どうなる?海賊版サイト対策

どうなる?海賊版サイト対策
漫画やアニメなどを作者の許可なく無断でネットに掲載し、誰もが見られる状態にしている海賊版サイト。ことしに入って大きな問題となり、6月に政府が立ち上げた有識者会議で対策の検討が進められています。しかし、先月開催された会議では、事務局が示した中間取りまとめ案に対し、9人の委員が連名で反対の意見書を提出する異例の事態となり、議論は持ち越しとなっています。何が課題となっているのか、取材しました。(ネットワーク報道部記者 田辺幹夫)

中間取りまとめ 異例の持ち越し

海賊版サイトへの対策に関心が高まったのは、ことし春、「漫画村」というサイトが大きな問題となったことからでした。

このサイトには、5万点以上の漫画や雑誌がネット上で誰でも読める状態で掲載され、漫画家でつくる団体が緊急の声明を発表するなど社会問題となっていました。


政府は、学識経験者や弁護士、プロバイダー団体の代表などを委員に、有識者会議を立ち上げ、抜本的な対策を検討、先月(9月)中間取りまとめを行うことにしていました。
しかし、当初予定していた先月中の取りまとめができない状態になっています。

論点はブロッキングの是非

委員の間で、大きく意見が分かれているのは「サイトブロッキング」を巡ってです。

「サイトブロッキング」は、海賊版サイトにアクセスしようとする人の通信を通信事業者がブロックすることで、サイトそのものに接続できなくするものです。

中間取りまとめ案では、この「ブロッキング」について、「フィルタリングなどの対策を取っても効果が十分でない場合は、法整備を行うことも政策的な選択肢となりうる」としました。

しかし、出席者からは、「ブロッキングは有効だ」という意見の一方、「憲法で保障された通信の秘密を侵害するおそれがある」などと反対意見が相次ぎました。
先月19日に開かれた会議でも、中間取りまとめ案が議論されましたが、結局、20人の委員のうち、2人の座長を除いて半数にあたる9人が連名で「ブロッキングを可能にする法律には憲法違反の疑いがあることを取りまとめ案に明記すべきだ」とする意見書を提出し、改めて反対、中間取りまとめ案の決定ができませんでした。

“緊急避難”のブロッキング

この「ブロッキング」についてどう考えればいいのか。

10月10日に京都市で開かれた海賊版サイトの対策を考えるシンポジウムでも、議論が行われました。

ブロッキングを行うためには、すべての人の通信を常にチェックしなければならず、それが通信の秘密の侵害にあたるとされます。
登壇した金沢大学の長瀬貴志教授は、かつてネット上の児童ポルノが大きな問題になった際には、ブロッキング実施のコンセンサスはすぐには得られず、法律家や関係省庁、事業者が、さまざまな議論を積み重ねた経緯を説明しました。

そして「“緊急避難”という位置づけならかろうじて許される」という結論にたどり着き、さらに「検閲にならないように民間企業の自主的な取り組みとして行う」ことになったと紹介しました。

新たな動き ブロッキング以外の手段も

有識者会議での議論がまとまらない中、被害を訴えている漫画家や弁護士の間で、ブロッキングという、“緊急避難”ではない、新たな対策を模索する動きも出ています。

海賊版サイト「漫画村」について、弁護士の山口貴士さんが、著作権侵害の被害を訴えた漫画家とともに、アメリカ国内から漫画村のコンテンツを配信するサービスを行っていた会社に対し、サービスの契約者の情報開示を求める法的手続きを行ったのです。

その結果、およそ20日ほどで、契約者の日本人とみられる人物の氏名や住所などの情報が開示されたということで、山口弁護士は、今後、この人物を相手取って、日本での刑事告訴と民事訴訟の準備を進めています。
日本とカリフォルニア州で弁護士資格を持つ山口弁護士
山口弁護士は、「ブロッキングという憲法上、問題があると思われることを進めようとする前に、サイトの運営者を特定して刑事的、民事的な手続きを進めるなど、まだできることがあるのではないか」と話していました。

どうなる中間取りまとめ

海賊版対策を検討する政府の有識者会議は、次回は、来週、15日に開かれる予定になっています。

ブロッキングについて、どのような扱いになるのか、中間取りまとめは決定されるのか、有識者会議の行方に注目が集まっています。