推定患者数30万人 “理解と支援を”

推定患者数30万人 “理解と支援を”
普通に、健康に過ごしてきたのに、その病気にかかると、激しい疲労感に襲われるそうです。厚生労働省の研究班の調査では、調査対象の患者の3割が寝たきりの重い状態でした。推定患者数30万人とも言われるこの病気。原因は不明、治療法も確立されていません。“理解と支援”が圧倒的に不足していると患者たちが悩んでいます。(静岡放送局記者 北森ひかり)
中村加織さん(37)が、その病気を発症したのは9年前でした。夢だったパティシエとなって働いていました。結婚も決まっていました。「人生、順風満帆だった」と言います。

ところが、ある日、突然40度を超える高熱に襲われました。

その日から重く、つらい疲労感に悩まされるように。
“動きたくても動けない”
子どものころからの憧れのパティシエの仕事さえも、通勤だけで疲れ果て、働けずに帰宅を余儀なくされるようになりました。

発症したのは結婚が決まったころでした

中村加織さん(37)が、その病気を発症したのは9年前でした。夢だったパティシエとなって働いていました。結婚も決まっていました。「人生、順風満帆だった」と言います。

ところが、ある日、突然40度を超える高熱に襲われました。

その日から重く、つらい疲労感に悩まされるように。
“動きたくても動けない”
子どものころからの憧れのパティシエの仕事さえも、通勤だけで疲れ果て、働けずに帰宅を余儀なくされるようになりました。
症状は日に日に悪化。仕事も続けられなくなりました。

「働きたいという気持ちがあるのに、働けない。友達と会いたくても、なかなか会えない。社会から孤立してしまう怖さがありました…」

不安と焦りと向き合う日々だったそうです。
“自分の体はどうしてしまったの?”
その答えを探しに、病院で検査を重ねましたが、病名はわかりませんでした。

1年近くたって…

中村さんは、静岡県浜松市で暮らしてきました。人口80万人。自動車メーカーなどの本社があり地域の中核都市です。

それでも、市内の病院で血液検査やMRIによる脳の画像診断など、検査を重ねても異常は見つかりませんでした。
4軒目、名古屋市まで出向いた大学病院で、ようやく診断名がつきました。症状が出始めてから1年近くも経過していました。

「慢性疲労症候群」
医者に病名を告げられた中村さん、当時はこう思ったそうです。「診断名がついて安ど感があったと思います。それに、自分自身、そのときは勝手に“治る”という思いがあったので、あまり重くは考えませんでした」

楽観的に捉えていた病気…。でも、それ以来、ずっと、悩まされ続けてきました。

“怠けているのでは?”

中村さんが発症した「慢性疲労症候群」。
常にけん怠感があり、手足におもりを付けて生活しているような感覚だといいます。長時間体を起こしていることが難しいため、夫が仕事で外出している日中のほとんどは自宅で横になって過ごしています。
結婚した当初は家事のほとんどを中村さんが担っていましたが、今は夫が食事の準備などをすることが増えました。

推定患者数30万人

慢性疲労症候群の患者は国内に30万人いるとみられています。
3年前に発表された厚生労働省の研究班の調査です。全国の11歳から84歳までの患者251人について実態調査。
調査対象の実に30%もの人が、寝たきりで、家から出ることができない重い状態であることが初めて明らかになりました。
さらに
▽眠れないほどの激しい痛みや強い痛みを感じる…75%
▽痛みの影響で眠りが浅い状態…63%
▽就学時に発症し、通学続けられない…57%
生活に大きな影響が出ている実態が明らかになりました。

疲労が蓄積された慢性疲労とは別物ですが、中村さんは「ごろごろしていていいね」「みんな疲れているのにね」、誤解や偏見から心ない言葉をかけられたことも。

「慢性疲労症候群なんて知らない」と医者に診察を断られたこともあったそうで、今も3時間かけて名古屋市の病院に通院せざるをえません。

「外出するだけでもつらい。本当は前日に泊まるとか診察の日に泊まるとかできればいいけど、うちにはそんな余裕はない。近くに診てくれる病院があればとても助かるのですが…」(中村さん)

ライトアップに込められた思い

ことし5月、浜松城でライトアップイベントが開かれました。主催したのは中村さんでした。

「まずは1人でも多くの方にこの病気について正しく知っていただけることが患者の未来を変えるための大きな一歩だと」

病気の体となんとかつきあいながら、こうしたイベントを開いたり、講演をしたりしてきました。

“理解と支援”が圧倒的に不足していると患者たちが悩む慢性疲労症候群。国の難病に指定されれば、難病の医療費助成を受けることができ、さらには都道府県ごとに拠点病院が指定され、より身近な場所で治療を受けることができます。
ただ、難病の指定を受けていない現状が、多くの患者の負担になっているそうです。

まずは知ってほしい そして…

今回のライトアップイベントには150人が集まりました。中村さんは公的なサポート体制をつくるためにもまずは病気への理解を深めてほしいと願っています。
「少しでも多くの人に現状を知ってもらい、患者に支援が届く体制が整ってほしい。患者が身を削って周知しなくてもいい状況になってほしいです」

青くライトアップされた浜松城の写真はSNSで拡散されるなど、反響もありました。

病名や症状からくる偏見でなかなか理解が進まない慢性疲労症候群。
“私たちの誰がなってもおかしくない病気”です。
患者みずから身を削って“理解と支援”を訴える現状をなんとか変えたい、中村さんの思いが少しでも広がってほしい、伝わってほしい、そう強く感じました。