知られざる神社の台所事情

知られざる神社の台所事情
新年を迎えて神社に初詣をした人もいると思いますが、多くの神社が経済的に苦しい状況に立たされていることを知っていますか? 地域の氏子が減って収入も落ち込み、都市部では資金を確保するため敷地にマンションが建つ神社も相次いでいます。知られざる神社の台所事情を取材しました。(ネットワーク報道部記者 飯田暁子 宮脇麻樹 田辺幹夫)
神社の鳥居がまるでミニチュアに見えてしまう高層マンション。
これは、神戸市にある神社の境内に建築されるマンションの完成予想図です。

マンションは地上19階建てで1階から2階には社務所が入る予定です。神社から借りた敷地の一角に建設し、70年後には更地に戻して神社に土地を返す契約です。オフィスビルの中にたたずむこの神社は平安時代に創建された歴史ある神社ですが、なぜ敷地を貸すことになったのでしょうか。

宮司によりますと、平成7年の阪神・淡路大震災で神社の本殿や社務所はひび割れなどの被害が出て、大規模な立て替えが必要になりました。

しかし、周囲はオフィス街で氏子が少ない上、古くからの氏子の中には震災を機に地域を離れる人もいて、費用を確保するメドが立たずにいました。そこで、境内の一画をマンション用地として貸し、その資金で新たな本殿を建てることを決めました。

氏子たちから反対の声はなく、神社本庁の了承を得たうえで、2月から今の本殿を解体する工事が始まるということです。新しい本殿はことし10月に、マンションは2・3年後に完成する予定だということです。

「神社を守り続けることを考えての決断です。70年後には戻ってくる土地を有効活用できるよう、地域の人たちをつなぐコミュニティ作りなど地域の活性化に取り組んでいきたい」(神社の宮司)

敷地にマンション 次々と…

神社の鳥居がまるでミニチュアに見えてしまう高層マンション。
これは、神戸市にある神社の境内に建築されるマンションの完成予想図です。

マンションは地上19階建てで1階から2階には社務所が入る予定です。神社から借りた敷地の一角に建設し、70年後には更地に戻して神社に土地を返す契約です。オフィスビルの中にたたずむこの神社は平安時代に創建された歴史ある神社ですが、なぜ敷地を貸すことになったのでしょうか。

宮司によりますと、平成7年の阪神・淡路大震災で神社の本殿や社務所はひび割れなどの被害が出て、大規模な立て替えが必要になりました。

しかし、周囲はオフィス街で氏子が少ない上、古くからの氏子の中には震災を機に地域を離れる人もいて、費用を確保するメドが立たずにいました。そこで、境内の一画をマンション用地として貸し、その資金で新たな本殿を建てることを決めました。

氏子たちから反対の声はなく、神社本庁の了承を得たうえで、2月から今の本殿を解体する工事が始まるということです。新しい本殿はことし10月に、マンションは2・3年後に完成する予定だということです。

「神社を守り続けることを考えての決断です。70年後には戻ってくる土地を有効活用できるよう、地域の人たちをつなぐコミュニティ作りなど地域の活性化に取り組んでいきたい」(神社の宮司)
このほかにも、都市部の神社ではマンション建設の動きが相次いでいます。東京都内でも複数の神社でマンションが建てられているほか、京都市にある世界遺産の下鴨神社の敷地の一部にも去年5月、マンションが完成しました。
この借地料の収入で下鴨神社は社殿などを21年ごとに修復する「式年遷宮」の費用に充てることにしています。

厳しい運営の実態

マンション建設が相次ぐ背景には、各地の神社の厳しい運営の実態があります。

神社本庁が3年前、およそ6000の全国の神社に行ったアンケートによりますと、年間の収入が1億円以上の神社はわずか2%だった一方、300万円未満と答えた神社はおよそ6割にのぼっています。

神社の運営の現状について、国学院大学神道文化学部の藤本頼生准教授は「高齢化や人口減少で氏子の数が減り、地方を中心に収入の確保が難しくなっている。経営が立ちゆかなくなる神社が相次ぎ、この10年で神社の数はおよそ300減っている。多くの神社は危機的な状況に立たされている」と指摘します。
藤本准教授によりますと、地方の神社の中には氏子が数世帯にまで減って建物の建て替えがままならないところがあるほか、神職のなり手が見つからず、1人の神職がおよそ100の神社を受け持つケースもあるということです。

「神社が存続していくためには住民や自治体と地域の活性化に取り組んだり、地域の外に引っ越した人とも接点を持ったりと、氏子との新しい関係作りに取り組む必要がある」(藤本准教授)

工夫で経営難を脱却

氏子の減少などで苦境に陥る全国の神社は、さまざまなアイデアと工夫で生き残りを模索しています。

東京 浅草にある今戸神社は平安時代からの由緒ある神社ですが、昭和の先代のころは、駐車場収入でなんとか成り立っていたということです。お守りなどの授与品で得られる1ヶ月の収入はわずか2千円という時期もありました。
宮司の妻の市野惠子さんは「お寺のように葬儀や戒名などの大きな収入源が神社にはない。祈祷料は5千円程度ですし、お賽銭だけだと1日何十円という日もありました。このままではダメだと危機感を感じていました」といいます。

そこで着目したのが、縁結びの神様をまつっていることと招き猫の発祥の地といわれていることです。

さっそく、丸い形に招き猫を2体並べた絵馬を作ると、これがヒット。
落ち着いた色ばかりだったお守りもカラフルなものに変えると、口コミで参拝客が増え、かつてはないに等しかった授与品の収入が経営を支えるようになったといいます。

「合コン」の企画も

さらに注目を集めたのが、10年前から始めた「縁結び会」、いわゆる合コンです。

縁結びの神社として、幸せになる人が増えるようにと、市野さんが発案しました。男女18人ずつが集まり、祈祷を受けた後に全員とおしゃべりします。自称「おせっかいおばさん」だという市野さんが、服装やメールの送り方なども個別にアドバイスします。

その成果もあってか、これまでにおよそ8000人が登録し、100組が成婚しました。すると、結婚式に出た親族がお礼参りに来たり、神社からのビデオメッセージが式場に流れると、それを見た参加者が参拝に来たりと、参拝客が増えていったのです。

いまでは日本だけでなく、香港や台湾からの外国人観光客も多くなったといいます。

仮に、現在の社殿を建て替える必要が出た場合、氏子の寄付に頼らずに自力で行うことができるようになったといいます。

「ほかの神社で、本当に生活が苦しいという話をよく聞きます。いまの時代、氏子さんの寄付に頼るのは難しいので、広域から参拝に来て頂くためにそれぞれの神社が個性を生かして取り組む必要があると思います」(市野さん)

ネットを生かして資金調達

奈良県御所市の山あいにある「葛木御歳神社」は、ネットを生かして地元以外からの参拝者を増やしています。

1000年以上の歴史を持つ神社として地域の人から支えられてきましたが、高齢化と人口減少の影響でおよそ100軒ある氏子からの収入も減り、祈とう料や玉串料をあわせた収入は年間で50万円。これだけでは神社を維持することができません。
そこで、宮司の東川優子さんが3年前に行ったのが、インターネットで資金を集める、クラウドファンディングです。敷地内にある建物を改装してカフェにすれば、地域の人が集うサロンになると同時に、その売り上げで神社を存続できないかと提案したところ目標の100万円が集まりました。
その年にオープンしたカフェでは手作りのスイーツを提供するほか音楽のライブや、舞いなどのイベントを企画し、その都度、ブログで発信。敷地に足を運んでもらい神社の魅力を知ってもらう取り組みを続けた結果、地域の人たち以外にも評判が広がってファンが増え、いまではおよそ7割の人が地元以外の参拝者ということです。
中には、悩み事を聞いてもらおうと、車で1時間以上かけて訪れる人もいるということです。
「神社を続けていくのはとても厳しい状況ですが、いまでは地域の人に加え、遠くから来る人たちにも支えられています。参拝してくれた人が心が洗われたと感じてもらえる神社を目指して、歴史ある神社がこれからあと1000年、続けていくためは、どうすればいいか、考え続けています」(宮司の東川さん)

神聖な場所として長年地域に親しまれてきた神社は、いまや「神頼み」でなく生き残り策を必死に考えているようです。

もし、これから神社にお参りに行く場合、神社の現状に思いをはせながらおさい銭を入れてみてはいかがでしょうか。