さよならモンキー 思い出とともに

さよならモンキー 思い出とともに
今月1日、ネット上にバイクファンの悲鳴が飛び交いました。若者を魅了し続けてきた“名車”が一斉に生産終了と告げられたのです。小型バイクの代名詞とも言われたあのロングセラーも製造が打ち切られました。私にとっても思い出のバイクでした。根強い人気を誇ったバイクがなぜ時代にあらがえなかったのか、転換期を迎えたバイクについて、考えてみます。(ネットワーク報道部記者 飯田耕太)
今月1日午前6時51分、大手バイクメーカー、ヤマハ発動機が発信したツイッターです。

「本日は、ヤマハバイク生産終了のお知らせを多数しました。欲しくてたまらなくなった方は在庫を販売店にお問合せのうえお早めにお買い求めくださいm(__)m」

クラシックなフォルムで30年以上人気を誇る「SR400」、アメリカンタイプで重厚感のある「ドラッグスター」。ヤマハが生産終了を発表したのは9車種に上りました。

突然の発表

今月1日午前6時51分、大手バイクメーカー、ヤマハ発動機が発信したツイッターです。

「本日は、ヤマハバイク生産終了のお知らせを多数しました。欲しくてたまらなくなった方は在庫を販売店にお問合せのうえお早めにお買い求めくださいm(__)m」

クラシックなフォルムで30年以上人気を誇る「SR400」、アメリカンタイプで重厚感のある「ドラッグスター」。ヤマハが生産終了を発表したのは9車種に上りました。
突然の発表、とたんにネット上にバイクファンの声が次々と上がりました。「実に哀しい」
「えええぇぇええ??本気ですかヤマハさん??Σ(・□・;)」
「時代ですかねぇ」

あの名車も

ヤマハだけではありません。ホンダは半世紀前(昭和42年)に販売を始めた50CCの名車、モンキーの生産を先月で打ち切りました。

私も大学生の時、弟が買ったモンキーに乗りました。子どもの自転車のように低い車体。小さなタイヤ。道路を走るとある種のスリルや楽しさを感じました。

今回の生産終了はこのほか、カワサキが5車種、スズキが13車種に上ります。私が調べたところでは、各メーカーとも2割から3割ほどの車種がなくなるようです。

背景は排ガス規制

生産終了の背景にあるのは「排ガス規制」。一酸化炭素などの排出量をヨーロッパの基準に合わせて大幅に抑えるものです。生産を続けるには先月末までにこの基準を満たす必要があり、対応できないバイクは販売できなくなったのです。

バイク離れも

さらに追い打ちをかけているのが、若者を中心とした「バイク離れ」です。去年、国内の販売台数は37万台余り。ピークだった1982年の327万台から減少傾向が止まりません。特にモンキーのような50CC以下のバイクはピーク時の6%以下です。

ホンダの担当者は「需要が先細る50CCは開発コストが見合わず、気軽に乗れる価格帯でモンキーを作ることも難しくなった。生産終了はやむをえなかった」と話していました。

もともとは遊具

今回の生産終了で最も話題となったのは、やはりモンキーでした。
もともとは今はなき東京の遊園地「多摩テック」の遊具としてデビューし、その時の人気の高さもあって公道も走れるバイクになったという物語性。
50CCの中でも特に小さいサイズの中に、バイクの持つ機能をぎゅっと詰め込んだユニークな姿。
ハンドルやマフラーなどのパーツが豊富で、自分好みの個性が出しやすい造り。ファンになったらその心を離さないバイクでした。

愛してやまない

バイクショップを経営する岡田佳久さんもモンキー大ファンの1人です。店で扱うのは初代の1967年から75年までの初期型のモンキー。個性的なモンキーを集めては店頭に並べています。こだわりの1台はアメリカでのみ販売されていたビンテージもの。逆輸入して、エンジンなどを積み替え、国内で走行できるようにしました。岡田さんは「世界に1台だけの自分のモンキーを作って街中を走ると、ユニークな姿を見て振り向く人もいます。自分にとっては単なる乗り物ではなく、愛してやまない存在です」と話します。モンキー仲間とツーリングに行ったり、撮影会を開いたりしてきました。1人でも大勢でも楽しめる、数少ないバイクだと言います。
「モンキーのおかげで、かけがえのない仲間にも出会えた。なぜモンキーが…と思うととても悲しい」と生産の打ち切りについて語ってくれました。

ライバルどうしも手を組む動きも

もっともバイクは寂しい話ばかりではありません。激しい販売競争を繰り広げてきたヤマハとホンダがタッグを組んで、50CCの業務用などのバイクの生産や開発で提携する検討を始めました。
さらに両社はニーズを掘り起こそうと、環境に配慮した電動バイクをさいたま市で30人に貸し出し使い勝手などを確かめる実証実験を今月から始めました。
バイクメーカー各社はこうした取り組みによって、2020年の国内販売台数を今の3倍ほどの100万台まで回復させたいとしています。

モンキーだから世界が変わった

3歳年下の私の弟は生まれつきの骨の病気で体が小さく、歩いての移動やバスに乗り降りする時の段差が大変だったことがあります。その世界を変えたのもモンキーでした。高校生の時、アルバイトでためたお金でモンキーを買いました。低い車体をさらに低く改良し、自分が乗れるようにするのと合わせて40万円かかりました。
おかげで行動範囲が格段に広がり、友人とあちこちに出かけられるようになりました。弟は当時買ったモンキーを10年以上たった今も大事に乗り続けています。

バイクって

バイクを生産するのに環境への配慮や商業的な採算性はもちろん必要でこれからはそうした方向に舵が切られ、車種も限られていくのかもしれません。
ただ、バイクは本来、嗜好(しこう)性の高い乗り物です。街中を走る開放感だけでなく手間をかけて乗りやすくしたり自分の好きなバイクをさらに自分好みの姿にして愛着を深めたりしていく魅力があります。これからもそうした魅力を失わないバイクが生み出され続けることを、願っています。