金メダル ザギトワ選手への手紙~秋田犬のこと、大切にしてね

金メダル ザギトワ選手への手紙~秋田犬のこと、大切にしてね
拝啓

フィギュアスケートの金メダリスト、アリーナ・ザギトワさま。

ピョンチャンオリンピックでは、15歳というのが信じられないほど高い技術と美しい演技で世界中を魅了してくれました。力強いガッツポーズも印象的でした。

ご褒美として両親におねだりしていた秋田犬が、日本から贈られることになったそうですね。きっと大切にしてもらえると思いますが、もっともっと好きになってもらえるよう、秋田犬の魅力について私たちからもお伝えします。

(秋田局記者 國友真理子/青森局記者 天間暁子/ネットワーク報道部記者 宮脇麻樹 玉木香代子)
ザギトワさんが「秋田犬がほしい」と言ってくれたこと、日本では大きく取り上げられ、注目されたんです。私たちも、何だかとてもうれしかったです。

秋田犬は日本固有の犬。ふるさとは、ロシアと同じように雪が多い東北地方にある秋田県の大館市とされています。

「秋田犬ほしい!」大注目でした

ザギトワさんが「秋田犬がほしい」と言ってくれたこと、日本では大きく取り上げられ、注目されたんです。私たちも、何だかとてもうれしかったです。

秋田犬は日本固有の犬。ふるさとは、ロシアと同じように雪が多い東北地方にある秋田県の大館市とされています。
ザギトワさんの気持ちを知った地元、大館市は大騒ぎで、市のゆるキャラの秋田犬「はちくん」がデザインされたTシャツや帽子、それに秋田犬のぬいぐるみなどを段ボール箱いっぱいに詰め込み、「秋田犬のことを世界に広めてくれて感謝します」というロシア語のメッセージを添えて送りました。届きましたか。

秋田県の佐竹敬久知事も、記者やカメラマンが集まった場所で「ワン!」と犬の姿をまねてみせるほど、喜びを隠しきれない様子。
「秋田に来て、実際によく触れて、いろんな情報を手に入れてほしい。最高に歓迎します」と訪問を心待ちにしています。

秋田犬の魅力って

ザギトワさんはオリンピックの前、新潟で調整を行っていたとき、雑誌に載っていた秋田犬の写真を見て気にいったそうですね。そう、秋田犬にはいろんな魅力があるんです。
<長く愛される>
国の天然記念物に指定されている6つの日本犬種の1つで、唯一の大型犬種です。この秋田犬の血統を大切に守っていこうという団体、その名も「秋田犬保存会」があるのを知っていますか。大館市に本部があり、世界中の秋田犬の血統書を管理しています。

副会長の富樫安民さんにお話を伺うと、保存会が設立されたのは、実に91年前の昭和2年にさかのぼるそうです。秋田犬は長く愛されてきたんですね。今では、国内に51の支部と、海外に18の愛好家クラブがあります。

会員はおよそ3000人。最近は、飼っている人だけでなく、秋田犬が好きだという理由で会員になる人も増えているそうです。保存会では、体格や健康状態について審査する展覧会を、世界各地で開催しているそうですよ。
富樫安民さん
<美しい姿>
副会長の富樫さんが魅力として真っ先に挙げたのは「見た目の美しい姿」です。
がっしりとした体に、きりっとした目元。そして、ふわふわの毛に、くるっと巻いたしっぽもチャーミングポイントです。

「半世紀前と比べて、見た目がふっくらした感じがします。はっきりした理由は分かりませんが、食べ物や暮らしが変わった影響かもしれません」(富樫さん)

時を経てより愛らしくなった姿が、多くの人をひきつけているようです。
<信頼築ける性格>
それから、何といっても性格が魅力的です。
飼い主に忠実で、信頼関係を築けばとてもよいパートナーになります。

飼い主が亡くなったあとも東京の渋谷駅で帰りを待ち続けた「忠犬ハチ公」は、もちろん秋田犬。
そういえば取材中も、飼い主がそばを離れると、じっとその方向を見て待ち続ける姿をたびたび目にしました。富樫さんによりますと、「散歩中に飼い主が突然倒れ、犬が家に戻って家族に知らせた」といったエピソードが全国から寄せられているそうです。

<決して多くはないものの…>
では、ほかの種類と比べて、飼っている人は多いのでしょうか。

犬にとっての戸籍のような「犬籍」を作って管理する国内最大規模の団体「ジャパンケネルクラブ」に尋ねたところ、2015年度に登録された犬で、最も多い種類はプードル、2位がチワワ、3位がダックスフンド、4位がポメラニアンで、5位が柴犬と続き、秋田犬はなんと35位でした。

保存会に尋ねてみました。大型犬の秋田犬は成長すると体重が40キロにもなり、飼育は簡単ではないそうです。餌はたくさん食べますし、朝夕の散歩も欠かせません。
おとなしくて、かわいらしい顔をしていますが、祖先が猟犬として育てられたこともあり、力がとても強いのです。

秋田犬を50年間、飼い続け、今も40頭を飼っている宮城県のブリーダー、小崎慎太郎さん(70)もこんな話をしていました。

「秋田犬は飼い主には従順ですが、ほかの人と接するのに慣れていなかったり、ストレスをためたりすると、恐怖心から強くほえることがあります。広い場所で存分に運動させたり、散歩のときなどに適度に人と接触させたりすることが大切なんです」
「堂々とした雄大ないでたちは、ほかにはない魅力。愛情をかければかけるほど忠実になり、癒やしてくれる存在になります」

世界で人気急上昇

この秋田犬の魅力は、およそ10年前、リチャード・ギアさんが出演し、忠犬ハチ公の物語を描いたアメリカ映画「HACHI 約束の犬」などをきっかけに、世界各地へと広まりました。ザギトワさんは小学校に入ったくらいだったのでしょうね。
今では、中国や台湾、北アメリカやヨーロッパにまで愛好家がいるそうです。
このため、海外で飼われる秋田犬は急増しています。
保存会の「犬籍」に新たに登録された数を調べたら、2011年ごろまでは毎年2000頭ほどで、ほとんどが日本国内だったのですが、その後、海外での登録が急増し、おととしと去年は日本より海外のほうが多くなっていたんです。びっくりしました。

ロシアには愛好家クラブも

ザギトワさんのいるロシアでも、愛好家がたくさんいますよ。

そう、プーチン大統領の愛犬「ゆめ」は、東日本大震災のよくとし、ロシアからの被災地支援に対するお礼などとして秋田県から贈られた秋田犬です。
これをきっかけにロシアでも人気が高まり、保存会によりますと、モスクワには愛好家でつくる「ロシアクラブ」という会まであって、メンバーは去年末で45人いるそうです。知っていましたか。

「秋田犬は誰にでも愛想を振りまくわけでなく、飼い主に忠実。寒さにも強い。大きな家が多いロシアでは、番犬としても好まれるようです」(保存会)

ザギトワさんの暮らしにも、きっととけ込んでくれると思いますよ。
「ロシアクラブ」

「わさお」って知っていますか

ここまで秋田犬のことを書いてきて、私の脳裏には、ある犬の顔が浮かんでいます。ハチ公ほど長い歴史はないですが、日本ではとっても有名な秋田犬なんです。
その名は「わさお」。
秋田県の隣、青森県の鰺ヶ沢町のいか焼き店にいるんですが、ライオンのようなふさふさした長い毛と小さな目が愛らしく、10年前、旅行で訪れた人がブログで紹介したのをきっかけに一気に注目されました。

「不細工だけどカワイイ」なんて失礼しちゃう言い方なんですが、「ブサカワ」という言葉が何ともぴったりなんです。
7年前には自分が主演した映画が全国公開され、写真集やグッズが作られるなど、人気を集めました。

このわさお、最近、悲しいことがあったんです。
飼い主の菊谷節子さんが、去年11月、73歳で亡くなったのです。
菊谷さんと「わさお」
10年ほど前、捨てられていた子犬のわさおを拾った節子さんは、いつもそばにいてくれました。朗らかな人柄の節子さんとわさおが一緒に過ごす光景は、ほのぼのとして、多くの人の心を癒やしてきました。

節子さんがおなかの具合を悪くするとわさおもおなかを壊すなど、周りの人たちが「一心同体だ」と驚くほどでした。

亡くなったあと、わさおは、ふだん見られなかった遠ぼえをしたり、店の中で何かをさがすしぐさをしたりと、不安定になりました。

でも、そんなわさおを心配した人たちが、連日、店を訪れました。
ツイッターなどを通じても、「悲しいよね」「みんながそばについているよ」「頑張れ」、そんな声が全国から届きました。

別れから3か月、大勢の人の励ましに支えられて、散歩で海辺を走ったり、旺盛な食欲で餌のお皿を空っぽにしたりと、元気を取り戻しつつあるようです。

周りの人たちは、「わさおの顔を見ていると、まるで節子さんがそばにいるように見えるし、またいつか会えると信じているようにも見える」と話しています。

飼い主との絆、訪れる人たちとの絆を深めて生きている、そんなふうにも思えてきます。

これからずっと…

ザギトワさんは「これから名前を考えて、一緒に散歩したい」と話してくれましたね。どんな関係を築いていくのか、私たちも楽しみです。

これからの競技人生、きっといろんなことがあると思います。そのたくさんの笑顔や涙の横に、いつも、りりしくてふわふわの秋田犬がいてくれることを、心から願っています。

敬具