ふるさと納税に新ムーブメント

ふるさと納税に新ムーブメント
霜降り牛肉にカニ、地酒。豪華な返礼品が目を引く、ふるさと納税が人気を集めています。年末を控えて「どこにふるさと納税をしようか?」と思いを巡らせている方も多いかも知れません。自治体間の返礼品競争の過熱が何かと騒がれている、ふるさと納税。いま、そんな姿とはちょっと違った、新たなムーブメントが起こり始めています。(鹿児島局 阿部有起 ネットワーク報道部 野田綾 後藤岳彦)
「お気に入り登録をお願いします」。今月、ふるさと納税を巡る競争の過熱を象徴するような問題が明らかになりました。

鹿児島県志布志市は、インターネットで自治体の返礼品の紹介などを行うポータルサイトの閲覧数を増やそうと、職員に閲覧を呼びかけていたことが分かりました。

“作られた”殿堂入り

「お気に入り登録をお願いします」。今月、ふるさと納税を巡る競争の過熱を象徴するような問題が明らかになりました。

鹿児島県志布志市は、インターネットで自治体の返礼品の紹介などを行うポータルサイトの閲覧数を増やそうと、職員に閲覧を呼びかけていたことが分かりました。
志布志市によりますと、去年からふるさと納税の返礼品を紹介するインターネットのポータルサイト「ふるさとチョイス」で市のページを閲覧するよう朝礼で職員に呼びかけていたということです。

志布志市のふるさと納税の返礼品のうなぎや牛肉について「1日ごとに削除と登録を繰り返して下さい」などと職員に要請していました。

「ふるさとチョイス」のサイトでは全国の自治体の返礼品の紹介や寄付の申し込みのほか、自治体ごとの閲覧数や人気がある返礼品のランキングも表示されます。

ランキングが高くなれば、それだけ寄付をしたいという人たちの目に触れるので、寄付も集まりやすくなるのではないかという狙いです。

サイトでは、志布志市は月間の閲覧数が去年5月から3か月連続で全国1位になり、3回1位になると選ばれる「殿堂入り」を果たしていますが、市は職員への呼びかけが閲覧数の増加につながったかは分からないとしています。
志布志市では昨年度、ふるさと納税によって鹿児島県の自治体で最も多い22億5300万円の寄付を集め、全国でも18番目に多い寄付額となりました。

志布志市は、「活性化に向けて職員一丸となって盛り上げ、露出を増やすためだった。寄付する人を欺くようなことはしていないが誤解を与えてしまいおわびしたい」として、職員に呼びかけてアクセスをすることをやめました。

「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクは「意図的に操作された情報は寄付者の皆さんに伝えたい情報ではない。今後、自治体に対して注意を喚起する」としていますが、今月22日現在、志布志市はサイト上の「殿堂入り」に入ったままとなっています。

なぜ過熱?ふるさと納税

「ふるさと納税」は、生まれ育った地域や応援したい自治体に寄付をすると住民税などから一定額が控除される制度で、昨年度、全国の自治体に寄付された総額は2844億円余りと4年連続で過去最高を更新しました。

ことし9月、事業構想大学院大学がふるさと納税に関するインターネット調査を行いました。ふるさと納税による寄付をした人で今後も寄付したいと思っている人を対象に、返礼品の種類について、「肉・魚」「米」「観光・旅行」「雑貨」「工芸」の5つの品目別に、寄付額に対する自治体による調達価格の割合を20%、30%、40%、50%の4段階に分け、どれだけ寄付の意向が高まるのか調査しました。

それによりますと、調達価格が30%になった場合、「寄付をしたい」と答えた人の割合は、20%の返礼率と比べて、最大でおよそ2倍に増加。調達価格が40%に上がると、寄付をしたいという人の割合は品目によってはおよそ4倍にまで増えています。

さらに50%まで上がると、寄付をしたい人の割合は最も高い品目でおよそ7倍にまで増えており、高額な返礼品ほど、寄付が多く集まりやすい傾向が浮き彫りになりました。

調査を行った事業構想大学院大学の担当者は「調達価格が高いほど、寄付は集まる傾向にあるが、それでは寄付金税制をゆがめることになりかねない」と話しています。

高額な返礼品は必要か?

返礼品を巡る自治体間の競争の過熱に歯止めをかけようと、総務省はことし4月、全国の自治体に向けて通知を出しました。

返礼品の調達価格を寄付額の3割以下に抑えることや商品券やプリペイドカードなど換金性の高いものを返礼品としないことなどを求める内容でした。
これを受けて多くの自治体が返礼品の見直しを行いました。その影響は即座に自治体に現れ始めています。これまで全国1位の寄付を集めてきた宮崎県都城市。

ことし6月に返礼品の調達価格をこれまでの6割から3割に見直しました。その結果、6月から8月の寄付額は、去年の同じ時期より60%減少。

また、長野県伊那市も調達価格の割合を下げたり、人気の家電製品などを返礼品から除いたりしたところ、4月から9月までの寄付額は、去年の同じ時期に比べて、70%も減りました。

やはり、ふるさと納税を集めるには、高価な返礼品が欠かせないのでしょうか?

そんな中、返礼品ではなく、自治体の「取り組み」を応援しようというふるさと納税が静かに広がっています。キーワードはインターネットを通じて資金を集める「クラウドファンディング」です。

「モノ」ではなく

今月20日、東京・有楽町で7つの自治体がブースを設けて、ふるさと納税による寄付を呼びかけました。

各自治体がPRしたのは「返礼品」ではなく、地域が抱える課題です。佐賀県はNPOなどと協力して、一人親や貧しい家庭の子どもに食事を提供したり、勉強を教えたりする居場所作りのための寄付を呼びかけました。

また、山形県長井市は、日本最大級の木造校舎を保存・活用するプロジェクトに対する寄付を呼びかけました。いずれもクラウドファンディングの仕組みを使ったふるさと納税で、地域の課題を解決するための寄付を呼びかけたのです。

ふるさと納税をして返礼品をもらっても、寄付した資金を自治体が何に使うのか分からないケースは珍しくありません。

しかし、クラウドファンディングを使ったふるさと納税は、あらかじめ何に使うかを示して、寄付を募っているので、支援の目的は明確になります。

今回のイベントに訪れた人からは「モノをもらうと何のために支援したか目的意識が薄れてしまう面もあるので、目的を明確にして寄付できる仕組みはいいと思うし、友達にも声をかけやすい」などと好意的な声が聞かれました。

自治体の関係者は、「ふるさと納税の寄付者の半数以上が首都圏の人なので、地域の課題を知ってもらったうえで寄付をしていただきたい」と話していました。

こうしたクラウドファンディングを活用したふるさと納税に、多くの寄付が集まっているケースも出ていて、東京・文京区では、ことし7月、ふるさと納税の寄付金を活用して、経済的に厳しい家庭の子どもたちに食品を届ける取り組みに協力を呼びかけたところ、これまでに目標寄付額のおよそ2倍の3980万円が集まりました。

ふるさと応援の趣旨を大切に

ふるさと納税の本来の意義は地域を応援したい、元気にしたいということです。地域特産の旬の返礼品はもちろん楽しみですが、それだけが目的になっては、物足りないような気もします。

返礼品を巡る競争の過熱から、自治体もそのことに気付き始め、動き始めています。ふるさと納税が始まって10年。

「自治体の未来を応援する」。返礼品は来ないけど、地方の未来を思い描きながら寄付する、そんなふるさと納税も選択肢にあってもいいのかもしれません。