乳幼児もストレス!? 保育園預けはじめに注意

乳幼児もストレス!? 保育園預けはじめに注意
4月から復職に向けて準備を進めている人たちのもとに、認可保育園の入園可否の通知が届く時期ですね。「認可落ちた!このままでは春から復職できない!」「どこでもよいから子どもを預かってくれる園を探さなきゃ!」インターネット上には、預け先が見つからずに焦る声があふれています。
こうした中、気になるデータがあるのをご存じでしょうか? 保育施設の預けはじめの時期に、乳幼児の「突然死」が多く起きているというのです。
(ネットワーク報道部記者 角田舞 野田綾 玉木香代子)
子どもが保育園に通いはじめる際、多くの園では最初に「慣らし保育」の期間を設けています。

例えば、記者が子どもを預けた川崎市の保育園では、初日は親子同伴で登園。そして昼食まで体験、昼食後のお昼寝まで体験、午後のおやつまで体験と徐々に慣らしていき、3週間目に初めて、夕方まで預かってもらうことができました。

慣らし保育は自治体・施設によりまちまち

子どもが保育園に通いはじめる際、多くの園では最初に「慣らし保育」の期間を設けています。

例えば、記者が子どもを預けた川崎市の保育園では、初日は親子同伴で登園。そして昼食まで体験、昼食後のお昼寝まで体験、午後のおやつまで体験と徐々に慣らしていき、3週間目に初めて、夕方まで預かってもらうことができました。
同じ保育園に子どもを通わせる保護者の間では「慣らし保育の期間が長すぎる」という声が上がっていました。

「4月のあたまから復職しているので、慣らし保育の期間は半休や有給で対応しないといけないので困る」とか、「早く職場に戻らないと肩身が狭い」など声はさまざまでしたが、慣らし保育をすぐに終わらせたい親が多かったように思います。

この「慣らし保育」、実は自治体や施設によって対応はまちまちです。いくつかの保育園に聞いてみたところ、「1週間程度は必要ですので仕事は休んでください」という園もあれば、「2~3日で慣らしを終えて、夕方まで預かる子もいます」というところもありました。

東京・品川区は、保護者が希望すれば慣らし保育を行うものの、基本的には職場復帰の支援のため「入園当初から、夕方まで預かり可能」としています。

預けはじめ1週間で「突然死」が多い

しかし、気になるデータがあるのをご存じでしょうか。保育施設で預かり中の乳幼児の「突然死」が、預けはじめの時期に起きているケースが多いというのです。

内閣府のまとめでは、保育施設に預けられた乳幼児が睡眠中などに突然死亡する「突然死」はおととしまでの10年間に146件報告されています。
このうち事故などのケースを除く43件を、多摩北部医療センター小児科の小保内俊雅部長らの研究グループが分析しました。その結果、全体の30%が預けはじめから1週間以内のごく初期に起きていて、1か月以内に起きた突然死は全体の半数に上っていたのです。
研究グループでは、この預けはじめの突然死について、新たな環境への適応困難が要因になっている可能性を指摘しています。

小保内部長は「子どもは成長とともに新しい環境に順応する力をつけていくが、その経験が少ない3歳未満の子どもにとっては、保護者から離れて1人で保育園に入ることが、想像以上の大きなストレスになっていると考えられる。突然死の半数が起きている預けはじめの1か月については、特に注意が必要だ」と話しています。

アメリカでも同様の報告が

乳幼児の預けはじめの時期の突然死の危険性は、アメリカの研究でも報告されています。

アメリカ小児科学会の2008年の報告によりますと、親以外の保育の環境下で起きた乳幼児の予期せぬ突然死のうちおよそ3分の1は1週間以内に発生しています。

さらにそのうちの半分は、預けはじめた初日に起きていることがわかっています。アメリカでの研究ではなぜ預けはじめの時期に突然死が起きやすいか、理由ははっきりしないとしていますが、慣れないうつぶせ寝などが少なからず影響していると見ているということです。
乳幼児の突然死を研究している小保内部長は「新しい環境でのストレスと突然死については、各国の研究を見ても国際的に同じ傾向が出ている。また日本では、欧米よりも預かり時間が長く昼寝を挟むため、1~2歳児でも突然死が高頻度で起きており、注意が必要だ。保護者の職場の状況によっては早い復職を求められるケースもあるかもしれないが、危険性が高いことが分かってきた以上は、保育園での初期の預け方、預かり方を社会で考えていく必要がある」と警鐘を鳴らしています。

丁寧な慣らし保育 工夫する保育園も

こうした中、子どもができるだけストレスなく保育園での生活に慣れるようにと、工夫をしている保育園があります。
奈良県王寺町にある認可園「片岡の里保育園」です。
こちらの保育園では、乳幼児を新たに受け入れる際には、保護者に協力してもらい、職場復帰の1か月ほど前から慣らし保育を始めます。預かり時間を2時間から半日、1日と少しずつ伸ばしていきますが、特に最初の2週間は、乳幼児一人一人にそれぞれ担当の保育士をつけて、マンツーマンで見るようにしています。
なぜこの取り組みを始めたのか。水野ゆか園長によりますと、以前は新しい乳幼児が集団に入ると、ほかの在園児まで大泣きしたり、保育士を取り合ったりと、精神的に不安定になっていたそうです。

そこで、新しく入った子どもにスムーズに新しい環境に適応してもらおうと、食事や睡眠、排せつなどを同じ保育士にきめ細かくみてもらう仕組みに変えました。

その結果、入園したばかりでも泣いている子が少なくなり、見学に訪れた保育園の関係者からも「園児たちが穏やかな表情で過ごしている」と評判だということです。
丁寧なマンツーマンの慣らし保育を始めて7年。水野園長は「保育園に入園したばかりの乳幼児にとって、入園して間もない慣らし保育の環境こそ大切」と実感していると言います。

「突然死や事故を防ぎ、子どもがストレスなく保育園生活を始められるよう、今後も慣らし保育を丁寧に行っていきたい」と話していました。
片岡の里保育園 水野ゆか園長

保護者が気をつけることは

突然死を防ぐための研修などを行う「保育中の突然死予防研修推進会」事務局の中村徳子さんに、保護者としてどんなことに気をつけたらよいか聞きました。

中村さんは、突然死につながる可能性があるリスクを可能な限り排除することが大事だと指摘しています。
(1)「うつぶせ寝」の睡眠は突然死のリスクが高まる。うつぶせで寝るクセのある子は「仰向け姿勢」で寝られるよう練習しておく。

(2)たばこの煙も突然死のリスクを高める。家族は禁煙など子どもが煙を吸わない対策を。

(3)慣らし保育はできるだけ丁寧に。いつでも迎えに行ける状態で余裕を持って慣らす。

(4)体調がすぐれない時にも突然死は起きやすい。微熱や鼻水がある、食欲がないなど小さなことでも、子どもの体調でふだんと違う気になることがあれば、保育士に伝える。
中村さんは「育休を終えた仕事復帰の当初は、子育てと仕事を両立しなければと、親も余裕が無くなりがちです。しかし保育の預けはじめの時期は子どもにとって、命にも関わる大きなストレスがかかっています。まわりの保護者や保育園だけでなく、復職先の会社や社会全体が、『保育の預けはじめはリスクの高い時期だ』と認識して、入園した親子が慣れるまで、見守ることができる社会を作っていかなければならない」と話しています。

会社とも情報共有を

仕事をしながら子育てをする中で、子どもの体調を最優先に行動できないこともあるかも知れません。微熱や鼻水程度の「ちょっとかぜ気味」の時や大事な予定がある日などは「仕事を休めないので保育園に預けよう」なんて経験が誰しもあると思います。しかし預けはじめにリスクがあることが分かり始めたいま、4月からの復職では、会社ともこうした情報を共有して理解を促し、親子とも無理のない新生活を始めたいものです。