ネット民が救った!? アイドル「東播磨」ちゃん

ネット民が救った!? アイドル「東播磨」ちゃん
3人組のアイドルグループ「HYOGO(兵庫)」を知っていますか? 3月にデビューしたものの、ある役所から苦情が寄せられ、引退の危機に。その窮地を救ったのが、ネットなどからの世論でした。(神戸放送局記者 安土直輝)
アイドルグループ「HYOGO(兵庫)」を知るには、ネット上で動画を見るのがいちばん手っ取り早いです。でも、そんな時間がないし、今は、電車の中で、音が出せない!そんな読者の皆様。わかりました。ご説明しましょう!

メンバーは3人。

「HYOGO(兵庫)」

アイドルグループ「HYOGO(兵庫)」を知るには、ネット上で動画を見るのがいちばん手っ取り早いです。でも、そんな時間がないし、今は、電車の中で、音が出せない!そんな読者の皆様。わかりました。ご説明しましょう!

メンバーは3人。

(1)神戸ちゃん

           東播磨応援CMより
「北野異人館」など、異国情緒あふれるおしゃれな港町を擬人化した「神戸ちゃん」。全国屈指の観光地の魅力そのままに表現された″直球ど真ん中″の美少女です。
でも…。「確かにあなたには神戸のような華はない」。メンバーに、そう言い切ってしまうくらい、ちょっと″高飛車″な印象も…?

(2)姫路ちゃん

           東播磨応援CMより
外国人にも大人気の世界遺産・姫路城がある「姫路ちゃん」。どこかエキゾチックな顔だちが魅力的です。
「でもあなたにも、何らかの魅力はあるはずよ」
常にフォローを忘れない、面倒見のいい女の子です。

(3)東播磨ちゃん

「まだ咲かぬ一輪の花」 東播磨応援CMより
そして、今回の主役がこちら。キラキラ輝く神戸ちゃんと姫路ちゃんに挟まれる東播磨ちゃん。2人に劣らず、とてもかわいいのに、自分に自信が持てず、引っ込みがちな女の子キャラです。
お気づきの方も多いかと思いますが「HYOGO(兵庫)」は架空のアイドルグループです。神戸と姫路の間に挟まれ、ちょっと地味な感じもある「東播磨」地区をPRしようと作られた自虐的CMです。

仕掛けたのは

CMの冒頭で東播磨ちゃんは、こんなキャラとして紹介されます。
「駆け出しのアイドルグループ『HYOGO』の中で、まだ咲かぬ一輪の花」
           東播磨応援CMより
そしてプロデューサー役のこんなつぶやき。
「東播磨ちゃん。ちょっと地味すぎですかね」
でも「見せ方次第で″輝くと思うんだけどな″」とのつぶやきも。

実は、CMのキモはこの言葉にあります。本当は魅力がある「東播磨」を″見せ方次第で輝かせよう″というのが狙いです。

CMは兵庫県東播磨県民局が企画して制作されました。

Where is 「東播磨」?

東播磨ってどこなの?
なじみがない方にも、わかるよう地図を用意しました。
東播磨地域は明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町の3市2町です。

もともと出身が関西の私(記者)ですが、神戸に勤務して気づいたのは、兵庫県というよりは、「神戸」「姫路」という2つの街の存在感が大きいこと。

出身地を尋ねると、神戸・姫路に「寄せて」答える人が結構いるように思います。
「出身は神戸。ほんまは隣の明石やねんけどな」
「通っていた学校は、姫路のほう(実際には隣の高砂市)」
「加古川って言われてもわかんないですよね。神戸と姫路の真ん中です」

公開された動画とは

成長ストーリーです 東播磨応援CMより
今回のPR動画は、まさにこんな立ち位置の「東播磨地域」を擬人化しPRしようとしています。

CMは5バージョンあり、東播磨ちゃんが、だんだんとみずからのポテンシャルに気づいて、成長し、ファンを増やしていくというストーリーになっています。

当初は「これは東播磨の苦悩と葛藤を描いたコマーシャルです」というナレーションですが、あなたの魅力は何?と問われ、「明石焼き!かつめし!焼き穴子!たこめしに加古川和牛」と自信を持って答えられるようになると「これは東播磨の希望と前進を描いたコマーシャルです」とナレーションが変わります。
地域の魅力をPR 東播磨応援CMより
神戸・姫路というメンバーに励まされながら、少しずつ人気を集めていく東播磨ちゃん。終始、控えめながらも、ひたむきに魅力を伝えようと奮闘する様子に共感が集まり、3月下旬の公開から1か月間で7000回以上再生されました。

引退の危機に!

ところが、″アイドルグループ「HYOGO」と東播磨ちゃん″は引退の危機に立たされました。
異議を唱えた明石市の泉市長
CMに異議を唱えたのは「東播磨」地区にある明石市の泉房穂市長。
「明石焼きは全国のご当地グルメの大会で優勝するくらいブランドがある」、「『自虐的すぎる』と市民からも批判が出ている」などとして、市長みずから、県に動画の配信をやめるよう迫りました。

こうした「抗議」があった4月20日。担当者は「おおらかに受け止めて欲しかった」と思いながら、その日のうちに、泣く泣く動画の配信を停止。

ところが、ネット上では、″引退″を阻止しようという動きが広がったのです。
「笑い飛ばす余裕を見せて欲しかった」
「東播磨ちゃんに抗議とか無粋」
「東播磨ちゃん、普通に可愛くて人気出そう」
「また公開してくれー」
「東播磨ちゃんに会いたい」

こうした後押しも受け、兵庫県は明石市と協議のうえ、5月2日、動画を再び配信。

すると、騒動をきっかけに知名度が高まり、視聴回数は6万回を超えました。(5月15日現在)

″アイドル″引退の危機は回避され、そして結果的に「東播磨」の知名度アップにつながった形になったのです。

PR動画制作秘話

思わぬ″波紋″を呼んだ兵庫県のPR動画。どうして、こんな動画をつくろうと思ったのでしょうか。
CMの生みの親 東播磨県民局の四海局長
役所にしてはウイットがあるCM!?の生みの親だという「東播磨県民局」のトップ、四海達也局長に話を聞きました。

―地味さを強調した動画、制作の背景は。
「いろんな自治体のPR動画を見たが、無難に″きれいに″まとめている動画は、500回とか1000回程度にとどまっていました。せっかくお金をかけて作るので、多くの方に見て頂かないと意味がないので、少しインパクトがほしいなと。そんな中、地元の人からは『東播磨は神戸と姫路に挟まれてどうしても売りが弱い』とよく聞いていたので、今回はそれをネタにして動画をつくろうと思いました」

―その結果、「抗議」も受けましたね。
「クレームを予測していない訳ではなく、批判も動画を見ていただく1つのきっかけになるんじゃないかなと思っていました。ところが、明石市長から直接、お電話をいただいたので、『そこまでおっしゃるなら、いったん停止して、対応を検討しようか』と。それで、動画の配信を停止したところ、地元紙に取り上げられて逆に注目を浴びました」

―ある種の″炎上商法的な″狙いもあったんですか。
「結果的にそうなったんですけど、本当にそういう狙いはなくて(笑)。実際、応援の声もたくさん頂きましたし、『炎上商法』だと批判のほうが圧倒的に多いですよね、今回はそれとは少し違った形かなと思います」

―今回の動画は、世間の反応をどう受け止めていますか。
「結果的に注目を浴びたので、どちらかといえば成功かな。ツイッターでも「#東播磨ちゃんに会いたい」というハッシュタグまでできましたから。少なくとも、「東播磨」という言葉を今までご存じなかった方の耳にも残ったのかなあと思います。
地元の団体からも『東播磨ちゃんたちを呼べるかな』という問い合わせもありますので、いろんなイベントに彼女たちに来てもらうとか、そんなことも検討したいですね」

まだまだあるオモシロPR動画

今回のCMだけでなく、地域をPRする動画は、各地で作られています。今回の取材をきっかけに、他の自治体のいろんなPR動画を探してみました。

地元出身のお笑いタレント陣内智則さんが「かつめし」の映像に「突っ込み」を連発する加古川市の動画。

オタク風の″ネットサーファー″が、ネットの検索で知った日向市の海岸を訪れ、本物のサーフィンに挑戦する宮崎県日向市の動画。

一昔前のテレビゲーム風に仕上げた動画もありました(京都府宇治市)。

どれも、若い世代を狙った内容で、いずれも数十万回、再生される人気ぶりでした。

明石焼き、たこめし、加古川和牛…。記事の作成のため東播磨の動画を何度も再生していますが、動画を見るたびにその名物や観光地が脳裏にすり込まれていくのを感じます。動画が評判となって、地域の活性化につながることを期待したいです。