木からニョロニョロ ついに正体判明か!?

木からニョロニョロ ついに正体判明か!?
去年、ネットで話題となったニョロニョロとした謎の物体、覚えていますか?小笠原諸島の世界自然遺産の森の奥深くで、木の幹から伸び出している写真がSNSで拡散しました。このニョロニョロの正体。研究グループの調査で明らかになりつつあります。一方、依然として謎も残っています。その後を追跡しました。
(ネットワーク報道部 記者 管野彰彦)
このニョロニョロが見つかったのは去年5月。世界自然遺産に登録されている東京都の小笠原諸島の母島で、固有種の植物、「コヤブニッケイ」の幹から、鹿の角のようなものが突き出ているのを島のレンジャー(自然保護指導員)が発見、SNSに投稿しました。

ネットでは「謎の物体」として話題になり、「キノコ?」「寄生虫?」、はたまた「宇宙植物?」などと、さまざまな臆測やおもしろがる声が飛び交いました。

キノコ?寄生虫?

母島での採取の様子(去年)
このニョロニョロが見つかったのは去年5月。世界自然遺産に登録されている東京都の小笠原諸島の母島で、固有種の植物、「コヤブニッケイ」の幹から、鹿の角のようなものが突き出ているのを島のレンジャー(自然保護指導員)が発見、SNSに投稿しました。

ネットでは「謎の物体」として話題になり、「キノコ?」「寄生虫?」、はたまた「宇宙植物?」などと、さまざまな臆測やおもしろがる声が飛び交いました。

極めて高い確率で

法政大学 廣岡専任講師
あれから約10か月。その正体はどこまでわかったのか。

調査を行ったのは、法政大学生命化学部応用植物科学科・植物医科学センターの廣岡裕吏専任講師らの研究グループです。
ヒントは母島から北に約700キロ離れた同じ東京都の八丈島にありました。八丈島では1980年代に、今回のニョロニョロと似た病気が確認されていたのです。

その名前は「ヤブニッケイもち病」。母島の「コヤブニッケイ」と同じクスノキ科の「ヤブニッケイ」の幹や枝から、角状の突起物が生えていたのです。
八丈島のヤブニッケイもち病
この突起物は菌類に感染したことで、植物の一部が変形したもので、世界でも八丈島でしか見られないものでした。

研究グループは、今回見つかった突起物と八丈島の突起物について、形状のほか、遺伝子の配列を詳しく調べて比較しました。

今回のものは、採取したサンプルの状態がよくなかったため、完全な解析はできませんでしたが、それでも両者が極めて高い確率で同じものと見られることがわかったということです。

今回、母島で見つかったのは、八丈島の「ヤブニッケイもち病」と同じく、菌類に感染してできた突起物である可能性が高まったのです。

世界で2例目か

ツバキに発生したもち病
このように植物に菌類が感染してこぶのようなものができる病気は、広く「もち病」と呼ばれています。これ自体は、ツツジなどさまざまな植物に見られる一般的な病気で、名前のごとく、お餅のようにぷっくりと丸くなるのが特徴です。

しかし、今回、母島で見つかったものは全く違い、角のような形状。八丈島に次ぐ世界で2例目となります。

残る大きな謎は…

しかし、まだ大きな謎が残されています。

2つが同じだとしたら、小笠原で見つかったものは、はたして700キロ離れた八丈島からやってきたものなのか、という点です。

仮説(1) 風

菌類の生態などが専門の三重大学生物資源学研究科の白水貴助教によると、菌が移動したと仮定した場合、まず、考えられるのが風だといいます。

この菌類はキノコと同じように胞子を飛ばして繁殖します。胞子は極めて小さいので、一般的には風に乗った場合、700キロ程度の距離であれば、移動する可能性は十分にあると言うのです。

一方、気象庁に取材してみると、日本列島の南海上、八丈島から小笠原諸島にかけては、700キロもの距離を吹くような強い風は確認されていないということで、疑問は残ります。

仮説(2)鳥・虫

鳥や虫が運んだ可能性も考えられます。白水助教によると、カビやキノコなどの場合は、鳥や虫が食べたりすることで、胞子が運ばれるといったケースはありえると言います。

ヤブニッケイでは、突起物の中から虫が見つかったという報告はあるようですが、詳しいことはわかっていません。

仮説(3)人

人の体に付着したり、持ち込んだ植物や土に混入して運ばれた可能性も考えられます。八丈島と小笠原諸島は、ともに東京都の自治体で、人の行き来はあります。

しかし、今回見つかった場所は、母島のなかでも人の立ち入りや植物の採取が厳重に制限されている国立公園の特別保護区です。

島の中でも、この場所だけでしか見つかっていないことからも可能性が高いとは言えません。

いずれの説にしても、今の段階では、根拠とすることができるようなデータや情報はありません。

貴重な固有種は大丈夫?

研究グループは今回の研究成果を3月25日から神戸で始まる「日本植物病理学会」の大会で発表することにしています。

そこでは鹿の角のような形状になるという実態にあわせ、「コヤブニッケイ角もち病」と命名するとともに、八丈島の病気についても「ヤブニッケイ角もち病」に変更することを提案する予定です。

今後、研究グループは、ことし新たに母島で採取したものを解析し、母島と八丈島のものが完全に同じか確認するとともに、貴重な固有種であるコヤブニッケイにどの程度、悪影響を及ぼすのかなども詳しく調べることにしています。

ニョロニョロの正体。完全にスッキリしたとは言えませんでしたが、いつかすべての謎が明らかになるのを期待したいと思います。