秋田犬 大人気ですが…ちょっと心配です

秋田犬 大人気ですが…ちょっと心配です
がっしりとした体にきりっとした目元。ふわふわの毛に巻いたしっぽ。オリンピックの金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手に贈られた動物といえば、そう、秋田犬です。ザギトワ選手に贈られた「マサル」のいとこ「マサオ」が元横綱の朝青龍に贈られるなど、秋田犬フィーバーは続いています。
ですが…地元、秋田で取材していますと、その人気ぶりの裏で、ちょっと心配な事が起き始めていました。
(秋田放送局記者 國友真理子)

秋田犬人気 経済効果も!

いま秋田は、全県挙げて秋田犬“推し”。玄関口の秋田空港では、ザギトワ選手にプレゼントされた秋田犬のぬいぐるみを販売。観光客や出張で訪れた人たちが、秋田のお土産にと人気を集め、品切れ状態が続きました。

中でも「秋田犬のふるさと」として知られる県北部の大館市は、このブームを絶好のチャンスと捉えています。
ふるさと納税の返礼品も秋田犬にちなんだTシャツや帽子などのグッズの詰め合わせ。大館市がザギトワ選手に贈ったものと同じセットです。

ふれあい施設も大人気

県内各地に広がり始めた秋田犬の経済効果。
大館市が運営する「秋田犬ふれあい処」も大人気。2頭の秋田犬、虎毛の「飛鳥」と赤毛の「あこ」に触れられるのです。
ザギトワ選手の話題が注目されたことし2月以降、「秋田犬ふれあい処」の来場者はそれまでの2倍以上に。大型連休の5月には、これまでで最も多い、3000人近くが訪れました。

秋田県の情報を全国に発信したいと思っている地元の記者としては喜ばしいことですが、取材をしていると、最近、ちょっと気になることがあったんです。

心配な秋田犬の変化

それは、秋田犬の微妙な変化です。
突然、しっぽや足を触る人がいると嫌がるそぶりをします。ほえたかと思うと、ぐったりと動かなかったりすることも。
秋田犬に何が起きているのか。私たちは市の協力を得て2時間続けて撮影し、様子を観察することにしました。

撮影の間、団体客や、海外からの客、小さな子ども連れなど、20人近くが訪れ、カメラを向けたり、話しかけたり、触ったり。犬たちにコンタクトを取ろうとします。

秋田犬とふれあい、観光客は満足する一方で、秋田犬にとっては大勢の観光客が来ることがストレスになり始めているというのです。
「秋田犬ふれあい処」にいる秋田犬、「飛鳥」と「あこ」は、飼育を担当している富澤さんと西山さんと一緒に暮らしています。ふだんは2頭とも、とてもおとなしい性格だといいます。
虎毛の「飛鳥」の飼育を担当している富澤彰子さんは「必ず、そばにいるようにしていますが人が多くなると、ほえそうになることも増えます。そのときはフードをあげて対応します」と話していました。
赤毛の「あこ」は散歩が大好き。ぐっすり眠れた朝には散歩に行こうと西山さんを起こしに来るのだそうです。

飼育を担当している西山奈見さんは「活動した日は、家に帰るとご飯を食べたあとにすぐに寝てしまいます。お昼寝できなかった分、寝ているのだろうなと感じます」と話していました。

ストレスがたまると、秋田犬はどうなるのでしょうか。犬が出すストレスのサインを見逃すと、最悪の場合、人をかむなど事故が起きる可能性があるそうです。
「いきなりあくびをしたり、名前を呼ばれているのに聞こえないふりをしたりするのは、ストレスのサインです。犬たちにも気持ちがあるので、配慮が必要だと思います」(2頭の指導にあたるドッグトレーナーの保木千春さん)

地元は対策に乗り出す

大人気と引き換えに、秋田犬に押し寄せるストレス。地元の大館市では、対策に乗り出しました。

まずは、観光客と触れあう秋田犬の数を、今の2頭から4頭に倍増することにしました。「飛鳥」と「あこ」の負担を減らすためです。
新たに加わるうちの1頭はザギトワ選手に贈られた「マサル」のきょうだいの「勝大」です。
飼育体制も強化します。犬の飼育を担当する非常勤の職員を7月、新たに2人採用しました。2人とも、動物の飼育方法やしつけを学ぶ専門学校を卒業しています。

新たに採用された加藤瞳さんは「秋田犬の故郷で、秋田犬のことをもっと学んで、皆さんに発信したいです」と話していました。

さらに、訪れる観光客にも協力を求めることにしました。
「大きな声を出さずに、静かに近づく」
「犬の頭の上から手を出さないようにする」
犬とふれあう時のマナーをまとめたパンフレットを作成。わかりやすいようにイラストを添えました。

「事故を起こさないように飼育する側も努力します。ただ、お客さんにお願いすることも大事だと思っています。秋田犬の本場の大館として、犬と人間が健やかに暮らしているということを見ていただかなければならないと思います」(「秋田犬ふれあい処」を運営 大館市観光課 工藤剛課長)

“秋田犬愛”が続くために

東京から陸路で4時間以上。それでも、今、大館市には秋田犬目当てに国内外から多くの人がやってきてくれます。地元の記者として、秋田犬が注目されることはうれしいことですが、地元の予想を超えて過熱している印象があります。

「秋田犬ふれあい処」はオープンしてまだ1年。秋田犬の「飛鳥」と「あこ」もようやく2歳になったばかり。まだまだ手探りですが、ひとたび観光客がかみつかれるトラブルや、秋田犬の健康が脅かされるようなことがあれば、“秋田犬フィーバー”も続きません。

“秋田犬愛”を、みんなに長く持ち続けてもらうために、どんなことが必要なのか。秋田犬に関わる人たちが、今、一生懸命に知恵を絞り出しています。

私も、“秋田犬”のために何ができるか、その一員として、答えを探しながら発信していきたいと思います。