東京電力 福島第一原発事故 関連ニュース

3月10日のニュース

震災1年 原発の安全対策現状は

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、全国の原発の安全対策がどこまで進んでいるのか調べたところ、複数の電源を確保する多重化や、津波による浸水対策などは進んでいる一方で、国が特に重要視している非常用のバッテリーを長時間もつよう強化する対策は、すべての原発で検討中となっていて、進んでいないことがNHKのまとめで分かりました。
福島第一原発の事故から11日で1年になるのを前に、NHKは、先月、原子力安全・保安院が事故を教訓にまとめた安全強化策が現時点でどこまでできているのか、電力各社に聞きました。
非常用の電源の確保や、冷却機能の維持、それに水素爆発の防止策など30項目のうち、特に国が重要だとした12項目を中心に尋ね、すべての電力会社から回答がありました。
それによりますと、外部電源が失われても冷却装置を動かすことができる電源の多重化については、非常用の発電機を水で冷やすタイプ以外に空冷式を設置したり、複数の電源車を用意したりするなど、すべての原発で実施しているとしています。
また、電気設備が津波で浸水しないよう、建物の扉の防水化もすべての原発で実施済みか、工事中となっています。
一方で、福島第一原発の事故で問題になったすべての電源が同時に失われるリスクを減らすため、電気設備を分散する対策については、電気の供給にとって重要な配電盤の分散は、設置場所の確保や、工事に時間がかかることなどを理由に多くの原発ですぐには難しいとしています。
さらに、国が特に重要視している、冷却装置や原子炉の監視に必要な計器類を動かすための非常用のバッテリーを長時間もたせる対策についても、すべての原発で検討中となっています。
非常用のバッテリーは、ほかの電源がすべて機能を失った場合に最後のとりでとなるもので、福島第一原発の事故では、このバッテリーも失われ、事故の進展を防ぐことができませんでした。
30項目の安全強化策は、原子力安全・保安院が今後の安全規制に反映すべきものと位置づけていて、運転再開の判断にあたって自治体側が求めている新たな安全基準を作るプロセスの1つだとしています。
しかし、これらの対策をいつまでにどのように実施するのか、具体的な扱いは示されていません。
これについて、九州大学の工藤和彦特任教授は「緊急安全対策などこれまでもいろいろな対策が打ち出されているが、何をもって原発が安全と言えるのか、しっかりとした基準が示されていない。このままでは国民も電力会社も戸惑うだけで、国は運転再開までに絶対に実施されなければならない対策と、再開してからでもよいものを具体的に示すべきだ」と話しています。

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