原爆の日 高校生が考える

原爆の日 高校生が考える
被爆から73年となる原爆の日。広島では平和公園の式典会場のほか西日本豪雨の被災地で、被災者はじめ自治体の職員や行方不明者の捜索にあたる人たちも一時手を止めて慰霊と平和への黙とうをささげました。核兵器廃絶を巡っては重要な証言者である被爆者の高齢化が進むなど差し迫った課題がある一方で、高校生が考えた新たな取り組みが始まっています。
(広島放送局・ネットワーク報道部)
広島市の平和公園で行われた式典には85か国の代表を含む約5万人が参列しました。5393人を新たに加えた31万4118人の原爆死没者名簿が慰霊碑に納められました。そして午前8時15分、全員で黙とうをささげました。

73回目の原爆の日

広島市の平和公園で行われた式典には85か国の代表を含む約5万人が参列しました。5393人を新たに加えた31万4118人の原爆死没者名簿が慰霊碑に納められました。そして午前8時15分、全員で黙とうをささげました。
西日本豪雨の被災地、広島県坂町小屋浦地区でも同じ時刻、原爆慰霊碑に被爆者や住民など20人ほどが集まり祈りをささげました。この慰霊碑では毎年7月に子どもたちを集めて慰霊の行事を行ってきましたが、ことしは豪雨の影響で延期になったうえ規模も縮小されました。

また、広島市内の4つの小学校では通学路や校舎に被害が出て児童の安全が確保できないとして、毎年「原爆の日」に行っている平和学習が取りやめになりました。

このうち、安佐北区の山あいにある全校児童29人の井原小学校の上田恵教頭は「子どもたちは8月6日の午前8時15分、暑さと日ざしの中で原爆が落ちた特別な時だということを知らなければなりません。被爆者が高齢化し、原爆のことが日常生活の中で語られる機会が少なくなった今、その記憶を次世代に伝えていくためにも重要なことです」と話していました。

4校とも学校再開後に改めて行うことにしています。

VRで当時の街並みを再現

広島では高校生による核兵器の廃絶に向けた新たな取り組みが広がっています。

VR=バーチャルリアリティーの技術を学ぶ県立福山工業高校計算技術研究部の生徒たちは、原爆投下前の広島の街並みの再現を目指しています。
当時の広島の街並みをコンピューター上で再現
VRではコンピューター上で再現した映像をゴーグル型のディスプレーを通して見ることで、まるでその場にいるかのような体験ができます。
森冨茂雄さん
生徒たちは協力してもらっている被爆者の森冨茂雄さん(88)を、ことし6月に広島市内の公民館に招き、爆心地周辺の建物の構造や位置関係、それに風景などを確認しました。
森冨さんは「看板の色が濃すぎる」とか「郵便局に置かれたポストの位置が間違っている」などと具体的で詳細に指摘し、当時遊んだ思い出などを時折交えながら、原爆投下前の街並みを伝えていました。

このVRの動画はすでに学校のホームページに掲載されていて、今後、VRとして公開される予定です。

平和への思いを外国人に伝える

平和に関する自分たちの思いを外国人に直接伝える取り組みを始めた高校生もいます。

世界各国から訪れる外国人観光客が大幅に増加している広島市。中高一貫の公立学校、広島中等教育学校の生徒たちは、海外の人たちが広島の被爆についてどこまで知っているのか、ふだん英語を教わっている外国語の指導助手に尋ねました。
これに対し、オーストラリアの指導助手は「広島と長崎への原爆投下については少ししか学びませんでした」。

ジャマイカの指導助手は「私は広島、平和公園に来るまで戦争によって日本で何が起きていたか知りませんでしたし、アジアの歴史を勉強することもありませんでした」と答えました。

そればかりか、オーストラリアの指導助手からは「皆さんは日本がオーストラリアを攻撃したことを知っていますか?。日本はオーストラリアにたくさんの爆弾を落としました」と逆に指摘されました。

生徒たちは、広島に原爆が落とされたことが詳しく知られていないことに驚くとともに、自身も戦争について十分理解していないことに気づいたといいます。
そして、夏休みに入った今、平和公園を訪れてさまざまな国の人たちに声をかけています。ガイドをかって出て「原爆慰霊碑には“安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませぬから”と書かれています」などと英語で説明します。

あるアメリカ人観光客からは「アメリカは世界をリードしてきた長い歴史がある。核兵器を保有するのは世界への影響力を維持するための手段だと思う」という声が返ってきました。

また、核兵器は簡単にはなくせないという意見を耳にして生徒たちはなにも答えられませんでした。

一方で取り組みを始めて「世界中の人と平和について意見を交わすべき」と感じるようになったといいます。

男子生徒のひとりは「人それぞれ考え方が違うから押しつけがましくいうんじゃなくてその人の立場や考え方も加味したうえで、どう平和について話し合うかっていうのをすごい考えさせられる体験になった」と話していました。

高校生たちが受け継ぐ

核兵器の廃絶について、アメリカ、ロシア双方が核戦力の強化を打ち出すなどその道筋は見いだすことができていません。

6日の平和記念式典で広島市の松井市長は政府に対し「国際社会が核兵器のない世界の実現に向けた対話と協調を進めるよう役割を果たすことを求める」と訴えました。

世界で唯一の戦争被爆国日本。広島では高校生たちが、被爆者の思いや証言を受け継ぎ、歴史や文化、価値観の異なる人たちとじっくり丁寧に話し合おうという取り組みを始めています。