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6月16日のニュース

水野解説委員 「汚染水処理の課題」

  • 汚染水貯蔵タンク

東京電力福島第一原子力発電所では、汚染水の対策の鍵となる浄化設備で、試運転の最終段階の設備全体での試験が行われています。
試運転は17日にかけて続き、問題がなければ、本格的に稼働が始まることになります。
福島第一原発では、高濃度の汚染水を処理する浄化装置で、試運転の最終段階となる4つの装置を組み合わせた設備全体の試験が16日午前0時すぎから行われています。
福島第一原発では、原子炉に注入した水が高濃度の汚染水となってすでに11万トン以上たまり、さらに一日に500トンのペースで増え続けているとみられることから、浄化設備の稼働が汚染水の対策の鍵となります。
これまで装置ごとの試運転で比較的低い濃度の汚染水を処理した結果、フランス製の装置で放射性のセシウムの濃度が1万分の1程度に下がったほか、アメリカ製の装置でもおよそ3000分の1に減ったということです。
アメリカ製の装置では、1台のポンプで水がにじみ出ているのが見つかり、予備のポンプに切り替えて試運転を続けているということです。

汚染水は、主な移送先となってきた施設が16日にいっぱいになって使えなくなるなど対応の限界が迫っていて、東京電力は、浄化設備で放射性物質の濃度を1000分の1から1万分の1程度に下げたうえで、仮設のタンクにためる計画です。
試運転は17日にかけて続き、問題がなければ、高濃度の汚染水を処理する本格的な稼働が始まります。
水野解説委員に聞きます。

Q:これまで試運転は比較的順調にいったようですが、17日からの本格運転は大丈夫なのでしょうか?
A:これはやってみなければ分りません。
というのも試運転は低レベルの汚染水で行われました。
しかし、17日から処理するのは、その1万倍の濃度の高レベルの汚染水です。
一般的に濃度が高くなると放射線が強くなり、発熱もあって扱いはやっかいになります。
もしも予定どおり濃度が下がらない場合は、もう1回システムに通すことが考えられます。

それでもだめなら、もう1回処理を繰り返すことで濃度が下がることが期待されます。
しかし、その場合も問題があります。
処理量が減ってしまうことです。
東京電力は汚染水があふれないようにするためには一日1200トンの処理が必要だとしています。
しかし2回通せば一日の処理量は半分の600トンになってしまい、そうした状況が続くようだと問題です。
東電はセシウムを吸着する別のシステムや高レベル汚染水専用のタンクも用意する方針で、こちらも急いで準備しておく必要があります。

Q:トラブルがあった場合はどう対応するのでしょうか?
A:このシステムからは強い放射線が出るので、ふだんはカメラを使って遠隔で監視しています。
しかし、配管からの汚染水が漏れるなどのトラブルが想定されていて、その場合は修理のために作業員が現場に行かなければなりません。
その場合、注意しなければならないのは作業員の被ばくです。
今週、許容限度の250ミリシーベルトを超える大量の被ばくをした可能性のある作業員が新たに6人増えて8人となりました。
マスクなどの装備をきちんとしていなかったため、体の中に放射性物質を取り込んだとみられていますので、トラブルの際には作業員の装備などをきちんとチェックするなど万全の体制で対応する必要があります。
Q:汚染水から除去した放射性物質は、最終的にどう処理するのでしょうか?
A:最終的に残るのは泥のようなもので、極めて高レベルの放射性廃棄物です。
年末までに2000立方メートル、ドラム缶にすると1万本分が出る見込みです。
今まで扱ったことがない廃棄物なので、法律もなく、処理方法は全く決まっていません。
似たような高レベルの放射性廃棄物としては、青森県六カ所村の使用済み核燃料の再処理工場でウランやプルトニウムを取り出したあとに残る廃液があります。
液体のままでは漏れる危険があるので、ガラスで固めて最終的には地下深くに埋めて処分することになっています。

今回のはこの廃液ほど濃度は高くないものの、やはり同じように何らかの方法で固めて最終的には地下のような人が近づけないような場所に処分する必要があります。
そのためにもどうやって固めるのか、どこに処分すれば安全か。
研究開発を行って処理方法について早急に決める必要があります。

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