ニュース画像

ビジネス
特集
ネットに漂う個人情報 自分で管理したいですか?

「情報銀行」というサービスをご存じでしょうか。「情報銀行」は“銀行”と名前に入っているように、“情報”を集めて、個人に代わって“管理”する仕組みです。スマホなどインターネットを通じて得られた個人情報を企業などに売り、その見返りとして、個人には金銭やサービスが提供されます。GAFAなどがそれぞれのサービスを通じて集めた膨大な個人情報を「資源」としてビジネスを展開する中、動き出した新しいサービスについて取材しました。(経済部記者 茂木里美)

情報をビジネスに

電機メーカーの「日立製作所」は、9月から社員200人を対象に「情報銀行」の実証実験を始めました。それぞれの自宅に専用の機器を置いて家電製品の使われ方や、社員の腕につけたセンサーで運動量や睡眠時間を調べています。

ニュース画像

例えば、照明器具などの使われ方からはいつ、在宅しているのかがわかります。こうした情報は宅配会社にとって、荷物の宅配ルートを決めるのに役立つとみられます。

また、テレビやエアコンなど合わせて10の家電製品のデータをとり、その使われ方によってどのような故障が生まれるのか予測することで、家電を対象にした保険サービスの開発ができないか検討しています。実験には含まれませんが、実際には情報銀行が企業に情報を販売すると、個人には金銭やサービスが提供されます。

ニュース画像

ただ、すべての情報が企業に販売される訳ではありません。社員は専用のページで、どの情報をどの企業に販売するのか、自分で管理することができます。日立製作所は実証実験の結果を踏まえ、「情報銀行」の事業化を検討していきたいとしています。

情報銀行については、「三井住友銀行」や「中部電力」も実証実験を行っているほか、「三菱UFJ信託銀行」は来年度中に参入する方針を発表しています。

なぜ、情報銀行

情報銀行の特徴は、個人がどの情報を、どの企業に販売するのか選択できることです。

今、私たちは同意の上とはいえ、インターネットを通じて、さまざまな情報を企業などに提供しています。サービスを利用する際に登録する年齢や性別、検索や買い物の履歴、それに個人の好みなどさまざまです。

ニュース画像

情報の提供先の代表例がGAFAと呼ばれる巨大IT企業です。フェイスブックから大量の個人情報が流出した際には、提供してきた情報の多様さに利用者から驚きの声もあがりました。

これまで自分の情報がどのように使われているのか分からなかったという不安に対して、情報を“見える化”し、自分の意思で”管理”できるようにするのが情報銀行です。

管理に“お墨付き”も

情報銀行の”管理”を審査して、認定する仕組みも始まっています。認定を行うのは、IT企業らで作る団体、「日本IT団体連盟」です。国が作成した指針に基づいて、セキュリティー面を含めた認定のための基準を設けています。

例えば情報セキュリティーを担保できる財産と人員を確保していることや、利用者やデータが増加した場合でも安全な情報管理をとれる体制をとっていること、損害賠償の請求に対応できる能力があることなどです。また、個人情報を取り扱うデータセンターは国内に設けることを定めています。

連盟によりますと、情報銀行は、日本発のアイデアで世界的にも珍しいサービスだということで、来年度中には50程度の法人に認定を出したいとしています。

ニュース画像

どこまで広がるか

ITなどを通じて企業が個人情報を得やすくなっている今、その管理の在り方は大きな問題になっています。EU=ヨーロッパ連合はGAFAなどを念頭に、ことし5月から企業に個人情報の保護を厳しく求める一般データ保護規則=GDPRの運用を始めました。また、日本政府も個人情報保護のルールの在り方の検討を始めています。

こうした中、情報銀行をめぐるビジネスは来年度から本格化するとみられています。私たち個人にとっては、自分の情報を自分で管理できているという実感を持てることが重要です。個人情報を取り扱うセキュリティーを担保しながら、どこまで情報を製品としてサービスに変えられるのか、企業側の努力や工夫が求められます。

茂木 里美
経済部記者
茂木 里美
フリーペーパーの編集者を経て
NHKに入局
現在は電機業界の取材を担当