うなぎ絶滅キャンペーン!?

うなぎ絶滅キャンペーン!?
ことしも僕たち、うなぎにとってちょっと憂鬱な季節がやってきました。それは「土用の丑の日」。みんなが僕たちを食べたいという気持ちはわかるけど、あまりの人気ぶりで数が減って絶滅危惧種にも指定されている微妙な状況だからです。さらに衝撃的なのはツイッター上に「うなぎ絶滅キャンペーン」というなんとも怖いアカウントが現れ注目されていることなんです。(ネットワーク報道部記者 飯田耕太 宮脇麻樹)

“安く大量に食べ尽くそう”

そのアカウントが登場したのは7月5日。「2018年の土用の丑の日は7月20日(金)と8月1日(水)です」と高らかに宣言するとともに、レストランやファストフードチェーンがこの時期提供するおいしそうなうなぎのメニューの写真を次々と掲載しました。

そして、「うなぎを安く大量に食べつくしましょう!」と呼びかけているのです。

僕は戦慄を覚えました。本名はニホンウナギ。4年前、大西洋クロマグロと同じランクの絶滅危惧種に指定され、もっと大切に扱ってもらえるのかと思っていたのに…。

絶滅する前に食べよう!

このアカウントには、登場以来2週間足らずで1万4000人を超えるフォロワーがつく人気ぶり。

アカウントを作った人は、「みなさんひとりひとりが『絶滅する前に食べておこう』と行動していただければ、うなぎ絶滅はより早く達成できるかと思います」ともコメントしています。

コメントさまざま

でも寄せられたコメントをよく読んでみると、意見はさまざまです。

「皮肉を使って啓蒙していくスタイルが実に良い」。「『こういうことをすると絶滅に近づいていく』という事象を紹介していく逆アプローチ」。そう。本当は、僕らの絶滅防止を訴えているという書き込みです。

一方でこんな投稿もあります。「なんでうなぎ絶滅キャンペーンなんかしてんの??うなぎ好きやから嫌やなぁ」。「ホントは絶滅してほしくない派、マジで食いたい派どっちなのか、文章だけでは分からぬ…」。

うなぎが聞いてみた

ここは、うなぎ界の存続をかけて僕が確かめるしかない。そう思ってアカウントを作った人に聞いてみました。

以下(う)うなぎ、(ア)アカウントを作った人。

まずは基本的な質問から。

(う)「どのようなお仕事をされていますか?うなぎと関わりの深いかたですか?」

(ア)「職業は秘密ですが、水産業ではありません。30代の男性でうなぎは好きですね」

そのうえで真意をただします。

(う)「なぜこのようなアカウントを立ち上げたのでしょうか?」

(ア)「土用の丑の日にうなぎを消費する文化は日本の伝統的なもので、これを“絶滅キャンペーン”と呼ぶ風潮は以前から見られました。こうしたPRを助けられればと思い始めたんです」

男性は、はっきり語ろうとはしません。そこでこんな質問をしてみました。

(う)「僕らを絶滅させるために何が必要でしょうか?」

(ア)「総務省のデータによりますと土用の丑の日が購入のピークで、この日の果たす役割が非常に大切です」

そして課題についても聞きました。

(ア)「土用の丑の日のうなぎ絶滅キャンペーンについては、マスメディアの協力もあって強く推進されてきましたが、今後の報道姿勢が変わると消費者の意識も変わっていくかもしれません」

絶滅か 絶滅防止か

あれ? この男性、本当に僕らを絶滅させようと思っているの? 僕は感じました。だって「意識が変わっていく」って期待が見えちゃってますよね。それに「絶滅」なんて言っていても僕らへの憎悪がまったく感じられないのです。

そこで最後の質問。

(う)「本当は僕たちうなぎを絶滅させまいと、『皮肉』を込めてメッセージを発信しているんでしょ?」

(ア)「情報の受け手の皆様にゆだねております」

(う)「では、最後に僕を食べたのはいつ?」

(ア)「私個人の食生活につきましては秘匿させていただきます」

結局、はぐらかされてしまいましたが、僕は確信しました。うなぎ絶滅キャンペーンは、本当は「うなぎ“絶滅防止”キャンペーン」だってことを。

知れば変わる

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンが去年11月に、うなぎを食べている全国の男女1086人に行ったインターネット調査では、うなぎが絶滅危惧種に指定されていることを知らなかったと回答した人は41.7%でした。

でも、うれしかったのは、「知らなかった」と回答した人のうち、「今後は食べるのをやめる」とか「食べる量を減らす」と答えた人が2人に1人はいたということです。現実を知れば状況は変わるのです。

ある若者たちの会話

そんな変化を感じさせる出来事も先日、ありました。渋谷のファストフード店に客として来ていた若者たちに隣り合わせた時のことです。

3人連れのその若者は通常のメニューに800円足らずのうな丼があるのを発見。どれを注文するかで議論が始まりました。

「俺、これ(うな丼)頼もう」
「うなぎって絶滅危惧種だろ?」
「国産を食えばいいんじゃないの」
「そういう問題じゃない。中国でも韓国でもうなぎにとっては同じことなんだよ」
「うなぎ、なくならないよ」
「お前が友だちじゃなかったらぶん殴っている!」

これ、本当にあった会話です。でも僕が原因で殴り合ったりしてはいけません。

うなぎに関わる仕事をしている人で、僕が絶滅していいと思っている人はいないはずです。うなぎと人間がどうやったら末永く共存することが出来るのか。科学的な研究を進め冷静に話し合って下さい。それが僕らの願いです。