熱戦の甲子園!でも頭の痛いお金の話

熱戦の甲子園!でも頭の痛いお金の話
ことし100回目となった夏の甲子園。大阪桐蔭の2回目の春夏連覇で幕を閉じましたが、秋田県勢として103年ぶりに決勝に進出した金足農業の活躍が話題となりました。公立高校が夏の甲子園の決勝に進出するのは11年ぶり。この「カナノウ」旋風の裏で話題となったのが、応援などにかかるお金の話です。(ネットワーク報道部記者 郡義之 鮎合真介 國仲真一郎)

寄付に行列

「当初の寄付金の予算を大幅に超える可能性が出てきてしまいました。皆様のご協力をどうぞよろしくお願いいたします」

金足農業が夏の甲子園ベスト8へ進出を決めた今月17日。金足農業の同窓会や野球部OB会などでつくる支援協議会のホームページ上に、寄付金の追加の支援を呼びかける案内が提示されました。

寄付金は1口2000円。チームが勝ち進むことで、控え選手や吹奏楽の応援団の宿泊費用が必要となり、当初予算を大幅に超える可能性が出てきたことが理由にあげられていました。

金足農業では甲子園出場が決まった段階で5000万円を目標に募集を行い、卒業生に振込用紙を送ったり、教職員が近隣の学校や企業へお願いに回ったりしていました。

ところがチームが勝ち進むにつれて、費用が足りなくなるおそれが出てきたため、支援協議会が危機感を抱き、追加の募集を始めたのです。
こうした呼びかけに対して、金足農業の甲子園での快進撃もあって、寄付を申し出る人が学校に続々と訪れ、列を作りました。

寄付をしに来た女性は「自分は甲子園に行って応援することは出来ないので選手に何かしてあげたいと思い、勝つたびに寄付をしている」と話していました。

金足農業の松田聡教頭は「集まった金額の総額はまだわかりませんが、いただいた寄付金は、応援団のバス代、宿泊費など旅行会社への支払いに充てます。勝ち進むにつれて全国から温かい応援や寄付をいただき、感謝を申し上げたい」と話していました。

1回の出場で3000万円も

夏の甲子園に出場した学校はどれだけお金がかかるのでしょうか。
大会の主催者によりますと、ベンチ入りする選手18人と監督、それに学校の担当教諭の合わせて20人には、学校の所在地から大阪までの往復旅費に加え、滞在費として、1人につき1日4000円が大会本部から支給されます。
しかし、ベンチ入りできなかった控え選手や在校生、OBといった応援団に対する補助はありません。
応援席の1人400円の入場券のほか、宿泊費や交通費などはすべて学校が賄わなければなりません。
春夏合わせて56回の甲子園出場を誇る、金足農業と同じ公立高校の県立岐阜商業。
高校によりますと、甲子園に出場するたびに2000万円から3000万円の費用がかかり、その多くを寄付で賄っているということです。

甲子園の出場が決まると、生徒の保護者や同窓会、それにOB会が中心となって、地元の知り合いなどに寄付を呼びかけるそうです。集めた資金から、大会期間中の選手や監督の滞在費に充てるほか、応援団の人たちの交通費や甲子園球場の入場料金まで賄うということです。
ただ、ベスト4となった9年前の夏の甲子園では、準決勝まで勝ち進んだことで当初予定した予算では足りなくなり、急きょもう一度、寄付をお願いしたということです。
追加の寄付のお願いは金足農業だけではなかったようです。

高校の関係者は「夏の甲子園の場合は、出場が決まってから大会が始まるまでの期間が短く、短期間で多くの寄付を集めないといけないのでとても大変だ」と話していました。

Tシャツ販売で遠征費

甲子園に出場する高校に限らず、部活動の遠征費などは、資金力のある学校を除けば、どこでも頭の痛い問題。
とりわけ都市部から距離のある離島などは負担が大きくなるだけに切実です。

北海道奥尻島にある奥尻高校。全校生徒は44人。現在は野球部、卓球部、吹奏楽部があるものの、島から公式大会に出るためには、フェリーやバスなどの交通費や宿泊代など、日程にもよりますが、1人につき少なくとも3万円はかかります。

高校の外郭団体から、宿泊補助として1人につき、1泊2000円が出ますが、十分とは言えず、ある程度は生徒たちが負担しなければなりません。
そうした中、高校が去年選んだ選択肢が、インターネットを通じて寄付金を集めるクラウドファンディングでした。生徒たちがオリジナルのTシャツを製作。寄付してくれた人へお礼品として贈り、全国各地の180人余りから、総額約160万円が集まりました。

ことしの4月には、部活動の遠征費を生み出すための部活動「オクシリイノベーション事業部」を新たに結成。1枚4000円のTシャツを販売した売り上げを充てることにしていて、これまでに100枚ほどが売れたということです。

井上壮紀教頭は「行政からの支援もない中で、知恵と工夫で乗り切っていくしかない」と話しています。
同じく離島にある鹿児島県の喜界高校でも、野球部が遠征費確保のためにクラウドファンディングを活用しました。
この学校でも、遠征費に1人当たり約4万円がかかるということですが、選手たちは、OBの協力を得て、みずから育てたサトウキビを加工した黒糖やごまを返礼品として贈り、先月の1か月間だけで約270人から210万円余りが寄せられました。

松崎浩隆教頭は「わずかな期間でこれだけ寄せられたことに驚いています。クラウドファンディングは地域間格差を解消する選択肢の1つなのかもしれない」と話しています。

スポーツ政策学が専門の桐蔭横浜大の田中暢子教授は「甲子園から遠く離れた高校であれば、近い高校に比べて費用がかかるためハンディーもあるし、市民からの寄付を募ることにも限界がある。官民が連携して、学校を支援するような基金を作るなど、体制の整備も必要になってくるのではないか」と話しています。
「自分たちの力以上を発揮できたのは声援のおかげです」
地元に戻った金足農業のエース吉田輝星投手は、何度も感謝の言葉を述べました。チームと応援団が一体となって戦うのが甲子園のだいご味。100回目をきっかけに、どこの地方の学校でも心配なく応援できるよう改めて運営の在り方を考える必要があるかもしれません。