ヨガで体が…急増するトラブル

ヨガで体が…急増するトラブル
「ダイエットしたい!」「健康になりたい!」。いま女性を中心に「ヨガ」が空前のブームとなっています。ヨガを楽しむ人は650万人ともいわれ、街なかで「ヨガ教室」の看板を目にすることも多くなりました。健康維持やリラックスに効果があるとされるヨガ。ところが、最近、体にトラブルが起きたという相談が増えていることがわかりました。人気のヨガに何が起きているのでしょうか?(岡山放送局記者 周英煥)
東京・世田谷区の鈴木まゆみさん(44)は、去年2月、ヨガのレッスンの最中、足に強い痛みを感じました。左右の足を縦に開き、上半身をひねるポーズを取っていたところ、インストラクターに右足の付け根を上から押された時でした。

ヨガで骨に傷!?

東京・世田谷区の鈴木まゆみさん(44)は、去年2月、ヨガのレッスンの最中、足に強い痛みを感じました。左右の足を縦に開き、上半身をひねるポーズを取っていたところ、インストラクターに右足の付け根を上から押された時でした。
病院での診断は、骨の内部が傷つく「骨挫傷」。3か月ほどの間は、松葉づえ無しでは歩くことができず、1年余りがたったいまも、痛みが残っています。

鈴木さんは「正直言って、ヨガにこんな大きなけがをしてしまう危険があるとは、思っていませんでした」と話していました。

ヨガを楽しむ人は650万人とも言われ、空前のブームとなっています。各地で「ヨガ教室」の看板を見かけることも多くなりました。

しかし、ヨガで体を痛めてしまうというのは、どういうことなのでしょうか。

急増するトラブルの訴え

ヨガ教室で起きた体のトラブルについて、国民生活センターに情報公開請求を行って、相談の件数や内容を調べてみました。
すると…。
「肩のけん板を損傷した」、「運動中に圧迫骨折した」など、重大なケガをしたという相談も見られました。「ホットヨガ」によるトラブルも目立ちました。「アレルギー症状が出た」、「じんましんになった」、「皮膚がただれた」などという内容が寄せられていました。
相談件数は、平成25年度までは、ゼロ、または1ケタでしたが、ここ数年で急増。昨年度は40件にのぼり前の年度の2倍近くに増えていることがわかりました。
さらに、ヨガのトラブルの広がりがうかがえる調査もあります。国際医療福祉大学の岡孝和主任教授は、5年前、厚生労働省の研究班の代表としてヨガの効果や安全性を調査しました。

全国200か所余りの教室で、ヨガを行った直後の2508人に聞いたところ、3割近くに当たる687人が、心身に何らかの異常を訴えたというのです。

岡主任教授は国民生活センターに寄せられた相談件数について「氷山の一角にすぎないと思います」と話していました。

指導が原因?

なぜ、トラブルが増えているのか。指導方法にも原因があるのではないかとして、指導の改善に取り組むインストラクターがいます。

東京・八王子市でヨガ教室を経営する中村尚人さん(40)です。中村さんは、体の仕組みなどについて専門的な知識を持つ理学療法士の資格を持っています。
インストラクター仲間から、「受講生がけがをした」という話をよく聞くようになったため、なぜ、そんなことが起きるのか、去年、89人のインストラクターたちを対象に、聞き取り調査を行いました。

その結果、「指導中に生徒がけがをしたことがある」と答えた人は13人いました。このうち4人がその原因は「自分の不適切な指導」と答えていたのです。ヨガのインストラクターになるには、特別な資格は必要なく、骨格や筋肉など、体の仕組みについての専門知識を学ぶことは義務づけられていません。

中村さんは、多くのインストラクターが、こうした体についての知識を身につけないまま、指導にあたっていることが、トラブルの背景にあるのではないかと考えています。

インストラクターにも講習を

そこで中村さんは、ことし1月からインストラクターにヨガを安全に指導する方法を学んでもらうための講習会を始めました。

東京都内で行われた初めての講習会には、およそ120人のインストラクターが参加しました。
講習会で中村さんは、どういう指導がケガにつながるのかを、具体的な動きをあげて指導していました。

例えば、あぐらをかくようなポーズを取るときに、うまく足を組めない人の足を無理に引っ張りあげると、ひざを痛めることなどを説明しました。
中村さんは、ヨガで決められた「ポーズ」に、無理に体を当てはめるのではなく、個人の体の特徴に応じて指導することが大切だと強調していました。これからインストラクターになるため、講習会に参加した30代の女性は「なにも知らずに、がむしゃらに教えてもケガにつながるだけだということがよくわかりました」と話していました。

中村さんは「ヨガにはすばらしいことがいっぱいあります。でも、やり方を間違えれば、けがをすることもあるということに目をつぶってはいけないと思います。安全対策をきちんとしないと、本当の意味でヨガは社会に広まらないと思っています」と話していました。

ケガしないためには

空前のブームとなっているヨガ。安全を守る仕組みづくりが追いついていないのではないかというのが、取材をした率直な印象です。しかしヨガには「めい想」が中心でゆっくりと体を動かす流派もあれば、きついポーズをとるものもあり、やり方はさまざまなので指導に必要な知識などについて、ひとくくりにルールを作るというのは難しいのが実情です。
では、ヨガをする私たちがケガをしないためには何が必要なのでしょうか。何人かのインストラクターに話を聞きました。多くのヨガ教室では体験レッスンを行っているので、まずは、自分に合った内容かどうかを見極めることが必要だということです。インストラクターに自分の体調などを伝えて、それを踏まえて指導してくれるかどうかもひとつのポイントだそうです。

私も取材をきっかけにヨガ教室に通い始めました。すべての人が安全にヨガを楽しむためには何が必要なのか。ヨガ人気が高まるいまだからこそ、リスクにもきちんと向き合うことが欠かせないのではないでしょうか。