“気付けなかった”をなくしたい

“気付けなかった”をなくしたい
電車に乗ってた。

優先席にヤンキー風な人が座ってた。

杖をついたお年寄りの方が入ってきた。

スーツの人がヤンキー風な人に注意をした。

ヤンキー風な人は渋々席を譲った。

お年寄りはスーツの人にお礼を言った。
《あるツイートより》

見た目だけでは気付けないことがあります。

(ネットワーク報道部記者 栗原岳史・飯田耕太)
ある若者が、山手線でたまたま目にしたことを説明したツイート。次のような結末が書かれていました。

ヤンキー風の人は電車をおりた。

足を引きずっていた。

気づけなかった。

この場に居合わせたのは、松村凌太郎さん。「クローン病」という腸に炎症を起こす原因不明の難病と闘いながら、俳優として活動しています。香港出身の映画スター、ジャッキー・チェンに憧れ、アクションの多い稽古や舞台ではけがをすることもあります。

トレーニングに行くためにたまたま乗った電車の中で見たその光景は、ひと事とは思えなかったそうです。

ひと事とは思えなかった

ある若者が、山手線でたまたま目にしたことを説明したツイート。次のような結末が書かれていました。

ヤンキー風の人は電車をおりた。

足を引きずっていた。

気づけなかった。

この場に居合わせたのは、松村凌太郎さん。「クローン病」という腸に炎症を起こす原因不明の難病と闘いながら、俳優として活動しています。香港出身の映画スター、ジャッキー・チェンに憧れ、アクションの多い稽古や舞台ではけがをすることもあります。

トレーニングに行くためにたまたま乗った電車の中で見たその光景は、ひと事とは思えなかったそうです。
「自分も外見からはわからない病気がある上、以前、足をけがした時に優先席に座る資格があるのかないのか考えたこともありました。見た目じゃわからない病気やけがと闘っている人はたくさんいることを知ってほしいし、見えない所にも目が向けられる社会になってほしいと思う」(松村さん)

多くの反響が

ツイートには、多くのコメントが寄せられました。

「膝の靱帯を延ばしてしまい、膝サポーターで固めないといけなくて、脚を伸ばしていました。すると『若いもんが優先席で脚伸ばして座ってんじゃねぇ!』と怒鳴られ、つえをついて席を立ちました。それ以来、どんな事があっても優先席には絶対座らないと固く決めたのでした」
「『俺も足をけがしてて』なんていうコミュニケーションが成されないところが『日本人の問題だよなぁ』と思うのは私だけ?」

「優先席だけ空いているのを見ると、譲り合い下手な集まりなんだと思うことがある」

さらに、こんな指摘もありました。

「私は免疫の病気で関節が痛くなるのでヘルプマークつけてます。若いから健康と決めつけられるのはつらいです。ヘルプマークももっと浸透してくれればと思います」

ヘルプマークって何?

ヘルプマークとは、義足の人や外見からは判断しにくい病気の人などが、まわりの人から配慮や援助を得やすくするために、東京都が6年前に作ったマークで、都営地下鉄の駅などで無料で配布されています。去年8月の時点で19万個を配布しました。

利用者からは「発作で倒れた際に、救急隊員がヘルプマークに書いてあったかかりつけの病院に気付いて連絡をしてくれ、一命をとりとめた」というエピソードや、「電車の優先席などでヘルプマークを見せて事情があると伝えることができ、とても気が楽になった。お守りのように使っている」という声が寄せられているそうです。

足りないし!メルカリで売ってるし!

こうした中、ヘルプマークに関する別のツイートが注目されました。

「困りましたね…フリマアプリ内での売買が後を絶ちません…。皆の税金で作り必要な方に無料配布している物で儲けようと商売しているんですよ。ヘルプマークを買わないでください」

ヘルプマークが、フリマアプリのメルカリで、いくつも売買されていたのです。これを見た人からは…。

「ヘルプマークを転売!?信じられないっ!!」

「ヘルプマーク、欲しくて窓口に行くと大抵『品切れ』『入荷未定』と断られます」

「送料当方負担で構わないので郵送等、ご検討頂けないものでしょうか…」

憤りのほか、ほしくても手に入らない、お金を出しても買いたいという声が相次いでいました。

必要な人に寄り添うヘルプマーク

買わないよう呼びかけていたのは、ヘルプマークの普及・啓発を行う民間の全国ネットワークのメンバーです。

2年前、このネットワークを立ち上げ、自身も100万人に1人の肺の難病で1日の大半を寝て過ごさなければならないという渋谷みち代さん(55)に話を聞くと、ヘルプマークが病気や障害がある人にどう受け入れられているのかを話してくれました。
渋谷みち代さん
内閣府のホームページには、障害者であることなどを周囲にわかってもらうマークが、ヘルプマークもあわせて11種類掲載されています。

たとえば、この緑色の矢印が書かれたマーク。耳が不自由なことのほか、聞こえない、聞こえにくい人への配慮を表すマークです。
ハートにプラスがあるマークは、心臓、呼吸機能、じん臓、ぼうこう・直腸、小腸、肝臓、免疫機能の7つに障害がある人を示しています。それぞれ障害や疾患別に作られています。
ところがヘルプマークはこうした区別がありません。渋谷さんは、「『この人は何らかのハンディーがあるんだ』と一目で分かってもらえる。こうしたものはこれまでなかった。さらに、自分の障害や病気を知られたくないけど、ちょっとした助けが必要という人に寄り添ってくれるのがヘルプマークなんです」と指摘します。

必要な人に届かない

その一方で渋谷さんは、「ヘルプマークは必要な人に行き渡っていない」と言います。

東京都は、一定のルールに従えばヘルプマークの作製・活用を認めていて、2月までに北海道や神奈川県、大阪府など全国20の都道府県が配布を始めましたが、場所によってはまだ手に入りにくいのが現状です。

さらに、マークを受け取りたくても取りに行けない人もいると言います。突然、息切れやめまいなどに襲われるパニック障害で電車に乗れなかったり、人との交流を恐れる不安障害で配布窓口に行けなかったりするのだと渋谷さんは指摘します。こうした背景があるからこそフリマアプリでの売買が後を絶たないと見られるのです。

“気づかなかった”をなくしたい

ヘルプマークは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて共通のマークにしようと、去年、JIS=日本工業規格に定められました。ただ、ヘルプマークを付けていたのに意味を理解してもらえなかったという声もあり、まだまだ認知度が低いのも事実です。

渋谷さんは、より多くの人に知ってもらうため、ベッドの上からネットでの情報発信を続けています。「気づいてほしい」「“気付けなかった”をなくしたい」ーーー多くの人たちの願いです。
ベッドから情報発信する渋谷さん