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“ご当地サーモン” 続々誕生のワケ

回転ずしで人気ナンバー1のすしネタは何だと思いますか?

答えは「サーモン」。

7年連続の1位だそうです(マルハニチロ調べ)。その多くが海外からの輸入品ですが、そんな外国産サーモンに負けじと、全国各地で誕生しているのが「ご当地サーモン」です。自治体が企業などと連携して生み出したサーモンのブランドは全国で50種類を超えているといいます。なぜ今、サーモンなのでしょうか?(鳥取放送局記者 本田美奈)

サーモンが大人気!でも…

そもそもサーモンってどんな魚でしょうか?

ひとくちに言ってもその種類はさまざまで、食用に流通しているものでは、アトランティックサーモン、ニジマス、ギンザケ、シロザケ、キングサーモン、カラフトマス、ベニザケ、サクラマスがあります。日本ではさけ・ます類として分類される魚です。

国立研究開発法人の北海道区水産研究所によると、日本のさけ・ます類の消費量は、今から30年前の1988年には年間31万トンでしたが、5年前の2013年には42万トンと、10万トン以上増えています。

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これは特に生食用のサーモンが、市場が拡大した回転ずしなどで人気を集めているためですが、こうした生食に適しているのは、アトランティックサーモンやニジマスといった海外で取れる養殖の魚です。

日本で取れるサーモンは天然のシロザケがほとんどで、実は、寄生虫の影響で生食には適していません。

そのため、国内で消費されるサーモンのほとんどがチリやノルウェーなどの外国産で占められ、国内の生産者はあまり需要を取り込めていないのが実状です。

全国でサーモン養殖盛んに

高まるサーモン人気にあやかろうと、今、全国各地の自治体が企業などと連携してサーモンの養殖に取り組む動きが広がっています。

このうち、鳥取県中部の琴浦町では8月、陸上の養殖施設で育てたギンザケの出荷が始まりました。

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東日本大震災で被災し新たな拠点を探していた福島県の養殖業者を、県と町がおととし誘致したのです。

誘致にあたっては、養殖施設の建設などに必要な総事業費13億円のうち、県と町が2億6000万円を補助する力の入れようでした。

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誘致に応じた「鳥取林養魚場」の萩原岳人社長は当時を振り返り、「日本一のサーモン県にしようという話を持ちかけられたときには、同じ志を持つものとして非常にうれしく感じ、成し遂げようという気持ちが強くなった」と話していました。

完全陸上養殖で「食の安全」を確保

この会社が行っている陸上養殖は、卵から成魚になるまでをすべて屋内で行う全国でも珍しい技術です。

屋内の閉鎖空間で飼育することで、鳥がもたらす伝染病のリスクもなくなり、消費者に安心して生食のサーモンを提供できるとしています。

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さらに、「循環ろ過養殖システム」という独自の技術を導入し、水に残ったフンや餌などをろ過して取り除いて繰り返し使うことで、養殖に使う水の量を従来の陸上養殖の100分の1に抑えることができます。

実は、鳥取県などがこの会社の誘致に力を入れた背景には、地域の活性化につながるという期待に加えて、会社が持つ優れた養殖技術がありました。

日本海に面した鳥取県は、冬場の厳しい荒波の影響で、海面養殖に適した場所がほとんどありません。陸上施設での養殖が順調に進めば、冬場も安定的に出荷することができ、県内の今後の養殖業の発展につながるとも県や町は考えたのです。

大山の地下水で付加価値アップ

さらに中国地方最高峰の大山からわき出る地下水を100%使うことで、臭みが少なくさっぱりとした味に仕上がったギンザケは「とっとり琴浦グランサーモン」と名付けられました。

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“グラン”には地下水や華やかなといった意味が込められ、すでに県内のほか関西や関東方面にも出荷が始まっています。

萩原社長は「まずはおいしさを知ってもらうために手ごろな値段で提供しているが、今後は鮮度や安全性などの付加価値を高めていって、高級レストランでも出してもらえるようなブランドを確立するのが目標だ」と話していました。

会社では、幼魚の生産を行う水槽が8つと、成魚に育てる水槽が4つあり、合わせて年間600トンの生産を目指しています。

ご当地サーモン 全国で50種類以上

養殖サーモンの研究を行っている鹿児島大学の佐野雅昭教授によると、当初は東北地方が中心だった「ご当地サーモン」の取り組みは、東日本大震災をきっかけに広がったと言われています。

津波で宮城県の養殖場が壊滅的な被害を受けた一方で、サーモンの稚魚を育てていた山形県や岩手県の施設は被害を免れたため、稚魚の受け入れ先を探していました。

これに応じて、香川県や鳥取県など、これまでサーモン養殖が行われてこなかった地域が養殖に乗り出すことになり、今では50種類を超えるまで広がったということです。

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伊予かんの皮から抽出されたオイルを混ぜた餌を与えることで、みかんの爽やかな風味を出すことに成功した愛媛県の「宇和島サーモン」。
愛知県の奥三河の清流で育ち、マス類特有の斑紋がなく、美しい魚体が特徴の「絹姫サーモン」。
餌に脂を添加しないことで、さっぱりとした味わいが特徴の、長野県の「信州サーモン」など、特色のあるサーモンが誕生しています。

佐野教授は、こうした全国の取り組みについて「養殖で生産されたサーモンは生食に適していて、国内のサーモン人気の需要を取り込むことが可能だ。また、生のサーモンは特に若い世代に人気という特徴があるので、そういった世代が大人になったときも食べ続けると考えると、養殖サーモンは今後も増えるのではないか」と話していました。

地方活性化の一助になれるか

福岡県出身の私が鳥取局に赴任して3年目ですが、鳥取県は福岡や東京などの都市部に比べて若い人も少なく、空き店舗も目立つのが現実です。

しかし、ご当地サーモンの養殖に取り組む人たちを取材していると、豊かな自然や広い土地に恵まれた田舎だからこそできることもあるんだということが再確認できました。サーモンを通して町を活気づけたい、水産業を盛り上げたいという人たちの思いが広がるとともに、その土地ならではの特色のあるサーモンがさらに注目を集めることで、地方が少しでも活性化してほしいと思いました。

本田 美奈
鳥取放送局記者
本田 美奈
平成28年入局
警察担当をへて
現在は倉吉報道室