“やっぱりバスが好き” 太川陽介さん 愛を語る

“やっぱりバスが好き” 太川陽介さん 愛を語る
バラエティー番組で根強い人気を誇る「路線バスの旅モノ」。そのきっかけとなったのはやはりあの番組。そしてタレントの太川陽介さん。全国をバスでまわること10年、乗車距離は1万キロに上り、まさに“ミスター路線バス”。一方で全国の路線バスは、テレビでの人気とは真逆で、廃線や減便、それに深刻な運転手不足と、厳しすぎる現実に直面しています。(詳しくは8月31日公開「もう働けません」)。路線バスを知り尽くした太川さんが語る、その魅力と厳しすぎる現実とは…。
(ネットワーク報道部記者 後藤岳彦・宮崎局記者 牧野慎太朗)

バス旅で1万キロ超 稚内ー鹿児島 約3往復分!?

ー太川さんは路線バスで全国を旅する番組に10年間、出演されてきました。まず、気になるのは、どのぐらいの距離を走ったんでしょうか。

(太川さん)
1本の番組でだいたい、400キロか500キロぐらい走る。番組を合わせて25本やったので1万キロは走っていると思います。都道府県でいうと沖縄県以外はすべて乗りました。
ー1万キロ?路線バスで1万キロとは驚きました。その距離ですと、1日の間にかなりの距離乗るんですね。

(太川さん)
番組では1日に平均7本か8本ぐらいの路線バスに乗るんです。北海道ですと、1本のバスで2時間も乗ることがある。1本で100キロとか走るので、バスにはだいたい2時間ぐらいは乗車するんです。

路線バスなのにトイレにお土産休憩も

ー路線バスで2時間も?そんなに長時間、乗る路線バスがあるとは知りませんでした。

(太川さん)
知っていますか?こうした路線バスにはトイレ休憩があるんです。だいたい1時間ちょっと走ったところでお客さんもみんな休憩。ここで「5分間トイレ休憩します」みたいなアナウンスがはいって、お客さんもトイレに行ったり、土産物がある場所もあって、お土産を買ったりする。そんな路線バス、乗ったことないでしょう。結構、あるんですよ。
イヤホンがついて、音楽が聴ける路線バスもありました。これはすごかったですね。

地図にはバス停 でも廃線

太川さんが10年間で走った距離1万キロ。一方で、全国では平成19年度からの10年間で、太川さんが走った距離を上回るおよそ1万4000キロもの路線が廃止に。

ー地方にかぎらず、都市部の黒字路線でも減便や廃止になっています。太川さんも、番組で路線の廃止を目の当たりにしましたか?

(太川さん)
道路地図には赤い印でバス停が載っていて、バス停の名前もちゃんとあるんですが、すでに廃線になっていたり、街なかからしか出ていなかったりします。ことしの道路地図を見ても、バスの情報は5年前、10年前の情報で、どんどん路線がなくなっています。道路地図を見ながら、自分で次のルートをさがして、こっちに行けばつながると思っていったら5年前に廃線になっていたこともあります。
ー地図に載っているのに廃止になっているんですね。

(太川さん)
バスの営業所や乗っているお客さんに聞いたりして情報を集めていますが、「バス停があるはずなんですけど」と聞くと、「そのバス停はもうなくなりました」と言われます。もうしょっちゅうですよ。それぐらい路線バスは減っている。
ー番組を始めたときと今を比べると、路線の廃止はどんどん増えていきましたか?

(太川さん)
番組を重ねるたびにどんどん路線がなくなっていますね。同じ場所に行っても、以前はバスが走っていたのに今は走っていない。なんとも言えない寂しさがあります。過疎化やバス会社の経営の難しさを感じますね。
各地で路線バスの減便や廃止が相次ぐ中、自治体ではコミュニティーバスを運行するなどして、なんとか住民の交通手段を確保しようとしている。

ー路線バスは地域には欠かせないものですよね。

(太川さん)
地方に行くと、お年寄りの移動手段が路線バスしかなかったりします。朝に路線バスに乗ると病院に行くお年寄りたちが乗っています。「どこに行くんですか」と聞いたら、「病院です」という人ばかりです。あの人たちからバスを取り上げたらもう病院に行けないんですよ。
ー子どもたちの通学にとっても欠かせません。

(太川さん)
路線バスは高校生の通学手段でもあるんです。地方に行って、夕方、暗くなって、そんなに民家もないバス停で学生さんが降りるんだと思ったら、家族が車で迎えにきているんです。それもおじいちゃんが孫の迎えに来て、車まで歩いて行く姿を見ていると、三世代で暮らしているんだなってわかって、なんかあったかい感じがします。

もう維持できませんー

バスの運転手は「入社4年で半数近くが離職ー」。一方で、国の調査では、路線バスを運行する事業者のおよそ64%が赤字(平成28年度 30台以上の車両保有)。特に地方は赤字が深刻で、大都市部を除くと、実におよそ82%にまで跳ね上がる。

ー運転手不足に赤字。路線の維持はどこのバス会社も難しくなっています。

(太川さん)
黒字のバス路線を持っているバス会社だったらいいんでしょうが、地方のバス会社で黒字路線がない会社は大変だと思います。バス会社は赤字が膨らむわけで、路線を減らさないと維持できない。さらにどんどん補助金を削られたら路線の減便や廃止をするしかない。
ーしかし、バスが欠かせない人がいます。高齢化が進めば、バスを必要とする人は増えていきます。

(太川さん)
路線バスしか移動手段がない人たちは弱者になる。そういう人をちゃんと救っていかないといけない。そのためには補助金などを出して、バスの運行を支えていくというのも、国や自治体の責任だと思います。

運転手がいてバスがある

ー路線の維持は、バス会社任せでなく、行政の関わりが欠かせない?

(太川さん)
路線バスは、ただの民間企業が運行しているということではなくて、公共のための機関です。国なり自治体がちゃんと支援をして、人手不足を解消するための人材が集められるような企業にしていかないとだめです。赤字路線でさえ運行してくれているわけですから。
ー運転手不足も解消しなければ路線は維持できません。

(太川さん)
バスの運転手あっての路線バスです。みんなのためにやってくれている仕事だと思いますよ。路線バスはあくまでも公共交通機関ですから、路線バスはこれからもずっと欠かせないものなんだと思います。
でも、運転手を辞める人が多い一方で、僕たちの番組を見て、学校の先生をやめてバスの運転手になったという人にロケ中に出会ったんです。石川県のほうで。たまたま乗った路線バスの運転手さんが、終点まで着いたら降りてきて「実は僕、この番組を見て先生を辞めて運転手になったんですよ」と。うわー、そうなんだ、この番組、人生を変えちゃったんだって思いました。番組を見て、バスの運転手さんっていいなと思う人もいるんですよ。

“再発見”こそ魅力

路線バスの利用者は昭和43年度の101億人をピークに減り続け、平成27年度は42億人にまで減少。

ー路線バスの維持には、その魅力を知ってもらい、利用者を増やすことも大切だと思います

(太川さん)
路線バスで旅をするのは、鉄道で旅をするのとは景色が全く違うおもしろさがあるんですね。列車だと駅から駅を一気に通過していく。でも路線バスは街なかを走るので、街の様子がよくわかるので、路線バスで旅をするともっと楽しいと思います。
ー思い出深い旅ってありますか?

(太川さん)
景色なら北海道のオホーツク海沿いの景色はよかったですね。道路がまっすぐ走っていて、右側がオホーツク海。牧場って山のイメージですが、海岸線に牧場があるんです。牧場があってそこを道路が通っていて、左も牧場。1時間に1本あるかどうかの路線なんですけど、牧場の中をバスが走っている感じで、その景色はよかったです。
ー路線バスの旅はやはりお勧めですか?

(太川さん)
私がやっていた番組を見て、実際に路線バスの旅をやっている人も多いみたいです。自分たちなりのルートで路線バスの旅をちょっとやってみようと、夫婦で2泊3日で行ったりしていますなんて話もありました。もういろいろな旅をした人は、路線バスでめぐる旅のほうがおもしろいかもしれない。路線バスの旅って自分たちでやると楽しいですよ。
ー太川さんにとっての路線バスの魅力とは。

(太川さん)
バスって便利です。電車と違ってバス停の距離が短いから、ちょっと動くのに本当に便利です。バスは便利な乗り物なので、もっとみんなにバスに乗ってほしいですね。
バスに乗るといろんな発見があります。バスは高い目線にいるからなんかいつもと風景が違うんです。自分で運転していると見逃してしまうお店なんかもこんな場所にこんなお店があったんだとか、そういう発見ができます。自分で運転していると全然わからないけど、路線バスは“再発見”ができる。そこが路線バスの魅力であり、欠かせないものなんです。

やっぱりバスが好き!

太川さんは番組が始まったころから、プライベートでも路線バスによく乗るようになり、今では週に1回ぐらい、家から最寄りの駅まで行くのに路線バスに乗るんだそうですが、番組のように最後部の座席には座らないそうです。
理由は「いちばん後ろに乗っていると、番組の撮影をしているみたいでいやだから(笑)」だそうです。
今回、路線バスについて1時間以上、お話を聞きましたが、太川さんは終始、笑顔でした。
「路線バス」について熱く語る太川さんは、やっぱり路線バスが大好きなんだなと感じました。
路線バスは人手不足で厳しい状況にありますが、その中で、路線を維持していくには何が必要なのか。私たちは引き続き、この問題、取材していきたいと思います。