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“就活ルール” いる?いらない?

経団連が示してきた指針の廃止をきっかけとして、にわかに“就活ルール”をめぐる議論が盛り上がっています。「もう不要では?」「いや、なくては困る!」など、さまざまな意見が噴出。政府が新たなルールづくりに乗り出す中、NHKでは全国の主要企業100社に緊急アンケートを実施。そこから見えてきた本音とは?!(経済部記者 篠崎夏樹)

緊急アンケートの結果は

緊急アンケートは10月、全国の主要企業100社を対象に行い、97社から回答を得ました。

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まず、経団連が今後はルールを策定しないことについて聞いたところ、「評価する」が34%、「評価しない」が7%。「どちらとも言えない」が58%。およそ3分の1の企業が、従来の経団連が示してきたルールが廃止されることをよいことだと受け止めている結果となりました。

▽就職活動の時期を定めることは実態にあわず、学生が自由に企業を選択できることが必要(自動車)
▽国内外から人材獲得するために、国内大学のルールに縛られることなくフレキシブルに採用活動を実施できる(日用品)

さらに、採用面接の解禁時期などのルールが必要かどうか望ましい在り方を聞きました。経団連によるルール廃止を評価するのがおよそ3分の1でしたから、ルールは必要ないと答える企業も同じくらいかと思えますが、結果は違いました。

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「ルールは必要ない」が9%だった一方で、「何らかのルールが必要」が63%に上りました。「どちらとも言えない」が26%でした。

今のルールは形骸化!

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「ルールなくしたのは評価するけど、ルールは必要」という、矛盾しているようにも見えるこの結果はどうしてなのか?自由記述欄を読み込んでみました。全体として特に多かったのが「ルールの形骸化」を指摘する意見です。

▽外資系やITなどルールを守らない企業が増加し、ルール自体が形骸化。守っている企業に採用の遅れが生じる(流通)
▽経団連加盟企業でも順守しない企業が多数で、有名無実化している(素材)

いままでのルールに従っているだけでは、優秀な人材がとれないという企業側の焦りが感じられます。

その一方で、多かったのが「採活の早期化・長期化への懸念」です。採用にあたる人員も限られる企業が多い中で、時期的な目安がなくなると就活開始が早期化し、結果として長期化すれば、負担が増すという懸念です。地方の企業からは、必要な人材が一層取りにくくなるという声もありました。

ルールがなくなり、急激に状況が変化し混乱することへの懸念は大手企業からも聞かれました。
今のルールには問題がある。しかし完全になくなるのも困る」というのが、全体として多数派のようです。

では、どのように見直せば?

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指針の廃止を発表した経団連 中西会長

アンケートでは、今後の日本的雇用慣行の見直しに期待することを聞きました。ここで目立ったキーワードは「国際競争力の強化」そして「多様性の確保」です。

▽アジアの中心が中国にシフトしつつある中、日本が世界で戦える人財づくりを企業・学校・政府と本格的に取り組む仕組みづくりに期待したい(自動車)
▽日本の国際競争力を高める観点から、多面的かつ徹底的に議論を(素材)
▽今後の日本の発展を考えたうえで抜本的に議論し、ビジョナリーな発信を(地方銀行)
▽多様な働き方の選択肢を整備し、各人が主体的に選択できるよう環境整備を(食品)
▽海外人材の採用のため就活時期・採用時期に多様性を(流通)

一方で、こんな意見もありました。
▽ルールを順守できなければ、罰則があってもよい(地方流通)
▽日本型か欧米型かの二者択一の議論ではなく、日本に合ったルールやシステムを柔軟に検討するべき(エネルギー)
▽欧米の通年・中途採用は職業未経験の就職を困難にし、将来への希望を失わせる(機械)

どう進む?見直し議論

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関係者を交えた関係省庁連絡会議

10月29日に開かれた政府の連絡会議では、2021年春に入社する今の大学2年生については、採用面接の開始時期を前年の6月以降などとする従来のルールと同じ日程が維持されることが決まり、2022年春以降も同じ日程を維持する方向性も示されました。

しかし、経団連の中西会長が就活ルールに一石を投じたのは、採用を含めた人材育成の在り方がこのままでよいのかという危機感からです。アンケートでも、現状維持を求める声はほとんどありませんでした。

日本企業が置かれた環境を考えても、現状維持が長く続くとは思えません。今後、見直しの議論がどう進み、実態がどう変わっていくのか追い続けたいと思います。

篠崎 夏樹
経済部記者
篠崎 夏樹
平成11年入局 
山形局をへて
財務省や内閣府を担当