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孫正義社長は何を狙っているのか 単独インタビューで聞く

AIやロボットの導入で生産性の向上が期待される一方で、わたしたちの仕事も大きく変わるのではないかという議論が、いま盛んに繰り広げられています。また、急速に進む技術革新に日本が立ち遅れているのではないかという不安もあります。新しいテクノロジーに巨額の投資をしてきた経営者といえば、ソフトバンクグループの孫正義社長です。「仕事が無くなる!? AIロボットVS人間」をテーマにしたNHKスペシャルに出演した孫社長に、私たちは技術革新とどう向き合うべきなのか、単独インタビューで聞きました。(経済部記者 野上大輔)

Q:2017年5月に10兆円規模のファンドを設立し、AIやロボット関連の投資を拡大していますが、どこまで投資を続けるのでしょうか。

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まだまだいきますよ。どこまでもいきます。はじまったばかりです。普通の人ならそういう質問には謙虚に答えますが、私は謙虚さが足りないので。さらに加速度的に(投資の)ペースは上がっていきますね。

そういうスピードについてこられない企業や人はどんどん取り残されるでしょうね。アメリカと中国はものすごい革命が起きています。特に中国は技術の面ではるかに上を行っている分野もありますし、安いから中国で作るという時代は終わったんじゃないですかね。非常にテクノロジーの分野で進化しています。日本はアメリカと中国の間で完全に置き去りにされた国です。ジャパンパッシングの時代で、議論に参加すらできていない。

Q:孫社長はアメリカのウーバーや半導体大手のエヌビディアだけでなく、アリババや滴滴など中国企業にも積極的に投資しています。アメリカと中国の企業に投資が集中するわけはなんでしょうか。

われわれは“どこの国だから”という発想でやっているんじゃなくて、〈世界中の1番いい会社、いい技術のところとの仲間作り〉を一生懸命しているだけです。

AIの場合は半導体チップもソフトもデータもあります。それから、それらを活用するサービス業、サービスプラットフォームも含めて大競争時代ですよね。部分部分の技術ではなく、それを活用したサービスが大きな競争になっています。例えば日本では「配車アプリ」と言われますけど解釈を間違えているんですよね。配車プラットフォームなんです。

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孫社長が出演した番組では、AIやロボットの導入によって人間の仕事が変わり、経済の仕組みそのものへ影響する可能性について議論しました。番組で孫社長が主張したのは「技術の進化によって生まれるマイナス影響を理由に、進化そのものを止めるべきではない」ということでした。

かつてインターネットを“ガラスの洞窟”と呼び、もっともらしく数字をあげつらって、インターネットには限界があると主張していた人たちがいました。もっともらしく中途半端に技術を知っていた人こそ、もっともらしくインターネットを否定していたわけですよね。(技術革新の未来を見据える)「推論力」は、必ずしも技術の専門家とか経営の専門家が最も得意かというと、そうでもなかったりするんですよ。技術者は自分のわかる範囲のところがむしろ限界になったりするんですよね。

〈見えないところは、気持ち悪いってなっちゃうわけです〉

中途半端に見えるから、見えないところは怖い、推論するのは怖いと、逆になったりするんですよね。手塚治虫さんのような人のほうが、未来の推論があたったりするわけですよ。投資の世界でも、技術の専門家が当てられるかというとそうでもなかったりするんですよね。金融の専門家もそうです。経営者もぜんぜん当たらない。先を推論する力がないと成果を出すことはできないわけですよね。

Q:技術革新について「日本はアメリカと中国の間で完全に置き去りにされた」と指摘されましたが、推論する力の不足か。

そうです。日本のリーダーの皆さんが見えていないのか、見ようとしていないのか、そういうことだと思いますね。一般的な人々はどうしても先手先手を打つことができる立場にはなかなかなれませんから、国のリーダーとか企業のリーダーが先手先手で技術革新を引っ張っていかないといけない。それこそがリーダーシップだと思います。多数決をとってどっちに行こうかというのは本当のリーダーシップではありません。政治の皆さんも含めて教育も根底から変えるべきだと思います。

〈ヒト・モノ・カネの経営資源をどこに割りふるか〉ということを国のリーダーは考えてやらないといけない。過去を守ろうという世界にいるかぎり、後手後手に回りますよね。

Q:技術革新という点では宇宙ビジネスをどう見ていますか。孫社長と親交のあるZOZOTOWNの前澤友作社長が民間人として初めての宇宙飛行をすることが話題になりました。

宇宙はテーマの1つだとは思いますけども、それがどれほどの成果を上げるかでみるべきだと思います。宇宙が本当にリターンを提供してくれるかと。そういう観点でいうと小さいテーマなんじゃないですかね。夢はありますけど、1回ぐらいは見に来たいと思うかもしれないけど、何人が本当に火星に住みたいと思っているかは疑問です。宇宙にラーメン屋はありませんから(笑)。宇宙で通信環境を効率的にするとか、地球にない資源をみつけて、発掘して持ってくるとかなど、何らかの成果物があるなら話は別ですが。それよりももっと人類が開発すべき点はほかにあると思いますね。珍しいという意味ではそうかもしれませんが、単にそれだけではビジネスは難しい。

取材を終えて

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孫社長は〈デジタル分野の競争に遅れた日本への危機感〉がとても強いというのが取材を通じたいちばんの印象でした。また、AIやロボットの普及が急速に進み、仕事を大きく変える将来、わたしたちがどう生きていけばいいのか、考えるときがきています。

孫正義社長が出演したNHKスペシャル「マネーワールド~資本主義の未来~ 第2集 仕事がなくなる!?」は10月7日(日)午後9時からです。

NHKスペシャル(←詳しくはこちらから)

野上 大輔
経済部記者
野上 大輔
平成22年入局
横浜市出身
金沢局を経て
現在、情報通信業界を担当