師という人から、「『#7119』世間的に知られなさすぎるなといつも思っています。夜間の病院にコンビニ感覚で来られると、本当に救急で処置が必要な人がいるんだよ!!ってなります。まずは『#7119』ですね。拡散されますように!」というツイートもありました。

なぜできた、#7119

#7119ができたのは看護師という人からのツイートと関係があります。

全国の救急の出動件数は平成18年の524万件から平成28年には621万件に増加。救急車が到着するまでの時間も同じ期間に6分36秒から8分30秒と2分近く長くなっています。
緊急性が低いのに救急車を利用するケースが後を絶たず、本当に必要な人が救急車を利用しにくくなるケースが増えたと見られています。

これを背景に#7119の運用を東京消防庁が全国で初めて実施したのは平成19年。
導入後、東京消防庁の管内で#7119を利用する人は徐々に増加し、平成28年には年間で37万8000件余りもの相談がありました。

その結果、救急車を利用した人のうち軽症だった人の割合は、平成18年の60.3%から平成29年には54.1%に減少。

東京消防庁は「もし#7119がなかったら119番通報が大幅に増え、現在の救急体制では対応が極めて困難」としています。

全国共通ではない#7119

この#7119。実は全国で使える番号ではありません。

これまでに都道府県の全域で導入したのは、東京のほかに大阪府や宮城県、それに福岡県など合わせて9つの都府県。一部の地域で実施しているケースと合わせても#7119を利用できる人は全国の40.6%です。(総務省消防庁調べ。人口は平成27年国勢調査)

総務省消防庁は、#7119の全国的な普及を目指して自治体や各地の消防本部に導入を働きかけているそうです。(24時間でないものの別の番号で同じサービスを実施している県もあります)

#7119の現場は

平日の夕方5時。東京 大手町にある#7119の「救急相談センター」に行ってみました。
電話が並び、専用のイヤホンをつけた看護師など15人ほどが相談にあたっています。医師も常駐していて、相談へのアドバイスを行っています。

「きのうから0歳の子どもが発熱していて熱が38度あります」。不安になった母親から相談の電話がかかりました。

看護師がパソコン上の医療ガイドも参考に優しく問いかけます。
「食事はとれていますか?」
「吐き気はないですか?」
やり取りの結果、救急車で搬送する状態ではないと判断し、夜間に診てくれる最寄りの病院を紹介していました。

そして「もしけいれんを起こしたり状態が急変したら迷わず119番にかけてくださいね」と伝えて電話が終わりました。

ひっきりなしにかかってくる電話。1日当たりの#7119の受付件数は1000件を超え、医療機関が休みとなる土日や夜間の相談が多いそうです。

「緊急性があると判断した場合には迷わず119番通報してもらいたいが、判断に迷うこともあると思う。そんな時には#7119を頼ってほしい」(東京消防庁救急医務課 近藤聡さん)

“迷った時に”#7119

そう、何でも#7119ではなく、突然の激しい頭痛、急な息切れや呼吸困難などはためらわず119番に通報です。
そして#7119に電話しても電話での相談ですから、救急車を呼ぶ呼ばないの答えが明確に出ないこともあります。

ただ迷った時に24時間相談でき、休日に開いている病院まで探してくれるのは心強く、それによって不要不急の救急車の利用が減れば、間違いなく本当に緊急を要する人を助けることにつながります。

東京都内で#7119について聞いてみると、残念ながら「知らない」という人がほとんどで、「具合が悪くなりどこへ電話していいかわからず、119番を頼ってしまった」とか「鼻血が止まらず、救急車を呼んだ」など、どこに相談したらいいのかわからず、救急車を呼んだという声を多く聞きました。

「#7119」
まだあまり知られていないけど、必要とされているのは確かです。“ひとりでも多くの人に知られるようになり、安心が広がってほしい”、そして“私も必要な時に利用しよう”。
この取材まで#7119を知らなかった私は、そう思いました。