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2月20日のニュース

東電福島第一原発 事故現場を公開

  • 汚染水貯蔵タンク
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東京電力福島第一原子力発電所で、政府が原子炉の冷温停止状態を宣言してから初めて、事故現場が報道関係者に公開されました。
福島第一原発の事故現場の公開は、去年11月に次いで2回目で、今月6日から国の原子力安全・保安院が行っている保安検査の視察に合わせて行われました。
被ばくの観点から今回も基本はバスの中からの公開で、1号機から4号機の海側を中心に汚染水を処理する施設などを1時間余りかけて見て回りました。
福島第一原発では、先月から今月にかけて津波対策で高台に設置された原子炉に注水するためのポンプや配管などで、合わせて43件の水漏れが起きています。
水漏れの現場では、トラックに積んだ原子炉の注水ポンプをシートで囲ったり、配管に断熱材を巻きつけたりする凍結対策を行うなどしていて、急場で設置した設備の保守管理の難しさを示していました。
また、今回は4号機の南側の高台で、初めてバスから降りることが認められ、実際に敷地に降り立って水素爆発で壊れた建屋の様子などを確認しました。
この付近の放射線量は、1時間当たり50マイクロシーベルトで、1日で一般の人が1年間に浴びても差し支えないとされる被ばく限度の1ミリシーベルトを超えます。
近くでは、防護服に身を包んだ作業員が放射性廃棄物を貯蔵する新たな施設を作るための準備作業を行っていて、被ばくと闘いながらの厳しい現場であることを改めて実感させられました。
病気で退任した吉田昌郎前所長に替わり、去年12月から陣頭指揮を取っている高橋毅所長が、対策本部がある免震重要棟で初めてインタビューに応じ、「まもなく1年になるが、社会が安心して見ていられるようプラントを維持管理するのが責務だ。いちばん重要なのは、放射性物質を多く含んだものを外に決して出さないことで、しっかり実現していく」と話しました。

【現場公開のルートは】
今回の現場公開のルートです。
防護服に着替えた報道関係者はバスに分乗し、福島第一原発の正門から入り、まず、国の原子力安全・保安院が行っている保安検査の様子を見るため、現地対策本部がある免震重要棟に向かいました。
その後、再びバスに乗り込み、最初に1号機の北側にある高台で10分ほど停車。
津波対策で高台に設置された1号機から3号機の原子炉に注水するポンプや、水漏れが相次いだ注水用の配管を見て回りました。
そして海側に向かい、1号機から4号機の順に右手にタービン建屋を見ながら進みました。
この辺りの放射線量は今も非常に高く、3号機のタービン建屋の海側で最も高い1時間当たり1500マイクロシーベルトに達し、バスは止まらずに走り続けました。
このあと汚染水を処理する水処理施設の間を通りながら、1号機から4号機を一望できる、4号機から南に300メートルほど離れた高台に向かいました。
バスからだけの公開だった前回とは違い、今回は、ここでバスを初めて降りることができ、15分ほど実際に敷地に降り立って事故現場を見ました。
最後にバスは、去年12月に建物から汚染水が漏れ出し、海に流出することになった水処理施設の近くを通り、施設の回りに流出を防ぐ土のうを積んだ様子や、汚染水をためる大量のタンクの設置状況を確認しおよそ70分の公開を終えました。

【“冷温停止状態”課題は】
福島第一原発では、政府が冷温停止状態を宣言したあとも、原子炉の状態を監視するための重要な温度計の故障や、配管からの水漏れなどトラブルが相次いでいて、原子炉の内部の状態を十分に把握できていないなか、信頼性の高い監視態勢をどう構築し、急場で作った設備をいかに保守管理していくか、課題となっています。
福島第一原発では、先月下旬から2号機の原子炉の底にある温度計の1つの値が上昇し、東京電力は当初、原子炉を冷やす水の流れが変わり、温度が上がったとみていましたが、その後の調査で故障と判断されました。
この温度計は、保安規定で原子炉の冷温停止状態を判断する指標の1つでしたが、結果として2週間近く原因が分からない状態が続き、メルトダウンした原子炉の中の状態を把握できていないことの怖さを改めて浮き彫りにしました。
故障の原因も、高い湿度や、原子炉に注入した海水に含まれる塩分による劣化とみられ、今後、ほかの温度計も故障するおそれがあり、原子炉の状態を把握する信頼性の高い監視態勢の構築が課題となっています。
また、事故のあと緊急的に作った、原子炉の注水や汚染水の処理に使うポンプや配管などから水漏れが相次ぎ、政府が冷温停止状態を宣言してからの2か月間で43件に上っています。
原因の1つの凍結は事前に想定されていましたが、漏れた箇所は、対策が間に合わなかったり不十分だったりしていました。
このほか、とがった植物の芽がホースに突き刺さり水漏れが起きるという、東京電力の予想を超える事態も起きています。
福島第一原発では、今後、廃炉まで40年はかかるとみられています。
急場で作った設備をいかに保守管理していくかも課題となっています。

【作業員の健康確保は】
福島第一原発では、今も一日におよそ3000人の作業員が、原子炉の冷却や汚染水の処理、それにがれきの撤去などの作業に当たっています。
これらの作業員は、事故直後は、緊急時として最大250ミリシーベルトまで被ばくが認められていましたが、現在は、一部の東京電力の社員を除き、限度が引き下げられて最大で100ミリシーベルトとなっています。
東京電力によりますと、去年12月末までに100ミリシーベルトを超えた人は167人、864人が50ミリシーベルトを上回っているということです。
作業を請け負っている業者の中には、独自に基準を決めて、数十ミリシーベルトを超えると事故現場での作業を見送るところもあり、働けなくなる作業員が出始めています。
3号機周辺のがれきの撤去作業で現場監督をしている鹿島建設の日々康生さん(48)は、「作業員が極力、被ばくしないように綿密に作業計画を作るとともに、その後の作業員の確保にも気をつけています」と話していました。
また、現場ではこれまでに心筋梗塞や急性白血病などで4人の作業員が死亡していますが、東京電力は、いずれも作業との関係はないとしています。
しかし、専門家からは、目に見えない放射線や放射性物質を扱う作業だけに、現場は不安やストレスがたまりやすいという指摘もあります。
今後、40年は続くとされる廃炉作業に向けて、作業員の確保や、精神面のサポートを含めた健康管理も課題となっています。

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