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なぜ今テレビ?アイリスオーヤマの戦略

突然ですが、「アイリスオーヤマ」という会社の名前を聞いて、皆さんはどんな商品を思い浮かべますか?プラスチック製の収納用品、炊飯器や掃除機といった白物家電、年間1000種類もの新商品を開発し、世に送り出しています。そのアイリスオーヤマが新たに生産に乗り出したのが、テレビです。大手メーカーが相次いで生産から撤退するなか、なぜ今テレビなのでしょうか。
(仙台放送局記者 藤井美沙紀)

65インチが15万円以下

11月22日、アイリスオーヤマは、4K・8Kの本放送が始まるのを前に、テレビの販売を始めました。

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テレビを置くのは、主にホームセンターに設けられた売り場です。価格は65インチの4K対応テレビが14万8000円(税抜き)。43インチは7万9800円です。中国の工場でまず3万台を生産。試験的に販売して消費者のニーズを把握したうえで、本格的に生産を始める計画です。

どうやって価格を下げるのか

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他社の製品に比べて価格の水準はどうなのか、家電量販店のホームページで調べてみました。すると、私が調べた量販店では、ソニーやパナソニックなどの65インチの4K対応テレビはおよそ25万円でした。アイリスオーヤマのテレビと10万円違います。なぜ、この価格を実現できたのでしょうか。

そこには、ものづくりにあたって会社が重視する「引き算の哲学」という考え方があります。アイリスオーヤマは、あらゆる製品を開発する際、どんな製品を作るかではなく、価格をいくらにするかから決めます。その価格を実現するため、「あれば便利だけど無くてもなんとかなる機能」は、あえて省きます。

テレビの場合、映像の美しさにはこだわりました。その一方、インターネットへの接続や番組を録画するためのハードディスクなどは、消費者が最優先に求める機能でないと省きました。こうして美しい画像と低価格を両立させたのです。

転職組の技術を結集

テレビの生産に乗り出すため、技術力も着々と整えてきました。大手電機メーカーを早期退職するなどした技術者を大量に採用し、彼らの技術をテレビの開発にいかしているのです。

そのための拠点として、5年前、大阪に研究開発の拠点も作りました。大阪と言えば、パナソニックやシャープなどの本拠地。転職者を集めやすいと考えたのです。

11月には、3か所目となる研究開発の拠点を東京に設けました。首都圏の大手メーカーからも大量に転職組を採用し、最新の家電製品の開発を強化することにしています。

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東京の研究開発拠点

なぜ今 テレビなのか

かつては「メイド イン ジャパン」の代名詞だった日本のテレビ。しかし、韓国や中国のメーカーとの競争で苦戦を強いられ、日本の名だたるメーカーが、生産からの撤退や事業の縮小を余儀なくされてきました。

こうした中、なぜ今、アイリスオーヤマはテレビの生産に踏み切ったのでしょうか。

家電エコポイント制度のもと、テレビの販売が伸びたのが2010年。それから10年後の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、テレビの買い換えが進むのではないか、という「見立て」が一つ目の理由です。

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さらに、ホームセンターに商品を供給するアイリスオーヤマならではの理由もあります。お客の目を引くテレビをホームセンターに置くことで、テレビ目当ての客を増やせれば、それにつられて白物家電や生活用品などの売り上げも伸びると踏んだのです。

テレビの先に見据えるものは

テレビの生産を皮切りに、総合家電メーカーに名乗りを上げようとするアイリスオーヤマが次に見据えるものは何か。ことし7月に就任した大山晃弘社長を直撃しました。

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大山晃弘社長

大山社長は「テレビは非常に魅力的な、客を引き寄せるマグネットのような商品になる。今後はテレビ周辺の商品も考えていきたい」と話していました。

「テレビ周辺」の商品が何かは明らかにしませんでしたが、すでに複数の商品を開発中だということです。

会社のグループ全体の売り上げは、昨年末で4200億円ですが、2022年までに2倍以上の1兆円に拡大する目標を掲げています。どうやって実現させるのか聞いたところ、大山社長は、「家電の販売は家電量販店が中心だったが、今はネット通販もあるし、ホームセンターも力を入れている。市場が大きく変化しているので、うまくとらえれば商機はあるのではないか」と話していました。

家電製品のラインアップを増やすことで、ホームセンターの集客力を高め、家電以外の商品の売り上げも伸ばす、人々の消費行動の変化をとらえた巧みな戦略が、そこにはありました。

藤井 美沙紀
仙台放送局記者
藤井 美沙紀
平成21年入局
秋田局、金沢局をへて
現在は科学・経済を担当