女子は安い労働力なの? ワーキングプア率40%超って...

女子は安い労働力なの? ワーキングプア率40%超って...
就職内定率はすでに85%超ー。売手市場といわれ、人材サービス大手の調査では、大学生の就職内定率は採用面接の解禁からわずか2か月で男女とも85%を超えています。しかしキャリアコンサルタントは言いました。「女性活躍と言いながら、男女の所得にはまだまだ大きな差があります」。いったいどういうことでしょうか、データで分析してみるとー。(ネットワーク報道部記者・飯田暁子)
ことしの大学生の就職活動の状況はどうなっているのか。人材サービス大手の「リクルートキャリア」が8月1日の時点で行った調査を見てみました。

すると、男子学生の内定率は89.8%、女子学生は86.0%。「売手市場」に間違いはないようです。それに男女の差もわずか3ポイントほど。これは女性の活躍の場が大きく広がってきているのかも。そう思った記者に、キャリアコンサルタント歴20年以上で大学生の就職活動もサポートしている上田晶美さんは言いました。

キャリアコンサルタントの嘆き

ことしの大学生の就職活動の状況はどうなっているのか。人材サービス大手の「リクルートキャリア」が8月1日の時点で行った調査を見てみました。

すると、男子学生の内定率は89.8%、女子学生は86.0%。「売手市場」に間違いはないようです。それに男女の差もわずか3ポイントほど。これは女性の活躍の場が大きく広がってきているのかも。そう思った記者に、キャリアコンサルタント歴20年以上で大学生の就職活動もサポートしている上田晶美さんは言いました。
「女子の採用は増えても、賃金で見てみると、男女には明らかな差があります。この差は年齢とともにどんどん広がり、賃金がピークとなる50歳ごろには15万円以上の差になるのです」

分析してみた!就業構造基本調査

とはいえ、これほど好調な現在の就活状況。社会人になったばかりであろう20代男女ではそれほどの差はないだろうと、データを分析してみることにしました。

基となるデータは7月に公表された「平成29年就業構造基本調査」です。総務省が5年に1度、公表しているもので、雇用形態や年収の分布、就業期間などがわかるデータです。

10府県 女性の約2.5人に1人がワーキングプア

分析してみて、まず驚いたのは女性の年間の所得、年収200万円未満の割合の高さ。全国平均では40.5%と、働く人のおよそ2.5人に1人がいわゆる「ワーキングプア」でした。これを都道府県別でみてみると、その割合の高さはより顕著にー。

最も高いのは沖縄県の62.9%。次いで青森県が58.5%、秋田県が57.3%。なんと、その割合が50%を超えるのは10の府県にも上っています。

一方の男性の全国平均は25.8%でおよそ4人に1人。その割合が50%を超えている都道府県はありませんでした。

女性のほうが年収が低いことはなんとなくわかっていたつもりでしたが、正直、社会に出て間もない年代でさえこれほどの差があるとは。驚きを通り越して、複雑すぎる思いがふつふつと。ちなみにこれが30代になると、絶望的とも言える、まさに格差になっています。

男女の格差 30代で拡大

男性の全国平均は9%で、いわゆるワーキングプアの割合は20代のおよそ4人に1人から10人に1人にまで大幅に下がります。しかし女性は43.9%で、20代に比べて3ポイント以上増えています。50%を超えるのは20の道と県に上っていて、むしろ悪化していました。

ただ、女性の既婚者の場合、所得税の配偶者控除を受けるために収入の調整をしている人も少なくありません。なので独身女性だけを見てみれば、いわゆるワーキングプアにあたる層は減るかも、と期待を込めて調べてみましたがー。

30代独身女性で見てみてもその割合は28.4%。さすがに50%を超えるのは青森1県のみと減少しましたが、それでも30代独身女性のワーキングプア率、3割、4割は当たり前でした。

なぜ男女の格差大きいの?

なぜ、男女でここまで格差があるのか。NHKの分析では年収200万円未満の割合の男女差が29ポイント余りと最も大きい、愛媛労働局の担当者に聞いてみると「その結果は意外です」との答えが。

「所得が大都市より少ないのは賃金水準の違いによるものだと思いますが、愛媛県の女性の就業率や正規雇用の割合は全国平均を下回るわけではなく、なぜ男女格差が大きいのか分かりません」

男女差が25ポイント余りと2番目に大きい、佐賀労働局の担当者も「佐賀は男女差が大きいほうなんですか」と驚きの反応。佐賀労働局によると、佐賀県では女性の正規雇用の割合が全国よりも高いうえ、育児をしながら働き続ける女性が多く、男女の平均勤続年数の差も全国より小さいということです。つまり男女の働き方の差は小さい。

それでもなぜ、男女差があるのか。担当者は、「女性の正規雇用の割合が全国より高いとはいえ半数以上が非正規で、20代、30代の非正規の女性のうち8割以上が所得が200万円未満です。性別役割分担意識などの背景に加え、佐賀県は兼業農家なども多く、扶養や所得控除などの関係で所得を調整しているという問題もあるのかもしれません」と分析しています。

男女差 年収500万円以上でより大きく

男女の所得の格差は、所得が高い層ではより残酷な結果となっています。

年収が500万円以上の30代で見てみると、女性の全国平均は7.4%で、割合が10%を超えているのは東京のみ(19.1%)。一方男性は全国平均が32.1%で、およそ3人に1人が500万円以上稼いでいることになります。なんと東京では49.2%とほぼ半数にもなるのです。

今や日本では「共働き世帯」が「専業主婦のいる世帯」の数を上回って久しいのに、女性はまだまだ稼げていない厳しい現実があるようです。

なぜ女性が稼げないのか、キャリアコンサルタントの上田さんは言います。

「結婚や出産などで退職する人は少なくない。さらに企業によっては、いまだに男女の採用コースの違いもある。また、女子学生側も『全国転勤はしたくない』『親元を離れたくない』と一般職を希望する人も多い。この採用時のコースの違いが、将来の所得の大きな差にもつながっている。一般職の事務の経験しかなく、転職や再就職に苦労している女性たちもたくさんいる」

男女の格差 大学進学率とも関係が?

そして特に地方で、年収200万円未満の女子の割合が高いこと、男女差が大きくなっていることについて、上田さんは次のように指摘しています。

「特に地方で女性の所得が少ないのは、非正規雇用の所得が低いことと、大卒で就職するか、高卒で就職するかの違いもあるかもしれないですね」

「女子だから」と諦めないで

さらに今回の分析結果について、上田さんは次のようにも話してくれました。

「東京医科大が女子の合格者数を減らしていたニュースを見て、教育の場での不平等はおかしいと憤りを感じたとともに、長年キャリアコンサルタントをしてきて働くうえでの男女の差には慣れっこになっていた自分にはっとしたんです。働き手が足りない、女性も活躍をといいながら、男女雇用機会均等法が施行されて30年以上たつのに男女の所得に大きな差がある現状を放置してはいけない。学生にも『女子だからしかたない』と諦めないでほしい」

その差は「当たり前」なのか

女性のほうがワーキングプア率が高いという現実。なんとなく「それはそうだろう」「そんなものだろう」と思っていませんでしたか?

しかしそれは、長年の慣習や役割分担の意識によるものではないでしょうか?もちろん収入がすべてではありませんし、仕事観や事情も人それぞれです。ただ、大学進学率に続き、就職や所得のうえでも女性にとって厳しい現実があるのも、今回の取材で改めて実感しました。