学校エアコン 狂想曲

学校エアコン 狂想曲
「学校にエアコンないからとこんなに沢山の保冷剤を持参する娘」学校の暑さに驚く母親のツイートです。あの手この手でしのぐ学校と生徒。中にはエアコンの設置費用をふるさと納税に頼る自治体も出てきました。(ネットワーク報道部記者・飯田暁子 藤目琴実)
ツイッターなどのソーシャルメディアには学校の暑さを嘆く声があふれています。

「先週、熱中症疑いで早退した娘。今時エアコン無しで勉強しろって言う方が無理」

「千葉の小学校はエアコンを入れないことで有名だけど、うちわとか扇子を準備しろって、、?変な世の中になったもんだわ」

中には「冷房を適切に利用するなど十分な対策をとってください」と、熱中症予防を呼びかける市の防災メールの画像とともに「毎日こんな市の防災メール来るけど…子どもたちがいる学校にエアコンはない…」と自治体の対応を疑問視する意見もあります。

最後に関西の中学教員の声。

「これだけ暑いにもかかわらず学校にエアコンがない自治体がある。小学校に英語を導入する前に教育環境整えろやボケーー!」

もはやぜいたくではない

教室へのエアコン設置をめぐってはさまざまな議論が行われてきました。

有名なのはその是非が住民投票で問われた埼玉県所沢市。

所沢市は、自衛隊の基地に近い小中学校に騒音対策としてエアコンを設置する計画を進めていましたが、市長が「快適で便利な生活は見直すべきだ」として設置の中止を決めて住民と対立。3年前に住民投票が行われました。
その結果、エアコン設置賛成が過半数を占め、市長もこれを認める形になったのです。

所沢市は今年度の予算にエアコン設置のための調査費を計上し、今後、市立小中学校すべてにエアコンを設置する方針です。

望ましい温度 54年ぶりの見直し

実は今、文部科学省には、全国各地の教育委員会から「冷房を設置しなければならないのか」という問い合わせが相次いでいます。

というのも文部科学省はことし、小中学校の教室の望ましい温度の基準をこれまでの「30度以下」から54年ぶりに「28度以下」に引き下げたのです。
その理由について文部科学省は、「猛暑日が増加していることに加え、昭和39年当時と違ってエアコンが普及して子どもたちが空調の効いたところで過ごすことが増え、暑いと感じる温度が下がっている」と説明しています。

東京 99.9% 愛媛 5.9%

しかし、学校への冷房の設置率には、各地で大きな差があります。

地図は文部科学省が調査した公立の小中学校の普通教室への設置率。
黄色から赤色になるほど設置率が低いことを示していて愛媛県は5.9%、奈良県は7.4%、静岡県は7.9%など特に涼しい地域ではないにもかかわらず設置の進んでいないところもあります。

一方、青色の東京都は99.9%、香川県は97.7%などほぼ完備のところも。

文部科学省の担当者は、「お金がかかることなのですぐに冷房を設置するのは難しいとは思うが、日ざしを遮ったり風通しをよくしたりするなどの工夫をして快適な学習環境を整えてほしい」と話しています。

熱中症相次いだ学校では

エアコンがない学校ではこの暑さをどうしのいでいるのでしょうか。

去年の夏、熱中症とみられる症状を訴える生徒が相次ぎ午後の授業を取りやめたこともある福島県会津若松市の県立会津工業高校に聞きました。
エアコンの設置は検討は始めていますが「まだ先」。

この夏は、例年どおり教室に大型の扇風機を置いたうえ、さらに2つの対策をとりました。

授業中の水分補給を認めることと制服よりも風通しのよいジャージに着替えることです。

学校は「ことしもすでに暑さが厳しくなっていますが、生徒たちの体調を守るためできることは取り入れていきたいと考えています」と話していました。

PTAが負担する埼玉

PTAがエアコン設置や電気代を負担しているというツイートがありました。

子どもが埼玉県の公立高校に通っているという保護者は、「公立校に進学するとなぜPTAにエアコン代支払わなきゃいけないのか」と投稿。

埼玉県教育委員会に確認してみると、県立高校の普通教室のエアコンはPTAがお金を出して設置し、電気代や修理などにかかるお金もPTA会費から集めているということです。

金額は学校によって違いますが、教育委員会からは毎月の1人当たりの金額が1000円以内になるよう求めているということでした。

冬のストーブは県が設置し燃料代も県が出しているのに夏のエアコン代はPTA負担…。納得がいかないという人も多いかもしれません。

困った時のふるさと納税

こうした中、昨今の自治体が頼るのが「ふるさと納税」です。

小中学校の普通教室のエアコン設置率が全国的にも低い奈良県にある生駒市は、ことし4月から「ふるさと納税でエアコン設置を応援してください!」と呼びかけています。
生駒市によると、市内の20の小中学校にある普通教室すべてにエアコンを設置するには15億円もの費用が必要になる見通しで、「厳しい財政状況の中とても無理」だそうです。

3か月間で14件、およそ33万円の寄付があり、「快適な環境で勉強を頑張ってください」というメッセージも寄せられているということです。

愛知県日進市も小中学校のエアコンの設置費用8億円余りの一部にふるさと納税で寄せられた寄付金を充て、昨年度までにすべての普通教室にエアコンを設置しました。

ふるさと納税があだに

一方、ふるさと納税が一因となり、エアコンの設置を延期したという自治体もありました。千葉県の白井市です。

白井市は小中学校の普通教室にエアコンを設置する費用を20億円余りと見積もり、今年度の予算で設置を進めて来年度から使えるようにする方針でした。

しかし、市民がほかの自治体にふるさと納税したことで、昨年度の市民税はおよそ7000万円の減収。

土地の価格下落による固定資産税の減少などもあり、庁舎の耐震化や学校給食の調理場の建て替えなどを優先させた結果、教室へのエアコン設置は延期せざるをえませんでした。

白井市企画財政部の担当者は「ふるさと納税による減収額は事前に見通しが立たないうえ、額は年々増えていて、今年度は1億円に達するかもしれない。一般会計の規模がおよそ200億円の白井市にとって非常に大きなダメージだ」

教育委員会の担当者も「子どもたちが勉強に集中できる環境を早くに整えてあげられないのは大変心苦しい」と話していました。

学校の空調は必須に

アメリカでは地球温暖化が進む中で学校の空調を整えないと学習効果が損なわれ、大きな損失を生むという最新の研究成果もあるそうです。

多くの人たちが日本の夏が変わりつつあると感じる昨今。学校のエアコン設置に本腰を入れて取り組む時期に来ているのではないでしょうか。