「中国の有名な女性と!」河野外相のツイッターを考えてみた。

「中国の有名な女性と!」河野外相のツイッターを考えてみた。
1月末、河野外務大臣がツイッターにアップした1枚の写真がネット上で話題になりました。「こわもて」で知られる中国外務省の報道官との自撮り写真です。2人の満面の笑みは関係改善に向かう日中関係を象徴するようでした。
ツイッターと言えば、世界を騒がすアメリカのトランプ大統領のつぶやきが知られていますが、河野大臣も、日本の政治家の中では有数の「つぶやきスト」だと思います。ただ、トランプ大統領のそれとは違うような…河野大臣のツイッターを考えてみました。(政治部記者 外務省担当 辻浩平)
イカの真子入り酸辣湯
シログワイとガチョウ肉揚げ
子牛肉のブラウンソース

実に美味しそうなこのメニュー。1月28日、河野大臣が中国を訪問した際、王毅外相とのワーキングランチで出されたメニュー表です。河野大臣がツイッターに投稿しました。

頻繁に投稿される大臣のツイッターをチェックするのは、私たち外務省担当の記者には欠かせない仕事となっています。会食のメニューを公開するなんて珍しいなあと思い眺めていると、もっと目を引く写真が投稿されました。

「中国の有名な女性と!」

河野外相のツイッターより
イカの真子入り酸辣湯
シログワイとガチョウ肉揚げ
子牛肉のブラウンソース

実に美味しそうなこのメニュー。1月28日、河野大臣が中国を訪問した際、王毅外相とのワーキングランチで出されたメニュー表です。河野大臣がツイッターに投稿しました。

頻繁に投稿される大臣のツイッターをチェックするのは、私たち外務省担当の記者には欠かせない仕事となっています。会食のメニューを公開するなんて珍しいなあと思い眺めていると、もっと目を引く写真が投稿されました。
「With a famous Chinese lady!(中国の有名な女性と!)」というタイトルがついた、明らかに大臣が自撮りしたと思われるツーショット写真です。
驚いたのはその相手。「こわもて」で知られる中国外務省の華春瑩報道官が、河野大臣とともに、満面の笑みを浮かべていたからです。

いろいろと難しい問題を抱える日本の外務大臣との笑顔の写真。私は、真っ先に、この投稿で華報道官の立場を悪くしてしまうのではないかと思いましたが、正直、ニュースになるような大きな騒ぎになるとは思っていませんでした。

しかし、この投稿はアップされるなり、瞬く間に3000件以上のリツイート。ふだんのリツイートが数百件ほどですから、異例の広がりと言えます。新聞などでも取り上げられました。

「すごい!こんなツーショット笑顔は見たことありません」
「素晴らしい現代式の外交」

コメント欄には賛意を示す書き込みが次々と寄せられます。
中国語の書き込みも少なくなく、「中国と日本の関係がこの笑顔のように美しくなることを願う」というものもありました。
シンガポールの新聞、ストレーツ・タイムズは「河野大臣、”ツイッター外交”で勝利」という見出しの記事すら掲載しました。

「河野大臣は馬鹿ではないのか」

小西議員のツイッターより
政界からも反応が出ました。民進党の小西洋之参議院議員がツイッターで痛烈に批判したのです。

「河野大臣は馬鹿ではないのか。相手は中国政府の報道官に過ぎない。外交交渉の相手ですらない格下の人物だ。その人物とニヤケ顔でツーショットを撮るのは外交ではなく中国への『朝貢』だ」

これに対して河野大臣は、
「写真撮る時に相手の『格』を考えて撮っている人もいるんだ。疲れそう」と投稿。全く意に介さない様子です。
日中関係は改善の方向に向かっているとは思いますが、沖縄県の尖閣諸島の接続水域を中国の潜水艦が浮上しないままに航行するなど緊張する事態は起きており、難しい問題を抱えています。笑顔の自撮り写真1枚で問題が解決するはずはありません。
ただ、注目を集めたツイートに、ある外務省幹部は「大臣ならではで、役人にはできない。すばらしい」と手放しで称賛していました。
中国海軍の潜水艦(1月)

中国はどう受け止めた?

この投稿が、中国政府にどう受け止められたのかも気になるところです。
中国では、インターネットが独自に規制され、ツイッターは見られません。ただ、これだけ話題になった投稿を当局がチェックしていないはずがありません。抗議はなかったのだろうか。日本の外務省に聞いてみると、「来ていない」との回答です。

それならば、と北京にいる後輩の特派員に聞いてみることにしました。すると、後輩記者は、すでに中国外務省の関係者に取材していました。
中国側の受け止めは「こうした写真が撮れるほど、河野大臣との会談は、日中双方が打ち解けた雰囲気だった」とのこと。華報道官は、ツイッターに写真が投稿されるとは思っておらず驚いていたようで、どうやら私の心配は杞憂に終わりそうです。

メディアへの反論にも使われるツイッター

河野大臣のツイッターによる発信は、時に私たちメディアへも向けられます。

1月15日
「これはひどいな。産経新聞はフェイクニュースを作って流したと言われても仕方ない」

年明けに予定していたインド出張をキャンセルしたのは、UAE=アラブ首長国連邦で開かれる再生エネルギーをめぐる国際会議に出席するためだったと指摘した記事に対し、河野大臣は、実際はカナダでの北朝鮮問題をめぐる協議に参加するためだったと反論したのです。

「暇つぶしだよ」

「政治家とツイッター」と言えば、投稿ひとつで世界を騒がせるトランプ大統領が頭に浮かびます。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮対応といった重要政策ですら、ツイッターでつぶやく独特の手法です。

河野大臣の場合はどうなのでしょうか。
私は以前、激務にもかかわらず、なぜここまで頻繁にツイートしているのか、大臣本人に尋ねたことがあります。その際、大臣は「暇つぶし程度の感覚だよ」と気さくに話していました。

確かに投稿の中には「国連のカフェテリアで鳥カツカレーが8$!」とか、自分のことをおどけて「世界一かっこいいだろ」と評してみるなど、他愛もない書き込みも少なくありません。フランクな投稿が多くのフォロワーを引きつける魅力なのかもしれません。

ただ、現時点で河野大臣のツイッターのフォロワーは40万人超。内閣の中では、安倍総理大臣に次ぐ数です。取材する側にとっては、「暇つぶし」と額面どおり受け止め見逃してばかりもいられません。内容によっては、外交にも影響を与えることもありえます。

「SNSは政治家の新たな資源」

政治家とツイッターなどSNSとの関係について、政策とメディアを研究している東京工業大学の西田亮介准教授に聞いてみました。
「フォロワーが多く、ネット上でも発信力を持つ政治家は、人脈や学歴などと並んでSNSを『新たな資源』として使っている」

メディアに編集されずに直接国民に発信することができるSNSの特性は、日本の政界でもかなり浸透してきており、SNSでの発信は今後も広がっていくといいます。

一方で、西田准教授は、受け取り側も注意が必要だと指摘しています。

「政治家は、影響力を自覚してSNSを使っているので、何を意図して発信しているのかを見極めて、必ずしも額面どおりに受け取らない慎重さも大切」
今回のツイッターが反響を呼んだことについて、河野大臣は投稿の4日後、記者団から問われた際、「訪中した際にツイートしたことが、けさになって多くの新聞に同じように取り上げられたというのを少し奇異に感じている。今、これだけ国際情勢が揺れている中で、紙面を割かなければいけないところはほかにもたくさんあると思う」と述べました。
反響が予想した以上だったのかもしれません。私自身、思った以上でした。

数年前から、私たちメディアは、ブログやツイッターなどSNSでつぶやく政治家の言葉を、公での発言として記事にするようになりました。中には、記者の取材を受けるより、SNSでの発信を優先するようなケースもあります。

今回の河野大臣のツイッターは、発言ではなく一枚の写真でしたが、見た人それぞれが、表の外交舞台では見ることができない何かを感じ取ったのだと思います。

私も、日々発信される政治家のSNSの投稿にどんな意図があり、またどんな影響を及ぼすのかをより意識して、取材しなければならないと改めて感じました。