タトゥーでも、はいれます

タトゥーでも、はいれます
「入れ墨の方お断り」ーーープールや温泉などで見かける“注意書き”が今後変わることになるのでしょうか。来年、日本で開催されるラグビーワールドカップをめぐり、ラグビーの国際統括団体が選手らに対し、公共のプールなどでタトゥー(入れ墨)を隠すよう呼びかけたことが話題となっています。日本では、タトゥーが暴力団を連想させることがあり、抵抗を感じる人に配慮するための措置とのこと。実際、タトゥーをめぐり日本で賛否が分かれているのも事実ですが、ワールドカップを控えて、今、日本を代表する温泉地で「タトゥーOK」の動きが広がっています。(国際部記者 伊藤麗/大分放送局記者 林知宏)

マフィアに間違われる?

ラグビーの国際統括団体「ワールドラグビー」は、来年、開催されるラグビーワールドカップ日本大会の期間中、公共のプールやフィットネスジムなどを利用する際には、タトゥーを隠すよう選手やサポーターに対し、呼びかけました。そのうえで、プールなどではマリンスポーツなどで使われる「ラッシュガード」と呼ばれる服を着用するなどしてタトゥーを隠すよう勧めています。ワールドラグビーは、日本ではタトゥーが暴力団を連想させることがあり、抵抗を感じる人に配慮するための措置だと説明しています。

こうした呼びかけについて、海外メディアは日本国内のタトゥーに対するイメージを解説するなど関心を持って伝えています。

このうち、イギリスの新聞「デイリー・ミラー」は「マフィアに間違われるとして、スター選手たちのタトゥーに警告」という見出しで伝えています。

また、イギリスの公共放送BBCは、日本でタトゥーが暴力団を連想させるようになった背景について、「1960年代に派手な入れ墨をした“YAKUZA”(やくざ)が登場する仁きょう映画が多く制作されたため」と解説しています。

一方、ツイッターには海外からのとまどいの声が相次いで投稿され、「多くの選手がタトゥーを入れているのに、なぜ日本は自国でワールドカップを開催することにしたのだろう」とか、「これからはラグビーの試合を見るたびに、選手たちがマフィアの一員に見えている人たちがいることを思い出してしまう」といった否定的な意見が多く見られます。

ツイッターの反応を見る限り、外国では「タトゥー・入れ墨」イコール「暴力団」というイメージはないようです。
海外ではタトゥーは文化やファッションとして捉えられています。例えばラグビーの強豪ニュージーランドでは、タトゥーは先住民族マオリの文化で家系や社会的地位を表します。

複数の代表選手がタトゥーを入れていますが、ニュージーランドの代表チームは「日本の文化を尊重する」と、呼びかけに応じる方針で、ほかの出場チームからもこれまでに異論は出ていないということです。

今回の呼びかけについて日本側の受け止めはさまざまで、ツイッターには「海外の文化を尊重するべきではないか」という意見も多く投稿されています。

「入れ墨の方お断り」多く

日本国内では入れ墨・タトゥーに対する抵抗感が根強くあります。

温泉施設やプールなどでは入れ墨がある人の利用禁止を公式のホームページに明示している施設も少なくありません。観光庁が平成27年に全国のホテルと旅館を対象に行ったアンケートによりますと、回答があったおよそ600施設のうち、入れ墨がある人の浴場の利用を断っている施設はおよそ56%と半数以上でした。

ただ、まちの銭湯などで作る全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会によりますと、入浴時に入れ墨・タトゥーを規制する法律はないとのことです。

組合でも、入れ墨やタトゥーのある人の入浴を断るような看板や注意書きをするよう指導はしていないということですが、銭湯によっては過去にトラブルがあって、「入れ墨の方お断り」にしているところもあるかもしれないということです。

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会も「入浴の制限はしておらず、旅館やホテルの判断に任せている」とのことでした。

タトゥーでも入れる!

こうした中、タトゥーでも入れる温泉を増やそうという動きが日本を代表する温泉地で広がっています。

大分県の別府市ではワールドカップで、ニュージーランドを始めオーストラリアやウェールズなどがキャンプを行います。それぞれ熱心なファンが多く、大会期間中はチームを追いかけてたくさんの外国人が別府を訪れると予想されています。
観光客の誘致を別府市などと進めている団体「BーbizLINK」。この団体では、タトゥーがある人の入浴を推進し、外国人観光客を増やそうと取り組んでいます。

この団体が市内の温泉のタトゥーに対する対応を調査したところ、貸し切り風呂に限るなど条件があるところもありましたが、市内のおよそ65%の施設で入浴できることがわかりました。
この団体では「タトゥーがあると温泉に入れない」という先入観があるのではないかと考え、タトゥーがあっても入浴できる市内の温泉施設のマップを作成。ホームページで公開しました。温泉の形態や入浴できる条件などによって色分けされています。
この団体で中心的な活動をしている河村達也さんは「温泉に『入れない』と諦めていたことが、このマップを見て『入れるんだ』と分かってもらいたいし、遠い海外から来ていただく、お客さんに満足してもらいたい」と話しています。

観光都市へチャンス

このマップの中に掲載されている「ひょうたん温泉」。年間およそ30万人が利用する人気施設です。

この温泉は、「タトゥーがあっても入浴できる」と口コミで有名になり、外国人からの問い合わせが多くあります。この日もタトゥーをした2人の外国人が温泉を楽しんでいました。

日本文化に憧れ、3週間前に来日したイギリス人留学生のケヴィンさん。そして、アメリカ人留学生のニックさん。ニックさんは来日4年目ですが、タトゥーがあると温泉に入れないと思い込んでいて、今回が温泉初体験でした。
ケヴィンさんは「イギリス人も温泉に入り、日本文化を体験したいと思っています。タトゥーは肌の上に彫られているだけで、よいも悪いもない」と話していました。
ひょうたん温泉の代表を務める田中仁さんは「地域によって風習とかが違いますから、そういったことも分け隔てなく文化に触れて頂けるサービスを提供したい」と話していました。

ラグビーワールドカップは、湯のまち・別府にとって国際的な観光都市に生まれ変わる絶好のチャンス。「BーbizLINK」によりますと、ラグビーワールドカップに向けてタトゥーがある人の入浴を禁じている温泉施設の中にも入浴の許可に向けて検討を始めたところもあるということです。

銭湯や海水浴場などで、背中に竜や鯉などの鮮やかな「入れ墨」をしている人を見て、怖い思いをした方は少なくないかも知れません。そうしたケースと、海外の文化をどのように区別して理解し、受け入れていくのか。2年後には東京オリンピック・パラリンピックも控えて、今から考えていかなければならないことは少なくありません。