「座席を盾に」は有効か

「座席を盾に」は有効か
神奈川県内を走行中だった東海道新幹線の車内で乗客が刃物で切りつけられ、男性1人が死亡、女性2人がけがをした事件。この事件が起きた時、現場に駆けつけた車掌は「座席を外して盾にして容疑者に近づいた」と警察に話していたということが話題になっています。私たちが乗る新幹線などで今後、同じような事件が起きないとも限りません。身を守るために「座席を盾に」。どの鉄道会社でも可能なのでしょうか?(ネットワーク報道部記者 高橋大地)
「新幹線の座席をひっこぬいて盾に出来るって知らなかった」
「あれって簡単に外れるものなんだ。新幹線内みたいな逃げ場のない場所で、これ知ってると知らないとではだいぶ違う」

今回の事件のあと、SNS上で話題になったことの1つが「座席のシートを取り外すと盾代わりに使える」という話です。

シートを盾に

「新幹線の座席をひっこぬいて盾に出来るって知らなかった」
「あれって簡単に外れるものなんだ。新幹線内みたいな逃げ場のない場所で、これ知ってると知らないとではだいぶ違う」

今回の事件のあと、SNS上で話題になったことの1つが「座席のシートを取り外すと盾代わりに使える」という話です。
今月9日、東京発・新大阪行きの東海道新幹線「のぞみ265号」の車内で乗客3人がなたのような刃物で切りつけられ、兵庫県尼崎市の男性会社員が死亡したほか、20代の女性2人がけがをしました。

この事件が起きたとき、現場に駆けつけた新幹線の車掌は警察に対して「座席を外して容疑者に近づいたが、倒れた男性を見下ろすような形で無言で切りつけていた」と説明していたということです。
画像提供 視聴者
また、発生直後の車内の様子を映像で見ると、座席のシートがいくつも取り外されて、乗客が身を守る盾として使った様子がうかがえます。

JR東海では前から教育

実際、JR東海では日頃から乗務員に対して、不審者が暴れるなどした際、座席のシートを取り外して利用したり、カバンを使ったりして相手との距離を取り、安全を確保するよう教育しているということです。
JR東海によりますと、平成28年5月に新幹線「のぞみ」の車内で、男が包丁2本を持っているのが見つかり、男を取り押さえる際に、車掌の女性がけがをする事件が起きました。

その後、乗務員に対する安全教育が徹底されたということですが、「座席のシートを盾に」するよう教育し始めた時期は分からないということです。

どうやって外す?

では、そもそも列車の座席のシートは簡単に取り外せるものなのでしょうか。

ほかのJR各社や大手私鉄に問い合わせたところ、個別の座席になっているものでも、列車の型式や構造などによって、取り外せるものと取り外せないものがあるそうです。

取り外せるものについては、シートは、面ファスナーでやや強く、いすに張り付いていますが、力を入れて引っ張れば、特別な工具などがなくてもはがせるものが多いということです。

座席のシートが取り外せる主な目的はメンテナンス。座席に飲み物をこぼして汚れてしまったり、破れてしまったりしたときに対処しやすくするためです。
JR東海では「あくまで緊急時などの対応なので、乗客の方々は試したりしないでほしい」と話していました。

他の鉄道会社では?

実は「座席のシートを盾に」するよう乗務員に教育している鉄道会社は少数派のようです。

JR東日本では「盾のように使うことは想定していない」
JR北海道でも「座席は汚れた時のために取り外しが可能だが、盾として使うことは想定していない」とのこと。

新幹線ではありませんが、私鉄にも聞いてみました。
小田急電鉄では「ロマンスカー5種類のうち、古いタイプを除いて座席のシートは外れるが、飲食をしてこぼしてしまったときなどのため。簡単に外せるし、車内にはシートのスペアも置いてある。盾として使うことは想定していない」とのことでした。
ロマンスカーの車内
近鉄も「盾のように使うことは想定していない」とのこと。

一方で通勤電車などに使われる長い「ロングシート」も数人がかりなら取り外しが可能。小田急や名鉄など多くの私鉄では、事故が起きたときなどにとり外して、線路に乗客を降ろす「はしご」のように使うことが想定されているということです。
小田急電鉄 事故時の映像(平成26年)
少なくとも、回答のあったJR5社と大手私鉄の6社では、「シートを盾に使う」ことは想定されていませんでした。

ただ、JR西日本は「座席のシートを盾に使うと言うことは想定していなかったが、今後はそうした使い方も含めて指導の在り方を検討したい」と話していて、今回の事件をきっかけに広がる可能性もあります。

対策といっても…

東海道新幹線では、平成27年6月にも走行中の車内で、男がガソリンをかぶって火をつけ、この男と乗客の女性が死亡する事件が起きています。今回の事件を受けて、JR各社では見回りの頻度を増やすなど、警備強化を検討することにしています。

しかし、警備員がいないときに「犯行」に出くわしてしまったら…。「座席を盾に」使っても、本当に身を守ることが出来るかどうかは分かりません。
また、乗客の手荷物検査は、運行に影響が出るおそれがあることから、現実的ではないと言われています。

今回の事件が社会に与えた衝撃は、これまでになく大きいかもしれません。