“合葬” 希望者が急増 無縁仏とも

“合葬” 希望者が急増 無縁仏とも
死んだ後、誰が弔ってくれるのか。気になる方も多いのではないでしょうか。いま、自分や先祖代々の墓ではなく、ほかの多くの遺骨をまとめて埋葬する「合葬墓」に入りたいという人が増えています。無縁仏との合葬を希望する人も急増。自治体の中には合葬墓の整備が追いつかないところも出ています。なぜ今、“合葬墓ブーム”なのでしょうか?(秋田局記者 五十嵐圭祐・大阪局記者 野神雅史・金沢局記者 木元幹子・ネットワーク報道部記者 高橋大地)

墓を継ぐ人が…

石川県内灘町に住む大家茂男さん(69)。

40年ほど前になくなった子どもの墓を出身地の輪島市に建てて弔ってきましたが、おととし6月、現在暮らしている内灘町にできた合葬墓に遺骨を移しました。

輪島市に比べて家から近くなった墓には何度も行けるようになりました。

大家さんは「だんだん年をとって足や腰が痛くなってきて、遠いところの墓まで草むしりなんか世話に行けなくなります。墓を作るとなれば結構大きなお金がかかるので、ここが良いと思いました」と話します。

大家さんの娘2人はすでに家を出ました。墓を継ぐ人はいません。大家さんは、死んだ後、子どもと一緒に町の合葬墓に入る考えです。
内灘町の合葬墓は石川県内で初めて建設されました。墓の内部は、遺骨を骨つぼに入れて棚に安置する「納骨室」と遺骨を袋に入れて1つのスペースで管理する「埋蔵室」に分かれています。使用料は「納骨室」が、遺骨のある人は16万円、生前予約の人は20万円となっており、「埋蔵室」は9万円です。利用できるのは、内灘町に住んでいる人のみです。町によりますと、ことし5月の時点で1322人の遺骨を納めるスペースのうち26%にあたる348人の利用申し込みがありました。
町の担当者は「家の墓があまり継承されにくくなっています。核家族化の影響で、霊園の家墓が将来的には、無縁仏になっていくことも予想されますので、合葬墓を整備しました」と話しています。

継承しない墓

合葬墓は共同墓や合祀墓などとも言われ、大きい墓地を他の人たちと分かち合うものです。継承を前提にした墓ではありません。

お墓の事情に詳しい、第一生命経済研究所の小谷みどり主席研究員によりますと、合葬墓には、はじめは骨つぼで預かって、一定期間が経過すると骨つぼから出し、ほかの人の骨と一緒にするものや、袋で預かり最初からほかの人と一緒に埋葬するものなどいくつかのパターンがあるということです。

骨つぼで預かる場合は、一定期間は棚に置かれるので、「納骨堂」と見た目は変わりません。

しかし、合葬墓は中に立ち入ることはできないという違いがあります。

合葬墓は、自分でお墓を建てるよりも、お金がかからないというのが大きな魅力。

小谷主席研究員は「生前申し込みができるところも多いので、墓を自分で決めるなら、あまりお金をかけなくても良いと考える傾向もあるのではないか」と話しています。

申し込みが殺到

ことし5月22日、秋田市で合葬墓の利用希望を募ったところ、予想を超える申し込みが殺到。市が対応に追われました。
秋田市では1500人分の合葬墓を整備して、4月に利用希望の申し込みを受け付けていましたが、希望者が市役所に殺到。961人を受け付けたところで急きょ、受け付けを中止しました。

このため、改めて5月、残りのおよそ500人分の希望申し込みを受け付けたのです。
ところが、受け付け日の前日の夜から希望者が窓口の前に列を作り、たちまち残りの分に達したため、当日の午前5時過ぎに受け付けを締め切りました。
受け付けから漏れてしまった女性は「1回目も2回目も受け付けてもらえず残念です。合葬墓をもっと整備してほしい」と話していました。

なぜ、これほど希望者が殺到したのか。市は、跡継ぎがいなかったり、子どもに負担をかけたくなかったりすることから、自分の墓を建てるよりも合葬墓に入りたいと考える人が多いのではないかとしています。

市の担当者は、「希望者の多さに驚いている。今回、申し込みができなかった人の数を調べ、追加の整備を検討したい」と話していました。

無縁仏の納骨塚に合葬

札幌市では、無縁仏の納骨塚に合葬を希望する人が相次いでいます。

札幌市合同納骨塚は昭和41年に弔う縁者のない「無縁仏」を葬るために整備されました。ところが「納骨塚に合葬させてほしい」という希望が徐々に増加。市は「無縁仏」ではない遺骨でも希望があれば受け入れることにしました。

ただ、生前の予約は受け付けておらず、使用できるのは親族の遺骨を管理する市民のみ。1体9100円の永代使用料がかかります。こうした遺骨は、平成20年度に400体だったのが、平成28年度には1470体まで、3倍以上に急増。市の担当者は「他の人の骨と埋葬することへの抵抗感がなくなっているのかなと感じている」と話しています。

“墓じまい”も背景に

大阪府北部。箕面市と茨木市、豊能町のおよそ100ヘクタールの区域にある「大阪北摂霊園」。昭和48年に大阪府が整備しました。お墓の区画はおよそ2万4000と、大阪府内で最大の墓地です。

整備された当時は、近隣の千里ニュータウンに住む人などから多くの申し込みがありました。

ところが、最近は、自分の墓を返還するケースが相次いでいます。

いわゆる“墓じまい”です。

この霊園では、新規の区画の契約は年々減少。昨年度は新規契約が30件だったのに対して、墓の返還は286件でした。この10年間で返還された墓はおよそ1400にものぼり、墓地は「歯抜け」状態になっています。

こうした背景には、近くの千里ニュータウンの住民の高齢化があります。墓地を運営する大阪府タウン管理財団によりますと、住民の30%が高齢者になり、「子どもや孫世代に負担を負わせたくない」という人たちが墓の返還を希望しているということです。

このまま返還が相次ぐと、霊園の運営に影響が出かねないため、財団は、ほかの自治体への墓の区画の売り込みに力を入れるとともに、去年10月、霊園の中に「合葬墓」を整備しました。
新たに整備した合葬墓には2万4000人分の遺骨を納められるということです。規模は関西で最大級。財団の担当者は「高齢化に伴って、墓の管理を家族に託すことが難しくなった場合には合葬墓への切り替えを検討してほしい」と話しています。
第一生命経済研究所の小谷主席研究員は「自治体からすると、無縁墓が増えているので、合葬墓を作るようになったという面もある。無縁認定をしたり、無縁墓をどかしたりするには非常に手間がかかるので、大阪のように無縁墓になる前に共同墓(合葬墓)への移行を促すというのは他の自治体でも行われている」と話しています。

生前に十分な話し合いを

合葬墓を選ぶ場合、注意点はあるのでしょうか?

小谷主席研究員は「墓には遺骨を預ける場所という意味だけではなく、残された人が手を合わせる場所という意味がある。墓石に名前が刻まれていないと、お墓参りした気にならないという人もいるので、生前に家族や親戚としっかり話し合っておくことが重要だ。また、生前に合葬墓に申し込んでいたことを、子どもなどが知らないままのケースもあるので注意が必要だ」と話しています。

お彼岸には、線香と花を供えて先祖代々の墓の前で手を合わせる。
そんな墓参りの風景は今後変わっていくのかもしれません。